天化の初体験


 天化と付き合い始めて二週間ほどたったある夜、は胸元をまさぐられるような感覚で目が覚めた。重たいまぶたを開けると、にのしかかっている天化がいた。

「…………」
「……起きちまったさ?」

 寝起きのがなにも言えずにいると、天化がばつの悪そうな声を上げた。天化の右手はの乳房に触れており、左手は寝間着を脱がしていたようだ。
 あたりにさっと目を走らせる。どうやらが寝入ってからそれほど時間がたっていない。城の住人が寝静まった真夜中ごろといったところか。閉められた窓の隙間から入ってきた月の光が、ぼんやりと室内を照らしていた。

「え、なにしてんの」
「……なにって、ナニ」
「な……天化」
「もう我慢できねえんだよ」

 付き合いだしてから毎日キスはしていたが、まだ体を許していなかった。考えてみれば、お年頃の天化がそれだけで我慢できるはずがないのだ。そういう関係まで進展するのは、タイミング的にいつがいいのか。考えなかったではなかったが、恋人未満からと言った手前、まだ先のことだろうと深く考えなかった。まさか、こんなふうに夜這いを仕掛けてくるなんて思っておらず、突然のことに頭が混乱していた。
 動きを止めていた天化の右手が、の胸を揉んだ。寝ている間にもそこをいじっていたらしく、乳房は天化の唾液でてらてらと光っている。声を上げようとしたのくちびるを、天化のそれがふさいだ。舌が容赦なく侵入して、の舌を絡めとる。

「ん、ぁ……」

 天化の左手がの寝間着を完全に剥ぎ取った。が身につけているものは下着だけになった。
 くちびるが離れると、熱のこもった天化の瞳がを捉えていた。告白された夜と同じように、こちらまで溶かされてしまいそうな瞳だった。

「いい?」

 行為の了承を求めてきたが、天化の欲望は服の上からでもわかるほどに膨張している。そんな状態ではダメと言ってもやめられないだろう。自身、天化の愛撫で熱がくすぶっている。
 は小さく頷いた。それを見た途端に、天化はまた口を吸ってきた。先ほどよりも激しい舌の動きだった。両手も器用にせわしなく動いて胸元をまさぐっている。の口からくちびるが離れると、顎のラインをなぞるようにの首筋へ舌が這った。時折、ちゅ、とリップ音を立てて肌を吸われる。性急な愛撫に体の熱が上がる。はぁ、と息を吐くと、熱を孕んでいた。
 天化の指が双丘の頂上をつまむ。の首筋からだんだんと下のほうへ降りていったくちびるは、もう片方の頂上を食んだ。舌で舐めとられ、時折強く吸われる。

「ん、ふ、ぁ」

 我慢していた声が漏れた。それを聞いた天化は、口を胸から離し、を見下ろした。

「すげぇ可愛い、綺麗……もっと、声聞きたい」
「だ、だめ……」

 隣の部屋は太公望の部屋だ。もうとっくに寝ていると思うが、万が一声が隣まで届いていたらと思うと、大きな声など出せるわけがない。今その名前を出すのは野暮なので言わないが。
 天化はもう一度、可愛い、と言うと、再び胸に吸い付いた。胸の赤い飾りはすっかり硬くなった。

「ここ、硬くなってる……気持ちいい?」
「ん、やぁ、」

 右手がするりと下着の隙間から侵入してきた。指での秘所をなぞられると、くちゅ、と湿った音がした。

「濡れてる」

 つぶやくように聞こえた声に、は羞恥心で顔が熱くなった。はしたない体だと思われていないだろうかと一瞬不安になったが、濡れないよりはましかと思い直した。
 天化は体を起こし、の脚を開かせた。すばやく下着を脱がせると、それを寝台の下へ放った。両脚を持ち、ぐっと開かせる。まじまじと股の中心を観察されて、は恥ずかしさで身をよじる。

「や、そんなに見ないで……」
「だめさ、見たい。可愛い……ここ、ひくひくしてる。いやらしい……」

 と言うと、天化はそこに顔をうずめた。舌で直接愛撫され、は我慢できずに声を上げる。

「あ、あ、や、ああ」

 天化は一番敏感な部分に舌を這わせながら、の膣内に指を入れる。中は十分湿っており、すんなりと指が奥まで入っていく。天化を受け入れる準備は出来ているらしい。
 最後に強く陰核を吸って、天化は身を起こした。自分の服をすべて脱ぐ。怒張したものをの湿ったところにあてがい、先端を擦り付け、性急に侵入した。そこは、ちゅぷ、と湿った音を立てて、天化のものを飲み込んでいった。

「う、あ、天、化」
「あぁ……すげ、あったかい」

 こんな感覚だっただろうか。男女の行為が久しぶりすぎて、こんなに快楽を伴うものだっただろうかと、は熱いものを受け入れながら思った。中を押し上げる感覚に、声が出てしまう。我慢しなければならないのに、口を覆ってないと嬌声が漏れてしまう。
 天化は一呼吸すると、容赦なく律動した。ぐちゃ、くちゃ、と水音が立った。

「ん、あ、あ」

 奥を突くたびに、の切なげな声が上がる。もう口を閉じるだけでは無理だ。声を上げないようにと、は自分の口を覆った。その手を天化がつかんだ。

「声、聞きたい」
「ん、だめ、あ、ああ」

 ならば少しでも快感を浅くしようと腰を引くが、それも天化に逃げようとする腰を押さえられてしまった。逆に、中をがつがつと突き上げられた。

「は、あん、だ、め、てんか、」

 もっとゆっくり、と言おうとしたその時、天化が腰のスピードを上げた。そのまま一気に昇りつめたようで、腰を押し付けられた。中のものがどくりと脈打ち、上に乗っている彼が息を詰めた。

「あ、ああ、天化……」

 何度か腰を振って最後まで出し終えた天化は、しばらく射精の余韻に浸っていたようだ。は達してはいないが、初めてならそれで構わない。徐々にお互いのことを知っていけばいいのだ。荒くなった呼吸を整えつつ、は後始末のことを考え始めていた。
 しかし、天化はの上からどこうとしない。中の怒張はまだ硬度を失っておらず、嫌な予感を覚えて自分から腰を引こうとした時だった。
 天化は一旦自分のものを引き抜いて、の体をうつぶせに転がした。腰を持ち上げて四つん這いにさせ、腰をぐっとつかんだ。の脚の間から先ほど放たれた白いものがあふれ、内腿を伝った。その卑猥な光景に興奮したのか、一息に貫かれた。

「あうっ! あ、ん、てん、か」
「中、俺っちのでどろどろになってる」

 ぐちゃ、ぬちゃ、と先ほどより大きな音が立つ。天化の注挿によって中の精が掻き出され、の股は白くなった。後ろからの体勢の深い挿入感が、天化とを追い立てる。天化が強くの腰を突き上げた。

「はぁっ、たまんねぇ……!」
「あっ、ああっ、てんか、もっと、ゆっくり……!」
「ダメさ、止まんねぇ……!」
「はっ、ああっ……!」

 の声が一段と高くなっていく。ぱんぱん、と肌がぶつかり合う音が室内に響く。の白い尻が、天化の目前で揺れた。

「あ、だめ、だめっ、ああっ」

 容赦ない突き上げに耐えられず、が背をしならせて果てた。強くシーツを握りしめて、絶頂の快感に耐える。その強烈な締め付けに抗えず、天化ももう一度中に精を放った。

「う、あ、あぁ」

 低い獣のようなうなり声を上げて、天化はの上に倒れこんだ。天化の汗が流れ落ち、に滴る。は腰砕けのような状態になって、シーツに深く沈んでいる。お互い、息が上がっていた。
 天化が自分のものを引き抜くと、どろりと白いものが垂れてきた。の股間は、天化の精子との愛液でどろどろに汚れていた。その光景に、天化はぞくぞくするような快感と満足感を覚えた。

、愛してるさ……」

 まだの息が整わないうちに、天化がくちびるを寄せてきた。少し苦しかったが、が力なくキスに応えた。その反応に一層愛しさを感じて、天化がを強く抱き寄せた。

「もう一回、って言ったら、怒る?」

 疲労で目を細めていたは、天化の言葉を聞いて、信じられないと目を見開いた。三回目をしようと言っているのか。体力と精力はどうなっているんだとか、お年頃のせいなのかとか、色々な思いがの頭を駆け巡る。彼は、期待に満ちた目でまっすぐにを見つめてくる。そんな目で見つめられて、拒める女がいるのだろうか。はしばし体力と相談した後で、観念することにした。

「……もっと、優しくしてくれるんなら……」

 一度果てたことで疲れていたが、そんな理由で拒むのは気が引けた。天化が早くこちらのペースを把握してくれることを祈るばかりだ。
 天化の顔がぱっと輝いた。強く抱きしめられて、くちびるが深く合わさる。熱い手が肌を這うと、情事の余韻を残した体がびく、と反応した。その反応に興奮した天化がの体に覆いかぶさってきた。この様子では、今度も激しいものになるかもしれない。
 恋人たちにとっての短い夜が、更けていく。


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