会長からセクハラを受けています その2


 七月も下旬に差し掛かる頃。じめじめと蒸し暑さが増していく一方で、まだ梅雨は明けていなかった。
 日曜の午後、だらだらと二度寝を貪って昼近くに起きた後、買い物を終えて昼ご飯を済ませ、それからアパートの部屋を掃除して。明日は月曜、もう仕事がはじまるのかと、過ぎ去る休日を惜しんで昼下がりを過ごしていた。至って普段通りの休日だった。
そんな休日をぶち壊すように、ひとりの男が突然の携帯端末に連絡を入れた。

「十六時にここへ来い。拾ってやる」

 という文とともに添付された地図。迎えに行くから十六時にその場所で待て、ということだろう。

(いつもいつも突然だな……まあでも、なんだかんだ忙しい人だからしょうがないのかな)

 メッセージを送ってきた男──ギルガメッシュとは、関係を持って以来、ずっとこんなふうにして不定期で会っている。の就業先の会長であると同時に店の経営やらプロデュースやら、地味に多忙な人であった。ギルガメッシュが日本にいて、なおかつ手が空いた時にひと晩をともに過ごす。ギルガメッシュに会うまで持っていた恋人のイメージとは、まったく違う関係だった。

(彼氏……とも違うし、情人……が近い気がする……?)

 忙しい時間を縫って会っているのだから、そこそこ大切にされていると思う。ギルガメッシュは好きだとかそんな言葉はなにひとつ言わないが、ギルガメッシュ専用の端末を持たせたり、「好きに使え」と金に輝くクレジットカードを渡してくるということは、そう考えてもいいだろう。ちなみにそのクレジットカードには一切手をつけてない。こわいからだ。
 十六時に指定された場所で待っていると、赤いド派手な高級車に乗ったギルガメッシュが現れた。いかにも金持ちらしい趣味の車に唖然としていると、サングラスの下の赤い瞳が不機嫌そうに細くなった。開口一番に早く乗れと言われ、ため息を隠しながらはスポーツカーに乗った。
 連れて来られたのは、が処女を散らしたあの高級ホテルだった。顔パスなのか、フロントをなにも言わずに通り過ぎるとエレベーターに乗り込んだ。最上階への籠の中、いきなり抱き寄せられてくちびるをふさがれた。壁に押し付けるようにしてのくちびるを激しく貪った男は、息を乱すを部屋へと連れ込むと、すぐさま裸にしてその体も貪ったのだ。シャワーを浴びたいというの声は、すぐに嬌声へと変わっていった。
 やっとベッドから解放されたのは、夜もどっぷりと更けてからだった。
 汗やらお互いの性器から出た体液やらをシャワーで洗い流して浴室から出ると、リビングに軽食が並んでいた。シャワーを浴びている間に用意させたらしい。それをふたりでつまみながら、が取り留めもない話をしたり、ギルガメッシュが滞在先での話をしたり。ギルガメッシュがを後ろから抱きしめるような体勢で、ぴったりとくっつきながら、穏やかに過ごしていた。

「あれ、雨降ってる?」

 ふと、窓を濡らす水滴の存在に気がついた。瞬く間に雨量が増えて、窓ガラスを伝って落ちていく。この勢いからすると、通り雨だろう。

「すぐに止むといいなあ……」
「夏場の通り雨だ、すぐに止む」
「でも、最近強い雨が降り続いたりするし……困るな、もうすぐ帰らなきゃいけないのに」
「なんだと?」

 を包む腕がぴくりと動いた。

「え、だってもうすぐ十時だし……電車あるうちに帰らないと」
「そうではない。貴様、まさか帰るつもりなのか」
「え、うん。明日仕事だし、なるべく早めに帰りたいなあって」
「貴様……シャワーの後に着てきた服を着たのはそのためか。我を目の前にして帰ろうとする不遜な女は貴様が初めてだ。普通は、やっと会えた我と離れたくないと縋り付くところであろう!」
「えええ……会長に普通を説かれたくない……」

 の背後でぷりぷりと怒り出したギルガメッシュ。その腕の拘束は解いてくれそうにもない。だって、時間を気にせずこの腕の中にいたいと思ってはいる。だが明日は月曜日、どうあがいても仕事はあるのだ。そう言ってやりたかったが、言葉にするとますます離れがたくなりそうで、結局胸の中に押し込めた。
 が立ち上がろうと身じろぎすると、腕がぎゅっと強く抱きしめてきた。

「帰すと思うか?」
「だ、だめだよ、帰らなきゃ」
「まだ雨足は弱まりそうにないぞ。今日は泊まっていけ」
「んっ、でも」

 後ろからうなじを吸われた。イヤイヤ、と首を振っても離してくれない。それどころか、腕の力は強くなっていった。

「行くな、

 耳を打った低い声に、胸が苦しくなった。
 本当は、帰りたくないのに。やっと会えたのだから、ずっとこの腕の中にいたい。今晩はずっとそばにいたい、ずっとギルガメッシュに抱かれていたいと思っているのはだって同じなのだ。カッと熱くなった体は、ギルガメッシュの言葉に従うように力を抜いていった。

「いい子だ。安心するがいい、時間などすぐに忘れさせてやる。我のことだけを考えろ」
「ん、ギル……」

 ギルガメッシュの顔が近づいてくる。静かに重なったくちびるは、だんだんと深くなっていき──

「や、やっぱりだめ! 帰ります!」
「ぐっ……! 貴様……!」

 その先の快感を期待しそうになって、我に返った。ごちん、と額どうしをぶつけると、意表を突かれたのかギルガメッシュの拘束が緩んだ。その隙に腕から逃れ、自分の鞄をひっつかむと、一目散に出入口へ走った。

「会長ごめんなさい……! 失礼します!」

 なにか言われる前にとそれだけを言い残し、さっさとドアをくぐり抜けた。ギルガメッシュが回復しないうちにと、急いでエレベーターへ駆け込む。はやく、はやく閉まって。エレベーターの扉が閉じると、ほっと息を吐いた。

(会長、絶対怒ってるだろうけど、でも明日休むわけにはいかないし……仕方ない、よね……)

 そう自分に言い聞かせると、はホテルを出た。依然として雨足は強く、かといって駅までの数分のためにタクシーを使うわけにもいかず。近くのコンビニまで走り、傘を買って駅まで歩いた。駅についた時には、サンダルはすっかりぐしょぐしょになっていた。



 そして明くる日の午後。

(十五時からの来客予定……会長、同席……)

 昼休憩から戻ってきてみると、来客予定の欄に一件増えている。なんだ急に、と詳細を開くと、備考欄に会長同席の文字があった。

(絶っっ対なにか言われる……!)

 顔から血の気が引いていった。今週のの担当は、くしくもVIPの対応担当。嫌でも顔を合わせることになる。持ち場を変わってもらおうにも、会長を避けていると──会長と関係があることを疑われては、今後仕事がしづらくなる。可能な限り、ギルガメッシュとの関係は秘密にしておきたい。
 ともあれ、件の来客予定は十五時から。今は休憩が明けたばかりなので、時間まではあと二時間ほど空きがある。それまで、ギルガメッシュになにか言われた時のことを想定して言い訳でも考えておこう。そう思い、肩から力を抜いた。
 それから三十分後のことだ。そんな甘い考えをあざ笑うかのように内線が入った。ギルガメッシュの秘書のシドゥリからだった。

「もうすぐそちらに会長が入られます」
「えっ……!? は、早いですね!?」
「ええ、まあ……なにやらやることがあるとかで……会長おひとりなので特に受付の皆さんにしていただくことはないと思いますが、万が一なにか言いつけられたらそれに従ってください。今日は一段と機嫌が悪そうなので」

 知りたくなかった情報をもらってしまった。確実に昨日の一件が尾を引いている。どうしよう、と頭を抱えていると、受付にいるほかの二人が椅子を鳴らして立ち上がった。

「か、会長、お疲れ様です!」

 受付前を通ってエレベーターホールへと向かうギルガメッシュに挨拶をしたのだ。ギルガメッシュはその声にちらりとこちらを見ると、目付きを凶悪に歪ませた。カツカツと革靴を鳴らしての目の前に近寄ってくる。

「な、なななにか」
「こいつを借りていくぞ」
「えっ、はあ!?」
「なに、貴様に我の手伝いをさせてやろうというだけだ。光栄に思えよ、雑種」

 そう言って受付カウンターの中へと勝手に入ってきたギルガメッシュは、の腕を掴むと、を引きずるようにしてエレベーターへと向かった。視線で受付のふたりに助けを求めたが、同情混じりの目を返されただけだった。
 エレベーターの扉が開くと、すぐさま中へと押し込められた。会長室のある最上階と閉ボタンを押したかと思うと、扉が閉まり切る前に壁へと押し付けられ、キスで呼吸を奪われた。

「んっ……や、こんなとこで、んぅ……!」

 エレベーターの中は監視カメラがついている。非常時以外は守衛もエレベーターの中など見てはいないと思うが、万が一ということもある。しかしの抗議の声は、激しいキスにかき消されてしまう。

「んん、うぅ……!」

 上顎の歯の裏をなぞられて力が抜ける。縋り付きたくても両腕を押さえつけられている。苦しくなっていく呼吸と、口の中の性感帯を撫でられる快感に、意識が朦朧としていく。
 最上階についたエレベーターの扉が開くと、すぐさま会長室へと連れ込まれた。長く続いた激しいキスですっかり骨抜きにされてしまったは、腕を引かれるがままに中へと足を踏み入れる。初めて入った会長室の内装を見る余裕もなく、デスクの上に押し倒された。

「か、会長、やだ、待って」
「待つと思うか? この我にお預けを食らわせておいて、この上さらに待てだと? どこまで不遜なのだ貴様は」
「だからって、こんなところで……!」
「そろそろ黙れ、引きちぎられたいのか?」

 ベストに手をかけたギルガメッシュが低く囁いた。ボタンを引きちぎって脱がそうと脅してくる声に、は口を引き結んだ。今日はまだ仕事がある。職場の人にも外部のお客様にも、ボタンを飛ばされた格好を見せるわけにはいかない。

「っ……!」
「そう睨むな、ひどくしたくなるだろう」
「……会長なんて、大嫌いっ……!」
「は、そうか。そんなにひどくされたいか」

 凶悪な笑みを浮かべたかと思うと、ギルガメッシュはベストを躊躇なく引きちぎった。ブツブツと音を立てながら飛んでいくボタンが、絨毯の上に音もなく落ちた。が声を上げる間もなく、下のワイシャツもボタンを飛ばされた。

「やあっ……! やだ、いたっ」

 晒された喉元にギルガメッシュが噛み付いた。甘噛みとは程遠い力加減に悲鳴を上げる。噛み付いた部分をきつく吸い上げて濃い鬱血痕を残すと、シャツを広げて、今度は胸元にも同じように噛み付いて、赤い花を散らしていった。

「あっ、いた、い、やだ、そんなに痕つけないで……!」
「貴様が誰のものなのか、未だに理解しておらんようだからな。体に刻んでやるまでだ」
「あうっ、いやあっ、ちくび、そんなに吸わないで……!」
「なにを言う、ここを吸われるのが好きだろう?」

 確かに、乳首を吸われるとあられもない声を上げてしまうのが常だが、今のギルガメッシュは力の加減がない。乳首を食いちぎらんとするような力で吸われても痛いだけなのに。

「ひゃ、あう、んん〜っ」

 きつく吸い上げられたところを舌が撫でていく。痛みで敏感になっているところを舌で舐められると、いつもよりさらにざらりとした感触を感じてしまう。声に甘さが混じったを、ギルガメッシュが乳首をしゃぶりながら目だけで嘲笑した。
 ギルガメッシュは、胸への愛撫で力が抜けてしまったの腕から手を離すと、膝丈のスカートをまくり上げて股間に手を這わせた。

「貴様、被虐趣味でもあるのか? 濡れているぞ」
「っ、やだ、なんで」
「そうか、貴様はひどくされるのが好きか」
「ちが、違う……!」
「そうかそうか、では望み通りにしてやらねばな」

 ギルガメッシュの手がパンストを掴んだ。嫌な予感がして、が首を思いっきり横に振った。男はそれを見下ろしながら、ストッキングを破いた。

「やだぁっ……! 破かないで、だめ、やあっ……!」

 股間の部分だけでなく、太もものあたりまで所々に穴を開けていく。これではまともに外を歩けない。なにかの拍子に伝線した時のために、予備のストッキングをロッカーに用意してあるのだが、更衣室に行くのもひと苦労する姿にされてしまった。

「いい格好だな。なかなかそそるものがある」
「……最低っ……!」
「ほう、まだそんな口が利けるのか」
「ひゃうっ……!? あ、あっ、なか、そんなにかき回しちゃ、あん……!」

 ストッキングが破かれたので、の大事な場所を守るのは下着一枚だけになった。その下着も簡単にずらされてしまい、無防備な秘所へ指を突き入れられてしまった。容赦なく中をかき回す指に、愛液が絡みついている。

「中まで濡れているな、いつもより感じているのか?」
「か、感じてなんか、んぁっ」
「やはり貴様は淫乱の素質があるようだな」
「そんなの、あっ、んっ、ないってば、あぅっ……!」

 詰られながら指にぐりぐりと性感帯を押され、の意志とは関係なく体が絶頂を迎えた。ひどいことをされているのに、こんなことは嫌だと思っているのに、ギルガメッシュの言う通り体がいつもより感じてしまっている。この状況にいつもより興奮しているのだ。
 軽く放心しているをよそに、指を抜いたギルガメッシュがカチャカチャと金属音を立ててスラックスとボクサーパンツを一緒に下ろした。屹立した性器をの入り口にあてがうと、一気に貫いた。

「ひゃああっ……! や、あっ、だめ、そんな、生で、なんて、あんっ」
「なんだ、危険日か? それはいい、犯しがいがあるな」
「そん、な、あっ、だめぇっ、」
「そら、コンドームをつけない我の味はどうだ? うまいか?」
「やん、だめ、ぬいて、ああっ、ぬいてぇ……!」
「そう焦るな、貴様の中に出したら抜いてやる」

 抜いてと言いながら嬌声を上げるを見下ろして、ギルガメッシュは口角を吊り上げた。

「ひっ、こんな、の、んっ、やだ、やめて、んうっ」
「体はこんなに悦んでいるのにか?」
「ちが、あっ、や、あんっ、だめって、言ってるのにぃ、ひゃあんっ……!」

 口では本気で嫌がっているのかもしれないが、体はギルガメッシュの肉棒を悦んで受け入れている。腰を引く瞬間、抜けていく肉棒を離すまいと膣がきつく締め付けてくる。奥を穿てば、精を搾り取ろうと蠢く。これが淫乱でなくてなんだというのか。

「気持ちいいか、?」
「んっ、よくない、気持ちよくなんて、ない、ああっ!」
「はっ、まったく、貴様は度し難い女だ……!」
「かいちょ、あっ、ギルなんて、だいきらい、ひ、んっ」

 の両脚を引っ張って自分のほうへと引き寄せると、ギルガメッシュはの腰を掴んで激しく奥を突いた。ガツガツと激しい律動で奥を肉棒でたたくと、が髪を振り乱した。

「ああっ、だめ、あん、あっ、イく、イっちゃう、ギル、ぎるぅ」
「そろそろ、中に、出すぞ……!」
「やあっ、だめ、中はだめ、赤ちゃんできちゃうぅっ」
「いいぞ、孕め! 我の子を産め、!」
「ああん、もう、イく、ひゃああっ!」

 は一瞬息を詰め、その後にびくびくと全身を痙攣させた。果てたにも構わず腰を打ち付け、ギルガメッシュは中に精を放つ。肉棒が腟内で脈打つ度にが震えた。
 最後の一滴まで出し終わったギルガメッシュが性器を引き抜いた。は汗だくになって髪は乱れ、顔は涙に濡れている。引き裂かれたシャツからのぞく肌には、噛み跡と昨夜から付けられたおびただしい数の鬱血。破かれたパンストとずらされた下着。中から出てきた白濁が膣口を汚している。
 まるで強姦された後のようで、なんとも言えず卑猥だった。

「うっ、うう……ひどい、ひどいよ、こんなの強姦だよ、ギルのばか……!」

 なんとか上体を起こしたは、ギルガメッシュを涙目で睨んだ。目の前にあるギルガメッシュの胸を弱々しくたたく。

「私だって、昨日は帰りたくなかったのに!」
「あっさりと帰っておいてなにを言うか! お預けを食らったことも腹立たしいが、さすがの我も傷つくわ!」
「だってだって、理由話したら絶対離してくれなさそうだったもん!」
「当たり前だ! 久々に会った恋人をたかが数時間抱いただけで満足すると思うのか!」
「たかが数時間て……普通は数時間もだから! ……ん?恋人?」
「我を凡百の有象無象と同じに考えるな!」

 が恋人と言い放ったギルガメッシュに怪訝な視線を向けると、今更そこに反応するのかとため息が返ってきた。

「まさかと思うが、自覚がなかったのか。どうりで中々我を頼らんはずだ」
「え……? こ、恋人なの私?」
「行きずりの女に専用の携帯端末やカードを渡したりはせん」
「う、そう、かもだけど……」
「くどいぞ。我は忙しい。その我が時間を割いて会う女は貴様だけだ、。それが恋人でなくてなんなのだ」
 の反論をふさぐように、優しくくちびるを重ねるギルガメッシュ。でも、とか、だって、とか。そういう言葉を一切から奪う優しいキス。このキスをされたら、はもうどうしようもない。反抗する気もなにもかも奪われてしまうのだ。
 ──それが惚れた欲目でなくて、なんなのだろう。
 大人しくなったの頬を撫でて、ギルガメッシュが口元を綻ばせる。

「貴様は我のものだ、
「う……」
「我の許可なく我から離れることは許さん。そんなそぶりを見せてみろ、今日のようにまた体にたっぷりと刻んでやろう」
「うう……ギルなんて、大っ嫌いだ……」
「はっ、そうか」

 せめてもの抵抗に大嫌い、と言っても、ギルガメッシュは余裕の表情だった。それもそのはずで、の顔は真っ赤に染まっていて、その顔をギルガメッシュの胸に押し付けているからだ。どう見ても大嫌いな相手にする行動ではない。

「そうかそうか、我が好きか」
「ううう……!」

 胸に頭を押し付けて顔を隠すをぽんぽんと撫でると、額にキスを落とした。をなだめるようなキスを受けても、まだ恥ずかしくて顔を上げられなかった。しかし、視線を落とした先にあるモノに気が付き、信じられない気持ちでギルガメッシュの顔を見上げた。

「なん……なんでまたギンギンになってるの……!?」
「うむ、貴様のいやらしい姿を見ればこうなるのも必然。どれ、もう一度中に出してやろう」
「む、無理無理無理! もうすぐ会長のお客さん来るってば!」

 腕時計を見ると、十四時を過ぎていた。今から身だしなみを整えていれば来客まですぐだ。どう考えてももう一戦している場合ではない。

「ふむ、ならば三十分で済ませるぞ」
「なんでなにがなんでもえっちすることになってるの!?」
「馬鹿者、こんな完全に勃起した状態で客に会えと? どんなうつけでもこの状態に気づくわ。我が中年の男に欲情する変態だと誤解を受けたらどうするつもりだ」
「えっ……いや、でも……それとこれとは話が別というか……」
「別ではないわ。貴様の痴態のせいでこうなったのだ、責任は取ってもらわねばなあ?」

 ギルガメッシュは再び凶悪な笑みを浮かべると、をデスクに押し倒した。怒張を擦りつけられ、白濁と愛液で汚れた割れ目がくちゅ、と卑猥な音を立てた。

「え、あ、あの、せめて外に出して……中は困るんだけど……」
「なんだ、我の子を孕むのは嫌か? 安心しろ、我は子供好きだ。ちゃんと養ってやる」
「そ、そういうことじゃなくて……! んあっ、入ってくる……!」

 そうして始まった二回戦目は、三十分で終わるはずもなく。結局客を待たせる羽目になり、ふたり仲良くシドゥリの説教を受けたのだった。


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