会長からセクハラを受けています


※会長ギルガメッシュ、受付ぐだの現代パロ


 ウルク商事の受付として入社してから早一ヶ月が経った。まだ慣れないこともたくさんあるし、役員の顔も社員の顔も覚えきれていないが、先輩である受付のお姉さま二人に助けてもらいながらなんとかやっている。
 ウルク商事での受付の仕事は、社員を訪ねてやってくる外部のお客様の案内、アポの確認、お茶出し、応接室の空調の調整や部屋の予約管理、預かりものの受け渡しなど、シンプルではあるが細やかな気遣いが要求されるものだ。はじめは上座の位置も茶葉からの煎茶の入れ方もわからず、ものすごく戸惑ったことを覚えている。幸い、社員たちは社員どうしであればお茶を出す順番を間違えてもなにも言わず、笑って許してくれたのでめげずにやってこれた。さすがにお客様のお茶の順番を間違えるわけにはいかないので、上座の位置はすぐに覚えた。受付の先輩も、受付前を通って応接室に入る社員たちをこっそり指さして「あの人があの中で一番エライ人だから、あの人の前に座ってる人に最初にお茶だよ」などと教えてくれた。商社にしては珍しく、基本的には優しくて面倒見のいい人たちばかりだった。
 一ヶ月経って、仕事を覚えて少し慣れてきた頃が、一番ミスをしやすい時期と言われている。それは、藤丸とて例外ではなかった。

「今日から一週間、社内の国際会議があるの」
「国際会議……?」
「会議室の使用状況のところにも書いてあるけど、海外支社の社員とかも来るし、テレビ会議もするみたい。館内のどこに喫煙所があるかとか、プロジェクター借りたいとか、タクシー呼んでとか色々言われることがあるから、社内のイベントっていってもそんなに気は抜けないの」
「へえ……」
「普段はこのビルにいないような役員とか社長とかも来るし、一気に顔を覚えられるよ」
「ええ……一気には自信ないですよ……」
「まあ、確かにおじさんばっかりだしねえ。あ、でも会長はすぐに覚えられるよ」
「そうそう、金髪のど派手な超美形だから!」

 先輩のお姉さま二人が、声を潜めつつも色めきだった。役員イコールおじさんの固定観念があるは困惑した。

「金髪……!? 会長なのになんか……若いですね……」
「ていうか実際に若いんだよね。たぶんまだ二十代だよ」
「にっ……!? 若い!」
「しかも日本人じゃないんだよね。めっちゃ日本語うまいけど。どこ出身なのか私も知らないし」
「何年か前に社長をやめちゃって会長になったんだって」

 先輩が語るには、ウルク商事の会長とは。
 とにかく派手、イケメン、声が大きい、仕事には厳しい、めちゃくちゃ仕事ができる、イケメン、背が高い、秘書が美人……だそうで。

「会長はいつも地下駐車場から来て、そのまま会長室かVIP用の応接室に入られるんだけど、お茶がいるかどうかはその都度秘書のシドゥリさんに確認かなあ」
「あんまりお茶出すことないんだけど、一応ね」
「今週のお茶出しは……藤丸さんだね……」
「えええ……む、無理です自信ないです! いまだに煎茶入れるの苦手なのに……」
「だ、大丈夫じゃない? 今日みたいに暑い日は冷茶だから冷蔵庫に入ってるのでいいと思うし」

 と、自信なさげに両手を振るを先輩がなだめていると、ヒール音が受付に近づいてきた。三人が顔を上げると、髪の長い女性が笑みを浮かべて受付に近づいてくる。受付前で立ち止まった女性は軽くこちらに会釈した。さらりと髪が揺れると、いい香りがした。

「あっ、シドゥリさん! お疲れ様です」

 先輩たちが笑顔を浮かべてあいさつした。この女性がうわさの会長の秘書らしい。

「お疲れ様です。もうすぐ会長が社に到着するので、確認に。今日は応接室Aに入って役員と打ち合わせです」
「はい、予定は伺っております。ちなみに、お茶って必要です……?」
「うーんそうですね……今日は暑いので冷たい飲み物をいただけますか」

 その言葉を聞いた瞬間に、の表情が凍った。先輩二人から憐みの視線が飛んでくる。

「あーあ……藤丸さん頑張って……」
「ええええ……」
「あら、新しく入った方ですね? ご挨拶が遅れました、シドゥリと申します。ギルガメッシュ会長の秘書をしております」
「あ、こちらこそ初めまして、藤丸といいます」
「藤丸さん、お茶を出すときは私も手伝いますから、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「ほ、ほんとですかシドゥリさん……!」

 シドゥリの申し出に、思わず両手を合わせて拝みそうになる。優しい微笑みを浮かべたシドゥリは、少し垂れ下がっている目尻も相まって慈愛の女神のように見えた。

「ただし。会長はとても気分屋なので、なるべく目立たないようにしてください」
「はっはい、頑張ります……!」

 その後。応接室へと先に入ったシドゥリから、会長と役員たちが全員部屋に入ったことを内線で告げられ、は立ち上がった。
 給湯室でグラスに冷茶を注ぎ、盆に載せて応接室Aまで慎重に歩く。
 ウルク商事の持ちビルであるこの建物は、一階がすべて来客用の応接室と会議室で構成されている。応接室は役員専用、中でも応接室のAはVIP専用だった。今日から一週間国際会議ということで来客はない。外部の役員なども来る上に会長も同席ということでVIP専用の部屋が取ってあるのだ。
 部屋の重厚な扉の前に立つ。緊張は最高潮に達していた。

(大丈夫、この部屋だって何度も入ってるしお茶出しも何回もした。よっぽど、こぼすとかしなければ大丈夫……!)

 自分に言い聞かせるように大丈夫、と心の中で繰り返す。深呼吸を一度。よし、と口を引き結んでノックをする。
 扉を開けて、部屋に入り、一礼。顔を上げた先に、上座にふんぞり返っている男が目に入った。
 黒い革張りのソファとダークカラーのスーツの中年男性たちの中にあって、ひときわ輝く金髪。そして、今日日歌舞伎町のホストでも着ないのではないだろうかと思うような、白いスーツ。

(あの人が、ギルガメッシュ会長……)

 視界の端で、シドゥリが動くのが見えた。我に返ってサイドテーブルに盆を置く。隣に来たシドゥリが小声でに指示を出す。
「会長へは私が持っていきますから、藤丸さんはその隣へ」
 こくりと頷いた。助かったと思った。会長へ出すとなったら、緊張でお茶出しどころではなかったかもしれない。
 受け皿に茶器を載せ、シドゥリの後に続いて歩く。ちらりと会長の顔を見ると、不機嫌そうな表情だった。しかしそのことを差し引いても、

(イケメン……ていうか、すっごい美形……)

 彫りの深い目元と一辺の無駄のない顔のライン、通った鼻梁に形のいいくちびる。なにより目を引いたのは、宝石のような深い色の赤い瞳。純粋にきれいだと思った。

「余計な挨拶などいらん、貴様らの醜いツラなど見飽きたわ! さっさと本題に入れ」

 そのきれいな顔から出た罵倒に、びっくりしてお茶をこぼしそうになった。
 不機嫌そうに歪められた目元は、周りに座る役員たちを冷たく睨みつけている。ひじ置きに置かれた右手は指をトントンと黒い革を弾いている。早く話を進めたくて仕方がないらしい。

(仕事に厳しい……なるほど、確かにかなり厳しそう……あと声も大きい)

 シドゥリが会長の右側にお茶を置いた。それに続いて、会長の隣に座る役員にお茶を出そうとした、その時だった。
 つまづいた。毛の長い絨毯にパンプスのつま先を取られて、体勢を崩した。受け皿の上に乗った茶器はそのまま、がお茶を出そうとしていた役員の隣に座っていた会長の椅子にぶつかった。白いスーツに茶色の染みを作る瞬間が、スローモーションのように目に焼き付いた。

「もっ、申し訳ありませんっ!!」

 なにか言われる前に頭を深々と下げていた。一瞬ののちに、周りの役員たちのどよめきが耳に入ってくる。その中で、シドゥリが布巾を手に足早に寄ってくる音がした。

(やばいやばいなんてことしちゃったの私どうしよう……!)

 ズズッと絨毯と椅子が擦れる音がして、はつぶっていた目を開けた。会長の磨かれた革靴が、目線の先にある。

「シドゥリ、これを処分しておけ」
「──は、もうお召しにならないので?」
「染みのついたものに我が袖を通すとでも?」

 低い声とシドゥリの穏やかな声がする。どうやらお茶で汚れた上着は捨てるらしい。見るからにブランド物で高そうなのに……と思ったが、そんなことを考えている場合ではないと考えを霧散させた。

「顔を上げろ、雑種」

 有無を言わせない声音だった。びくびくしながらゆっくりと顔を上げると、意外にもギルガメッシュはめちゃくちゃに怒っているという表情ではなかった。しかし、不機嫌そうな目元は変わらない。

「名は」

 頭がすぐに働かなかった。簡潔な問いに答えられずに戸惑っていると、ますますギルガメッシュの眉が吊り上がった。

「自らの名も名乗れぬのか、貴様は」
「……えっ、あ……ふ、藤丸、です……」
「会長、藤丸さんはまだ入社してひと月の新人でして」
「新人だろうが茶をこぼさずに出すことはできよう。それとも、貴様は茶を出すたびに中身を浴びせているのか?」
「……っ!」

 シドゥリが助け舟を出してきたが、冷笑されただけだった。
 まずい、怒っている。これは冗談ではなく首を切られるコースではないだろうかと、は恐怖で塩をかけられたナメクジのように縮こまっていた。
 じろじろとを無遠慮に見下ろす赤い瞳。の全身をくまなく見下ろした後、じっと瞳を見つめてきた。こわい。なんだろう、なにを試されているんだと思いつつ、目をそらしてはいけないような気がして、赤い瞳を見返した。

「貴様には我自らが仕置きを与えてやろう」
「仕置き……? えっあっちょっと……!」

 が戸惑っていると、ギルガメッシュはの腕をつかんで扉に向かって歩き出した。女が振り払えるような力ではない。助けを求めて役員たちに視線を送るが、役員たちもギルガメッシュの行動に困惑しているようで、誰も会長を止めなかった。

「か、会長!」
「貴様らである程度話をまとめておけ」

 と言い残すと、ギルガメッシュはを伴って部屋を出た。
 応接室Aから少し離れたところに、VIP用ではない普通の応接室がある。その空いた一室に入り、大きな音を立ててドアを閉めた。
 どうしたらいいのかと立ちすくんでいるをよそに、ギルガメッシュは三人がけのソファにどかりと座った。視線だけでそばへ来るように促され、はソファの横に立った。距離を保ったに、ギルガメッシュの片眉がはねた。

「仕置きをすると言ったであろうが。近くへ来い」
「え……」
「早くしろ。我を待たせるな」

 低くなった声に、弾かれたように足を動かす。仕置きとはおそらくおしおきのことで、粗相をした罰を与えられるのだろう。給料を何割かカットとか、最悪クビとか。しかしそんな罰は別に近くへ寄らなくてもそこで言えばいいはずだが……疑問符を浮かべつつ、ソファとテーブルの間を縫って歩み寄る。
 ギルガメッシュのすぐそばまで来た、と思ったら、長い腕が伸びてきての腰を絡めとった。そのまま体を引かれて、ギルガメッシュの膝の上に乗るような形で座らされた。

「えっ……!? ちょ、なん……!」
「貴様の首を切ってやろうかと思っていたが、気が変わった。貴様の無礼は貴様の体で償ってもらうことにする」
「は……え?」
「貴様が我のものになるなら、先ほどの粗相は水に流してやろうと言っているのだ」
「えっな、んん……!?」

 突然くちびるを柔らかいものでふさがれた。すぐさま口の中に入ってきた舌が自分の舌を撫でたことで、キスをされたのだと理解する。今まで男性経験がなく、キスもしたことがないにとって、ギルガメッシュの激しい舌使いはなにもかもが衝撃だった。

「ん、は、んん〜!」

 息苦しさにギルガメッシュの胸をたたくと、くちびるがやっと離れた。ギルガメッシュの舌がぺろりと舌なめずりをするさまが目に入って、カッと体が熱くなった。それを自覚する間もなく、再びキスが降ってくる。
 口内を舌で荒らされている間に、ベストの前ボタンを外し、シャツのボタンも器用に外したギルガメッシュの指が、下着の上からの乳房を包み込んだ。びくりと体が強張る。

「や、なに、なんで」
「ほう、もしやと思っていたが、貴様処女か?」
「なっ……!?」

 あけすけな問いに顔が熱くなる。その通りだと教えているような反応に、ギルガメッシュの唾液で濡れたくちびるが吊り上がった。

「そうか、処女か」
「あっ!? や、ブラ、取らないで……!」

 乳房を揉んでいる手とは逆の手が、ブラジャーのホックを服越しに外した。緩んだブラの下から大きな手が滑り込んでくる。の目に、ギルガメッシュの手が自分の胸を揉みしだく光景が入ってくる。他人の手によって形を変えている乳房が、とてもいやらしいものに見えた。

「なんだ、破かれたかったか?」
「ん、そうじゃなくて、ひっ」

 揉まれるうちに硬くなった乳首をつままれた。ぴんと上向きに勃った乳首ときれいなお椀型に広がる乳房に、ギルガメッシュの目がいやらしく細められた。

「ふむ、胸はもう少し小さいほうが好みだが、形は悪くない。気に入ったぞ」
「ひゃっ!? やだ、あっ……!」

 つままれて一層硬く敏感になった先端をべろりと舐められた。そのまま口内に含まれ、舌で転がされたり吸われたり。刺激を受けて電流のようなものが体を走る。電流は熱となって下腹部へとたまっていき、自分でも触ったことのないような部分が反応しているのがわかる。未知の感覚に、の頭はどうにかなりそうだった。

「やあっ、やだ、あっ、吸わないで、ひぅ……!」

 口と指で両方の乳首をいじられ続け、の声がだんだんと高くなっていく。いやだ、やめてと思っているのに、体はどんどんと熱くなっていく。執拗に乳首をいじられ続け、ついには嬌声といっても過言ではない声を上げていた。

「あっ、ん、やめ、て……」
「そんなに甘い声を出しておきながら?」
「ひゃうっ」

 ぴん、と指で乳首を弾かれて、部屋にの嬌声が響いた。

「おい、あまり声を立てると前を通った者に気づかれてしまうぞ?」
「……っ!」
「我はそれでも構わんがなあ」

 くつくつと喉の奥で笑いながら、ギルガメッシュはの下半身へと手を伸ばした。スカートをまくり上げて、パンストと下着越しに股の間を触る。

「や、やだっ……!」
「濡れているな」

 まくられたスカートを戻そうとするの腕にも構うことなく、膣口のあたりをなぞるギルガメッシュ。指先についた湿り気に笑いをこぼして、何度もそこを擦る。敏感な突起をかすめるたびに、の体が揺れた。膝の上で不安定な体がぐらつくが、ギルガメッシュの片腕がの腰を支えていた。逆に言えば、がっちりと捕らえられていて逃げられない。

(このままここで、やられちゃうの……?)

 我のものになれば、とギルガメッシュは言っていた。言葉の通りなら、ここでギルガメッシュに犯されてこの件は終わりなのだろうが。今日初めて会った男に処女を散らされてしまうなど、恐怖以外のなにものでもなかった。
 ぴりりりり。
 とギルガメッシュの声以外に室内に鳴り響いた電子音。ギルガメッシュの指が止まった。スラックスのポケットから端末を取り出すと、画面の表示を見てギルガメッシュの顔が不快そうに歪んだ。いまだに鳴り続ける着信を切ると、をソファに転がした。

「わっ」
「今日は時間切れだ。明日もここへ来い、雑種」
「……はい?」
「我のものになれと言ったが、なにもすぐに返事を期待しているわけではない。一週間はこのビルに用があるのでな」
「え、ちょ、」
「十七時からなら時間が取れる。仕置きの続きをしてやろう」

 ギルガメッシュはそう言い残すと、の返事も聞かずに部屋を出ていった。

「…………明日も?」

 明日も「おしおき」の続きを、ここで。その前に言っていたことから推測すると、おそらく一週間ずっと。

「……うそ……」

 呆然とつぶやいた一言を肯定してくれる人は、誰もいなかった。



 の予想通りだった。ギルガメッシュは十七時になるとを誰もいない応接室に呼び出し、強引に体を開かせた。
 二日目、火曜日。なにものも侵入を許したことがない内部へ指を入れられた。中指を入れてじっくりと中をほぐした後、二本目を割り込ませて。中と秘芽とを執拗にいじられ、人生で初めての絶頂を味わわされた。
 イかされた後でまたギルガメッシュの端末に着信が入り、その日はそこまでだった。ぐっしょりと濡れて使い物にならなくなった下着をどうしようかと頭を抱えた。社の近くのコンビニで下着を買い、なんとか自宅のアパートに帰った。ギルガメッシュの指の感触が一晩中頭を離れなかった。
 水曜も同じように呼び出されて、重い足を引きずりながら応接室へ向かった。火曜と同じように下腹部をいじられ、絶頂へと強制的に高められた。あともう少しで壁を超える、といったところで、またギルガメッシュの端末が鳴った。絶頂を迎える前に放り出され、呆然とした。
 木曜。中に指を入れられる違和感が減ったように感じる。慣らされなければ一本だってきつかったのに。体が着々とギルガメッシュの指を受け入れていってるのが怖かった。また高まっていく体。今日こそ、波の向こうへいける。そこへまた無機質な電子音が鳴り響いて、ギルガメッシュはつまらなさそうに着信を切っての体から指を抜いた。熱を解放できないままの体が、なんとも言えずもどかしかった。
 そして金曜。強引に、けれど確実にの体に性の快楽を教え込む男が、丁寧にストッキングを下ろしていく。脚を撫でられるだけでおかしな反応をするようになった体は、素直に快感を拾って、男の指が侵入しやすいように愛液を分泌する。

「ひ、う……いや、」
「はっ、貴様の体は嫌がっておらんようだぞ」

 くちゅり、と入り口をなぞってわざと音を立てるギルガメッシュ。ひくつく膣口の動きに従って中へと指を入れる。

「大分我の指がなじんできたな。処女とは思えぬほぐれようだ」
「、あ、やめ、て」
「二本目もこの通りだな」

 ギルガメッシュが指を出し入れするたびに、ちゅくちゅく、と水音が立った。内部のいいところを探るように動く指がの性感帯をかすめる。

「んっ、あっ、」
「ここか? どうだ、よいか?」
「あ、ひ、んんっ……」

 指が激しく動いてそこばかり責め立てる。こんな行為は嫌だと思っている心とは裏腹に、声が自然と喉から出てしまう。口をきゅっと引き結んで声を上げないようにすると、ギルガメッシュのくちびるが覆いかぶさってきた。舌で口を割られると、指が中を一層擦り上げる。

「んんっ、んむぅ、んう……!」

 このまま中だけの刺激でイかされる。そう思った瞬間、快感がぴたりと止んだ。

「え……?」

 ギルガメッシュの指が止まったのだ。くちびるも離したギルガメッシュは、思わず残念そうな声を出したを見下ろして嘲笑を浮かべた。

「どうした? なにを物欲しそうな顔をしている」
「え、あ……なんで……」
「中はよくなかったのだろう? だからやめたまでだ」
「あ……」

 よいか、とギルガメッシュがに訊いた時に、なにも答えなかったからこの仕打ちらしい。連日絶頂の寸前まで高められて放置されている身としては、酷なことだった。縋るようにギルガメッシュのシャツをつかむ。

「会長……私……」
「随分苦しそうだな、雑種。脚を擦り合わせてどうした? 言わねばわからんぞ」
「っ会長……!」
「いつまた呼び出しが来るやもしれんからな、今日はここまでにするか?」
「……! や、やだ……! お願い、します、今日はイかせてください……!」

 指を抜いたギルガメッシュが今にも立ち上がりそうな雰囲気を出した。は体のもどかしさに我慢ができず、気が付けばそんなことを口走っていた。羞恥心を感じる間もなく、低い笑い声の後ですぐさま入ってくる指に、は体を震わせた。

「ああっ……!」
「いい子だ。貴様はこらえ性がないな。欲望に忠実、とも言えるか。二日でこうなるとは」
「ん、あ、ああっ、イ、く、」
「いいぞ、イけ!」

 絶頂の瞬間、声が漏れないようにギルガメッシュの胸に顔を押し付けた。そのままギルガメッシュの指によって絶頂を迎え、腰がびくびくとはねた。荒い呼吸をギルガメッシュの胸で繰り返すと、ギルガメッシュが使っている香水の匂いが頭の中を支配した。
 余韻に浸るをソファに横たえると、ギルガメッシュは立ち上がった。直後にぴりりりりと電子音が鳴る。今日はここまでか、とギルガメッシュはつぶやいた。着信を止めると、その端末をの傍らに置いた。なんとか上体を起こし、なんだこれは、と疑問を込めて男を見上げると、身をかがめて顔を近づけてきた。

「貴様にくれてやる」
「……はい?」
「我専用の端末だ。番号は我とシドゥリしか知らん。我との連絡手段として持っておけ」
「え……え?」
(おしおきって今日で終わりじゃないの……?)

 今日は金曜。土日は休み。会長がこのビルに用があるのは国際会議中の一週間だけ。ということは、今日でとギルガメッシュの関係も終わりだろうと思っていたのに。
 の思考など手に取るようにわかるのか、ギルガメッシュがにやりと笑みを浮かべた。

「我のものになるなら、貴様の粗相を忘れてやると言ったはずだ。その意味はわかるな?」
「は、はい……でも、会長はもう当分ここには来ないんじゃ」
「ここに来る必要がないだけだ。日本にはまだしばらく滞在する。その端末に連絡を入れる。次に会う時に、答えを聞かせてもらおうか」
「答え、って」
「我のものになるか、我を拒絶するか。それまでに決めておけ、
「──!」

 初めて名前を呼ばれた衝撃で固まっていると、くちびるを吸われた。軽いリップ音を立ててくちびるが離れていく。ギルガメッシュはそのキスを残して、振り返らずに部屋を後にした。
 残されたは、ぽつんと置いてある端末を見て呆然としていた。 ギルガメッシュの言葉が脳内で何度もリピートされる。
 これでやっとあのセクハラ会長から解放されると思っていたのに、こんな形で関係を継続させられるなんて。

(絶対、絶対着信なんて取らないっ……!)

 恋愛感情を持っているわけでもない男に抱かれるなんて御免だ。ここまで耐えてきたのは解雇させられるのが怖かったからである。ここまで我慢したのだから、もう許されてもいいはず。今の心にあるのは、恐怖ではなくて理不尽な目に合うことに対する怒りだった。

(大体ミスをたてに肉体関係を迫るなんて訴えたら勝てるよね!? どんな報復されるかわからないから訴えないけど、でももう会長に付き合うなんていや……それでクビになっても、しょうがない……)

 端末を起動させて、即座に電源を切る。着信におびえるより、電源を切っておいて無視、のほうがの精神衛生上マシだろう。
 乱された服を整えて、汚れたソファをきれいに掃除して応接室を出る。受付には誰もいない。もう定時を過ぎていた。控室の自分の鞄に忌々しい端末を放り込むと、そそくさと帰途についた。



 端末を渡されてから一週間ほどは、電源を切っていた。持ち歩く必要もないと、鞄から出してアパートに置きっぱなしにしていた。
 一週間を過ぎると、本当に着信があったかどうかが気になった。一瞬だけ電源を入れて、着信履歴がないことを確認して、すぐにまた電源を切った。
 そこからまた一週間が過ぎる。もう一度着信があるか確認するために電源を入れた。履歴にはなにも残っていない。ほっとすると同時に、なんだかもやもやとした。
 また一週間。なぜだか端末が気になって仕方ない。電源を入れる。もし電話がかかってきても無視すればいいだけ、と自分に言い訳するように心の中で繰り返して、電源をつけっぱなしにした。鞄に入れて出社する。
 そうして、また一週間。休憩時間や空き時間のたびにギルガメッシュから渡された端末を開いていた。画面にはなんの通知もない。

(なんで……あれから一ヶ月もたったのに、連絡なんてなんにも……)

 夜寝る前、端末のシンプルな画面を見て、は心が消沈していくのを感じていた。まぶたを閉じると、ギルガメッシュのことが思い浮かぶ。
 整いすぎた容姿、輝く金髪、まっすぐにを見据える赤い瞳、高い体温としっかりとした胸板、包み込むように香る香水、を翻弄する手と指、それにくちびると舌。
 気が付けば、の右手は股間へと伸びていた。

(なんでっ……! 会長に会ってから、へん……私の体、どんどんおかしくなっていく……!)

 毎晩、ギルガメッシュと会った最後の日のことを思い出して、自分を慰めていた。ギルガメッシュがどんなふうに触っていたか、どんな言葉で自分を責めていたか。頭の中で思い浮かべて、それを再現するかのように自分で体を触っていく。ギルガメッシュのようにはいかず、自分の手では思うように感じられなかったが、それでも時間をかけて高まっていき、絶頂を迎える。

(だめ、こんなんじゃ……!)

 その絶頂の浅いこと。ギルガメッシュに与えられたものは、こんなものではなかったはずだ。すぐに我に返り、汚れてしまった下着を取り換えてベッドに沈む。余計なことを考えないようにきつく目を閉じた。
 それから三日後のことだった。金曜日、皆花金に気分を浮かれさせて帰っていく。もそれに混じりながら、とても浮かれるような気分ではなかった。相変わらず鳴らない端末を鞄に忍ばせて、まっすぐアパートへと帰る。夕飯を食べて、片づけて、洗濯をして、お風呂に入って。二十一時を過ぎたころだった。
 ぴりりりり、と電子音がの耳を打った。久しぶりの単調な音に、ベッドでごろごろしていたは飛び起きた。画面の表示をタッチして、電話を取る。

「──随分出るのが早いな。我からの連絡を心待ちにしていたか?」

 端末の小さいスピーカーから聞こえてきた低い声に、頭が真っ白になった。ギルガメッシュの声を聞いて、実際に連絡が来たという事実が、を安堵させていた。

「ま、待ってなんか……!」
「我の指定する場所に今すぐ来い。そこで貴様の返答を聞かせてもらおう」
「い、行きません! もう会いたくない……!」
「ほう? ならばなぜ端末の電源を入れていた? 我からの連絡が嫌なら電源を切っておくなり端末を捨てるなり、色々と方法があったはずだが」
「それは……」
「我を待たせるなよ、

 電話を切られた。なんなんだあの男は、と端末を睨んでいると、今の番号からメッセージを受信した。メッセージには簡潔に住所と建物名が書いてある。そして、「鍵は開けておく、勝手に入って来い」の一文。有数の超高級ホテルの一室──おそらくスイートルーム。

(絶対行かない!)

 通話が終わった直後は、そんな硬い意思を持っていた。しかし五分、十分と時間が経って怒りが落ち着いてくると、その意思がぐらついていった。

(行ってもきっぱりと断ればいいんだ、だから、行くだけ行ってみても……)

 だんだんとそんな考えが頭の中の比率を占めていく。
 待たせるな、という声と、、と名前を呼ぶ声がを追い立てた。服を着替えると、端末と財布を手にホテルへと向かった。
 電車に乗ると、どこからかアルコールの匂いがする。花金で飲んだ帰りのサラリーマンだろうか。まだ二十二時前だからか、電車の中はそれほど人は乗っていなかった。
 ホテルの最寄り駅に着いて、歩いて数分。見るからに高級ですといういでたちのホテルが目に入った。まともな格好をしてきたと思っていたが、明らかにこのホテルには場違いな格好をしている自分の姿を見て帰りたくなった。ここまで来て文句のひとつもあの男に言わずして帰ることはないが、中に入るのはそれなりに勇気が必要だった。
 意を決して回転扉をくぐる。声をかけてくるボーイに会釈してフロントに近寄る。部屋の番号を告げると、納得したような顔をした女性がエレベータのほうを示した。
 エレベータに乗って階数を押す。最上階だった。ランプがぽつぽつと移り変わっていく様子を眺める。最上階に近づくごとに、緊張が増していく。緊張を押さえつけるように、ギルガメッシュに会ったら言ってやろうと考えていた文句を整理する。

(絶対絶対、会長のものになんてならない)

 長いエレベータの時間が終わる。最上階に到着し、エレベータのドアが開くと、目の前に目的の部屋があった。というか、このフロアはこの部屋しかないのだろう。
 勝手に入って来いとメッセージには書かれていたが、一応ノックをしてからドアノブをひねった。そこそこ重いホテルのドアを開けると、広い室内が目に入ってきた。
 部屋の中はほどほどに照明を絞られていた。これからなにをするか、男の目的が透けて見えて、は警戒心を強くした。

「遅い。我を待たせるなと言ったはずだ」

 部屋に入ってすぐのリビングのソファに、ギルガメッシュがふんぞり返っていた。上着を脱いだだけのスーツ姿を見て、もしかしてあの電話のギリギリまで仕事をしていたのかとぼんやり思う。

「遅いって……電話をもらってから割とすぐに家を出たんですけど」
「ふん、我が来いと言ったら十分以内に来るのが常識だろう」
「なんですかその常識は……私の住んでるところからこのホテル、絶対十分じゃ無理ですから」
「まあいい、来い」

 顎をしゃくられたが、は警戒して動かなかった。この男には前科がある。

「おい、来いと言っているだろう」
「行きません。話ならここでもできますから」
「はっ、貴様は話をするのに立ったままなのか? 随分な礼儀作法だな。さすが我に対して粗相をしただけはある」
「だっ、あれはつまづいただけで……!」
「それ以上駄々をこねるようなら無理やり寝室へ連れ込んでも構わんが?」
「わーーまってまって行きますから」

 なんだってこの男は気が短くてわがままなのか。駄々をこねているのはそちらだろうに。理不尽な申し出に怒りをこらえつつ、ギルガメッシュの座るソファの端に座ろうとした。ギルガメッシュが素早く手を伸ばしての腕をつかみ、強引に自分のほうへと引き寄せたことで、端に座って距離を保つ作戦は失敗に終わった。

「ひゃっ……! な、ちょっ」
「まだるっこしい。話が進まんだろう、おとなしく我の上に乗っていろ」
「その言い方は語弊がありすぎる!」
「それで、我のものになる気になったか?」

 自分のほうへと引き倒したを膝の上に抱え直したギルガメッシュ。本題を切り出されて、は眉間に力を入れた。

「なりません! 今日はきっぱりと断るために来たんです」
「ほう? 断る方法などいくらでもあるが、あえて我に直接会いに来たのは断るためだと申すか」
「っ、はい」
「貴様の言うことはいつもちぐはぐだな、
「え?」
「本気で嫌で断るならば、電話でもなんでもかけて言えばよい。ホテルの連絡先も送ってやった。その端末から我に直接電話をかけるなりホテルに言づけるなり、いくらでも。電話でも言ったが、そもそもなぜ電源を入れていた? なぜそれを自分の手の届くそばに置いていた?」
「そ、それ、は」

 ギルガメッシュに正論を浴びせられ、は言葉を詰まらせた。部屋に入ってきた時の威勢はどこへやら、ギルガメッシュの赤い瞳に見つめられて、身をすくませていた。

「教えてやる。貴様は我からの連絡を期待していたのだ。端末を渡されてからすぐに電話があるものだと思っていた。だがそうではなく、一ヶ月も放置され、我の言葉が嘘ではないか、もう連絡が来ないのではないかと不安であったのだ」
「ち、ちがう……」
「違うものか。現に貴様はこうやって、我に抱かれて逃げようともせず、我の手を受け入れているではないか」

 もはや否定の言葉も出ない。ふるふると首を弱々しく振ったが、それもギルガメッシュの手が頬に当てられると、ぴたりと止まってしまった。自分の意思とは関係なく、ギルガメッシュの手を受け入れている。

「我のものになれ、

 ──拒否の言葉が浮かんでこなかった。
 かといって素直に頷くこともできなかった。今夜がこの男のものになるのは、自分の意志ではなく、退路を断たれてしまったからなのだと、そう足掻きたかった。

「……会長なんて、大嫌いだ……」

 蚊の鳴くような声を出すと、ギルガメッシュが体を震わせて笑った。そうか、と一言こぼすと、を抱えて立ち上がった。

「すぐにその生意気な口を利けなくしてやる」



 キスと胸への愛撫だけで湿ってしまったパンティを、ギルガメッシュが邪魔だと言わんばかりに乱暴に脱がせた。ベッドに押し倒されてからのキスと愛撫は、社内で受けたものよりも性急だった。一ヶ月という時間は、この男にとっても長いものだったのかと思うと胸が苦しくなった。
 大きく広げられた足の中心を凝視していたギルガメッシュが、低く笑い声を漏らした。

「この一ヶ月でどんな自慰をすればこうなるのだ、クリトリスがいじりすぎで以前より大きくなっているではないか」
「えっ、な、やだ、そんなとこ、見ないで……!」
「処女のくせに、なんと淫乱な女よ」
「そんな、あっ、こんな体にしたの、会長のくせに……!」
「ふむ、ならば責任を取って今宵は存分に犯してやろう」

 そんなこと頼んでない。
 そう声に出す前にクリトリスを口に含まれた。無遠慮にそこを舌でぐりぐりとつぶしたり、舌のざらつきを感じさせるようにわざとゆっくり舐めあげたり、きつく吸い上げたり。自分でそこを触るのとは比較にならないほどの快感がを追い上げた。
 さらに、割れ目をギルガメッシュの指が広げるようにして入り込んできた。中を慣らすように一本、二本、三本と指が増えていく。

「ひゃうぅっ、そこ、そんなに、しちゃ、イ、く……!」

 の絶頂を促すように、じゅるる、と音を立てて吸い上げられ、は腰を痙攣させて果てた。ここ最近の自慰では得られなかった絶頂の快感に、全身を震わせる。

「まだばてるには早いぞ、

 というギルガメッシュの声とともに、布擦れの音とカチャカチャとベルトを外すような音がした。うっすらと目を開けると、全裸になったギルガメッシュが正方形のビニール袋を破るところだった。
 ちゃんとゴムつけるのかこの人。その傍若無人ぶりから問答無用で中出しされるのではないかと思っていたので、そんなところが意外だった。

「む、我のサイズが気になるか? やめておけ、あまりの大きさに処女は目にした途端に失神してしまうだろうからな」
「べ、別にそんなこと気にしてたわけじゃないです!」

 しかし怖いのはその通りなので、ギルガメッシュの得物は見ないように目を反らせた。だって絶対でかい。外人だし。
 ゴムをつけ終わったギルガメッシュが、の両脚を抱えた。くち、と入り口に擦り付けられたモノの大きさに、体が強張った。

「息を吐け、力むな。我の目を見ろ、
「は、はい……」
「そうだ、我だけを見ていろ。ほかはなにも考えるな」

 直後に下腹部を裂かれるような痛みが走った。指が三本入ったときに、これならそんなに痛くはないのかと思っていたが、その比ではない質量を受けて、冗談ではなく死にそうに痛い。痛みの元がさらに中を押し進んでいく。

「あ、ああ、い、たい、かいちょ、う」


 涙を浮かべて精一杯呼吸をするをなだめるように、ギルガメッシュが上体を倒して顔にキスを降らせた。優しいくちびるの感触を受けて、思わず安心してしまう。瞬きをした拍子に涙が流れた。その涙を、ギルガメッシュの口が吸った。
 いつの間にかギルガメッシュの腰が止まっていることがわかる程度に落ち着いたは、ギルガメッシュの背に腕を回して抱き着いた。まだ完全には収まっていない。もう一息を耐えるために、広い背中に縋りついた。
 の腕がしっかりと絡みついた直後に、ずん、と大きな衝撃が腰を襲った。痛みに再び涙がこぼれた。
 ギルガメッシュのくちびるがの口に覆いかぶさった。痛みに耐えたを褒めるように、優しいキス。それがだんだんと激しさを帯びていき、口内に入り込んだ舌がの上顎を執拗になぞる。口内で一番敏感な場所を舐められ、下腹部がじんじんと疼いた。

「動くぞ」

 と短く言って、ギルガメッシュは律動を始めた。中をギルガメッシュの性器の大きさに慣らすように、ゆっくりと。痛みがまだあったが、じんじんとした疼きが大きくなっていく。声に出ていたのか、律動が早くなる。

「ん、あ、ああ、なに、これ、痛いのに、いたい、のに……! なん、か、じんじん、する……!」
「それは感じている証拠だ。我に中を突かれて気持ちいいと感じているのだ」
「あっ、きもち、いい、いたいのに、あうっ、きもちいい……!」

 がギルガメッシュの言う通りに声を上げると、それに気をよくしたのか動きが激しくなった。上体を起こしての腰をつかむと、ぱんぱんと音が鳴るほどに激しく腰を突き上げた。応接室で把握されてしまった中の性感帯をめがけて突かれ、は一層切ない声を上げた。

「あっ、ああっ……! そん、な、そこ、あんっ、だめ、かいちょ、」
「、許す、我の名を呼べ、
「んああっ、ギル、ぎる……!」

 ひっきりなしに性感帯を突き上げられ、思わず腰をつかんでいる腕に縋りつく。その手を絡めとって、貝殻のようにつなぎ直したギルガメッシュが、自分の下腹部をの敏感な突起に擦れるように上体を倒した。突き上げるだけではなく、クリトリスも擦り上げられ、はびくびくと快楽に脚をはねさせた。

「んあっ、ああっ、も、だめ、イく、ぅっ……!」
「っ……!」

 中とクリトリスを一気に責め立てられ、は全身を紅潮させて果てた。ギルガメッシュはのしなる体を押さえつけて腰を振り、やがて薄いゴムの中に射精した。
 余韻に浸りながらぼんやりとギルガメッシュを見上げると、汗で顔に張り付いた前髪をかき上げる姿が目に入った。やたらとかっこいいその姿に胸が苦しくなる。慌てて視線をそらすと、の様子に気づいたギルガメッシュが口角を吊り上げた。

「なんだ、我に見惚れたか?」
「み、見惚れてないっ」
「よいぞ、存分に見惚れるがいい。我の裸身は黄金律、ダイヤモンドの輝きにも勝る美しさなのだからな。雑種はその美しさの前では等しく無力だ」
「だから見惚れてないっ!」

 なぜこの男はこんなにも前向き……というかポジティブなのだろうか。そしてなぜそんなにも自分の全裸に自信が持てるのか。ギルガメッシュとは違い、ごく一般的な環境で普通に生きてきたには理解しがたい感覚だった。一瞬、この男に処女を捧げてしまったことが誤りだったのではないかと後悔しかける。
 ギルガメッシュが腰を引いたことで考えを打ち切った。性器を抜いたギルガメッシュは、精液を受けて使い物にならなくなったゴムを外してゴミ箱に放り投げると、新しいゴムをサイドテーブルから取り出した。

「え……? あの、会長……? その手にしているものは」
「コンドームに決まっているだろう。これも知らんとは、一体どんな性教育を受けてきたのだ貴様は」
「いやいやそれぐらい知ってますよ! 私が言いたいのはそれをどうするかってことで」
「セックスに使う以外に用途があるのか?」
「せっ……あ、あの、今からもう一回ってことですか……?」

 確認したくなかったが、聞かざるを得なかった。まさか処女を喪失したばかりの女を捕まえて、そのでかいイチモツでまた蹂躙しようというのか。
 青ざめるをよそに、当然のことを聞くなとでも言うようにギルガメッシュが頷いた。

「我が一度で満足すると思うのか? 貴様を焦らす作戦は見事にハマったのはよかった。だが我も散々焦らされた。欲しかった女がようやく我の手に落ちてきたのだ、思う存分愛でずしてなんとする」
「……つまり、イく寸前で寸止めしたり一ヶ月も連絡しなかったのは、わざとだと……?」
「さてなあ、貴様の信じたいように信じるがいい。貴様はもう我のものだ、

 ちゅ、とのくちびるに軽くキスをした後、正方形の薄いビニール袋をばりっと開封したギルガメッシュ。
 色々と掌の上で転がされていたことに微妙な気持ちになる。しかし、たまにこの男から与えられる優しいキスは、好きだと思った。好きになってしまった。
 再び覆いかぶさってきた男の熱を感じて、は目を閉じた。
 明日は一体何時に家に帰れるのだろうと、ぼんやりと考えていた。


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