うちにおいでよ 夜の部
※「うちにおいでよ」の続き。やたら長いですがほぼやってるだけ。
※彼ジャージと軽い淫語攻めに萌える幸村くん。苦手な方はご注意ください。
アトリエと庭をに見せた幸村は、日が暮れる前に家に戻った。
そろそろ夕食の準備ということで、冷蔵庫の中を探る。思った通り、カレーの食材とラップをかけられたサラダが残されていた。手荷物からエプロンを取り出したが、それに首を通しながら幸村に言った。
「じゃあ、キッチン借ります」
「うん。俺はなにをすればいい?」
「うーんと、皮むいたじゃがいもとかを刻んでいってくれる?」
「わかった」
と快く返事をしたはいいものの、エプロン姿のばかり見てしまう。の手料理を食べるのは初めてではないが、こうして実際に料理しているところは初めて見る。は普段、自炊したりしなかったりだそうだが、幸村が食べた手料理はいつも美味しかった。母や祖母のものと比べると見劣りしてしまうかもしれないが、幸村にとってはの料理が一番である。
ただじゃがいもの皮をむいているだけの横顔なのに、触れたくてたまらなくなる。
「……あの、精市くん、そんなに見られると……」
あまりにも幸村が凝視してくるので、耐えられなくなったが手を止めた。
「ごめん、のエプロン姿が可愛くてね」
「んもう、集中できないから座ってて……!」
「手伝わなくていいのかい?」
「そんな様子の人に包丁なんか持たせられません」
「じゃあ、なにか必要なものがあったら言って。いつでも出すから」
それからは手際よく調理を進めていき、幸村がに見惚れている間にも香ばしいにおいが漂ってきた。
(これって、俺のために作ってるも同然だよね)
機嫌良さそうに鍋の中をかき回すの後ろ姿を見つめながら思った。想像力豊かな幸村の脳内には、幸村の妻となったが幸村のために毎日料理してくれる妄想が繰り広げられていた。今身につけているの私物のエプロンはの好みらしくシンプルな紺色だったが、一度は裸エプロンをしてもらおうと決意した幸村だった。
出来上がったカレーと母の残したサラダを並べ、手を合わせてから口に入れる。
「美味しい」
「ほ、ほんと?」
「うん。俺のためにが作ってくれたからかな。いつもと同じルーを使ってるはずなのに、違う味に思えるよ」
「せ、精市くんてば……でも、うまくできてよかった。精市くんのおうちで作るから緊張してたんだ」
安心したように笑うを見て、幸村も幸せな気分になった。可愛い彼女の顔を見ながら彼女の手料理を食べられるなんて、幸せだ。あまり多く食べるほうではないが、の手料理だと思うと何杯でもいける。明日の朝の分もあるのでおかわりはしないが。
今日も今日とてテニスの練習で一日動きっぱなしだった幸村だが、体の疲れなどを見ているだけで忘れてしまう。
その後、後片付けなどを済ませ、幸村が入れた食後のお茶を飲んでまったりした。テレビをつけてはいたものの、ばかり見ていた幸村の頭には、内容はさっぱり入ってこなかった。
腹も落ち着いた頃に、幸村は家の中をひと通り案内した。のマンションの部屋よりも広い幸村の私室と、幸村が大の字に寝転がってもまだ余裕がある大きさのベッドを見たが「ひ、広すぎる……ベッドでか……」と呟いていた。
そして、が先に入浴することになった。幸村にはに彼シャツしてもらうという野望があったのだが、は普通に自分のパジャマを持ってきていた。「俺の服を着ればいいんじゃないか」という幸村の言葉を、彼女は普通に断った。
「だって、サイズ大きいの着て寒かったらやだし……」
正論である。五月に入って少し暑くなってきたものの、朝晩は冷えることもある。女性は冷えやすいと聞くし、幸村としてもが風邪を引くようなことは避けたいと思う。のだが、彼シャツは男のロマンだ。そう簡単に引き下がれない。
「じゃあ寝る時は自分のパジャマでいいから。その前に一回着るだけならいいよね? 一回だけでいいから、一瞬着るだけでいいから」
「そ、そんなに……う、わかった、じゃあ、精市くんがお風呂上がったら……着る……」
(やった……!)
縋る幸村の熱意に根負けしたの了承を得、幸村は心の中でガッツポーズした。本当はお風呂上がりの色っぽい状態で彼シャツしてもらいたかったのだが、着てくれるだけでも良しとしよう。それに、幸村のお風呂上がりに着てくれるということは、エッチの直前に――幸村の脳内ではお風呂上がりにするものと決まっている――してくれるということである。そんなの絶対エロいに決まっている。上手くいけば彼シャツの状態でエッチに持ち込めるかもしれない。
部屋を後にするを見送って、幸村はに着せるものを選び始めた。頭の中はすでに彼シャツ姿のの想像でいっぱいだった。
妄想を膨らませながら制服やらジャージやらを引っ張り出していると、あっという間に時間が経っていたようで、が入浴を終えて戻ってきた。
「お風呂いただきました」
「ああ、おかえり」
のパジャマ姿を見るのも初めてだった。無地の紺のパジャマ。なんというか、シンプルなものを好むらしい。部屋の趣味にしてもそうだ。幸村の周りにいた女の子は可愛らしいものに囲まれていた子が多かったので、の嗜好のあっさり感といったらない。いわく、可愛いものが嫌いなわけではないのだが、自分が実際使うものはシンプルでいい、だそうだ。
風呂上がりののしどけない姿に抱きつきたくなったが、ここで抱きついてしまったら絶対離れがたくなってしまう。そうなるとエッチする時間が短くなる。ぐっと堪えて幸村も風呂へと向かった。
に着てもらう服の候補は色々出しておいた。その中からがなにを選ぶのか、風呂上がりの楽しみである。
(お風呂から上がったらの可愛い姿が見られるなんて、幸せだな)
少し大きい幸村の服を着てベッドで待っていてくれるなんて、もう襲うしかない。襲う前に貴重な姿を携帯に画像として残して、お楽しみはそれからだ。
幸村はいつもより手早く、しかし体はしっかりと洗って風呂から上がった。早く自室へ行きたかったが、しっかり乾かさなければならない自分の髪質が憎らしい。中途半端に濡れたままだと大変なことになるのだ。自分ひとりならいいが、の前では見せられない。
(パジャマは……別にいいか)
部屋に戻ったら即エッチする気満々の幸村は、下着とパジャマは着ずに腰にタオルだけ巻いて風呂場を出た。これもほかに誰もいない環境ゆえだ。普段ならいくら暑かろうとタオル一枚とかパンツ一丁にはならない。
「、戻ったよ」
自室のドアをノックして、「どうぞ」という細い声の返事が返ってきてから開ける。
ベッドの上のを見て、とっさに声が出なかった。
「……か、彼ジャージ……に、しました……」
が顔を赤くしながら、肩のジャージを羽織り直した。
が選んだのは、幸村が中学で着ていた立海のからし色のジャージだった。紺色のパジャマの上から、幸村がしていたように肩にかけている。
やばい。声が出ない。可愛すぎて、なんて表現すればいいのかわからない。いつもはすらすらと出てくる口説き文句も、今はなにひとつ思い浮かばない。ただ、可愛すぎとかそう来るかとかそれは反則とか毎日してほしいとか、そんな言葉しか出てこなかった。
「な、なんで黙るの……? もしかして変……って、ちょっと、精市くん!?」
黙ったままの幸村に不安になったから声をかけられたタイミングで、幸村はほぼ無意識に携帯端末を手にし、素早くカメラを起動させて無言での彼ジャージ姿を撮った。
「や、やだ、撮るなんて聞いてない!」
「あ、こらダメじゃないか、可愛い顔を隠さないで。もっと近くで撮るよ。こんなに可愛い、撮って残しておかないと」
「ど、どうしても撮るの……?」
「どうしても。絶対。撮るまで諦めないから」
「うう……」
幸村が絶対に引き下がらない意思を示すと、は観念して顔から手を下げた。顔がさらに赤くなっていた。
「可愛い……可愛いよ、……どうしてジャージを選んだんだい?」
「だって……精市くんが一番着てただろうし……私が好きなの、ジャージ羽織ってる精市くんが」
「……!!」
もうどうしてくれよう。彼女が可愛くて仕方ない。これ以上好きになることなんてあるんだろうかと思うほどに、会う度に愛おしさの最大値が更新されていくのだが、今日はやばい。好きすぎておかしくなりそうだ。無言であらゆる角度から撮りまくってしまう。
「ていうか、精市くんなんでタオル一枚なの……!?」
「え? だって今からエッチするのに、パジャマなんて着たら手間じゃないか」
「もお〜……やる気満々すぎるよぉ……」
「こんなエロい状況で張り切らない男なんていないよ。正直、甘く見てた。惚れた女に自分の服を着せるのがこんなに興奮するものだなんて……ああ、可愛い……」
「ううう……! も、もういいでしょ。ジャージ、貸してくれてありがとう」
「ちょっと待って。ちなみに裸の上から羽織ってるところは撮っちゃダメかな?」
「え……!?」
幸村はジャージを返そうとしてくるの手を押しとどめ、思いついたことを言葉にした。一度クリアした欲望のレベルはどんどん膨れ上がっていく。裸の上からこのジャージを羽織ってほしい。絶対にエロい。
しかし、は首が取れるんじゃないかというほどに首を横に振って拒絶した。
「む、無理! 裸の上からジャージ、やるのはいいけど、撮るのはダメ……」
「大丈夫、俺しか見ないよ。絶対に誰にも見られないようにするから。会えない日のオカズにするだけだから」
「おか……で、でもダメ! たとえ精市くんしか見ないとしても裸は……やっぱり無理……!」
「そんなに……どうしても?」
あまりの拒絶ぶりに幸村が一歩引く。基本的に幸村の言うことは受け入れてくれるなだけに、この嫌がり方は本物だ。
「だ、だって……そんな自慢できるような体でもないのに、画像になって残るなんて恥ずかしすぎて死にそう……」
「は綺麗だよ」
幸村は即反論したが、首を振るばかりだった。
「精市くんはそう言ってくれるかもしれないけど、ダメ」
「……わかった。じゃあ、下着の上からは? それなら撮らせてくれるかい?」
「下着の、上から……」
なにがなんでも諦めない幸村が譲歩すると、はかなり迷っている様子を見せた。ここだ。ここで押せばいける。ここで口説き落とせなければせっかく彼ジャージをしてもらった意味がない。いやあるが、目の前のチャンスは絶対に逃したくない。
「うん。ジャージを前に寄せて体を隠してもいいから。谷間がちょっと見える程度でいいんだ」
嘘だ。本当は谷間だけじゃなくてくびれたお腹も鼠径部も全部撮りたい。撮られている最中、どんな姿がカメラに収まっているかにはわからないから、上手く誘導できないかな……と画策している。
「頼むよ。の可愛い姿を撮って残しておきたいだけなんだ。会えない時間のほうが多くなってしまうから、さびしくないようにって」
「ううう……! もう、ずるい……そんなこと言われたら……わかった、下着の上からなら」
幸村の悲痛とも言える主張にが折れた。こういう時、この顔も役に立つのだなと幸村は心の中でほくそ笑んだ。おかげで彼女の可愛い姿をカメラに収めることができる……!
(、ごめん……でも、会えない時にの姿がひと目でもいいから見たくて、画像が欲しいと思っていたのは本当だから、許してほしい)
幸村は学生といえど将来を期待されるテニスプレーヤー。学校が終わってテニスの練習をして、帰っても課題や予習などがあって、思いのほか忙しい。は社会人。会えるタイミングは付き合う前に想像していたよりも少なくて、すれ違うことのほうが多いのだ。テニスの練習が終わった後、が定時で上がった時にだけ、寸暇も惜しんで会って、体を求め合って、また離れ離れになる。週に一度会えればいいほうだった。
相変わらず毎朝バラの世話をするに会ってから学校へ行っているが、朝に人目を忍んでキスやハグをするだけでは到底足りない。幸村はここのところ、への情熱を持て余し気味だった。
本当は毎日会いたい。毎日会って抱き締めてキスして、毎日エッチしたい。夜に一回以上して、できれば朝もしたい。もう一緒に住みたい。
でもそれは叶わない。だからせめて、この可愛くてエロい姿を目に焼きつけるだけでなく永久保存版として残しておきたいのだ。幸村の健全な夜のために。
「じゃあ、パジャマ脱いで。それとも脱がせようか?」
「じ、自分で脱ぎます」
「そう、残念だな。俺が脱がせたかったのに」
「……絶対全部脱がせる気だったでしょ……」
幸村がに近寄り、パジャマに手をかけながら言うと、が幸村の盛り上がり始めた股間を見て断った。下心が顕著に出ていたようだ。
パジャマの下から、ピンクのレースが可愛いブラとパンツが現れた。は幸村のいやらしい目線から逃れるように立海のジャージを羽織る。その様子がまたそそる。
「可愛い。もしかして、新しい下着?」
「う、ん……精市くんちにお泊まりって決まってから買ったやつ……」
「……勝負下着?」
その問いには答えなかったが、赤みを増した頬が答えを物語っていた。もう我慢できずに肩を抱き寄せてくちびるを塞いだ。
「んっ……ぁ、ん……」
舌を絡ませながら胸を揉む。喉の奥で甘い声が掠れ、口の間から漏れる。甘い声にも柔らかい胸にも興奮した幸村は、キスを深めていく。
「は、ぁっ、ん……」
粘膜の中で舌を押し付けあって、時折くちびるから漏れ出そうな唾液を吸い取る。一方で、の胸を揉む手も休まない。ブラの上から手のひら全体で揉み上げ、たまに乳首のあたりを摘んでやると、の腰が揺れた。
くちびると口の中を堪能して、やっと口を離してやる。の目はすっかりとろけていた。
ああいやらしい目だと、幸村はこの完全にエッチなスイッチが入った後の目を見る度に思う。幸村を誘う、いやらしい目。物欲しそうに幸村を見つめる目に大いに誘惑されながらも、幸村は携帯を再び構えた。
「ほら、撮るよ」
「ん……」
受け答えが判然としないが、幸村にも構っている余裕がない。とにかく早く画像を撮ってしまおう。脚をそろえてベッドの上に座るの姿を、角度や場所を変えながら撮る。
がジャージの襟元に鼻先をあてて、においを嗅ぐようなそぶりを見せた。中学のジャージだから綺麗に洗濯してそのままになっていたが、もしかして匂うのだろうか。幸村が不安になって構えていた端末を下ろすと、が笑い出した。
「精市くんのにおいがする……なんか、精市くんに包まれてるみたい」
と、上機嫌に笑ってジャージを引き寄せるに、幸村の理性が飛んだ。
(〜〜ああもう! どうしてこう、俺を誘うのが上手いんだよ!)
そのへんに携帯と腰のタオルを放り投げると、ベッドの上のに飛びかかった。急に全裸で襲いかかってきた幸村にが目を見開いていたが、幸村は構わずにを抱き締めた。
「せ、精市く」
「本物が目の前にいるんだから、そんなので満足しないでくれないか」
腕の中の恋人をぎゅうっと抱き締めて押し倒す。もはや写真どころではない。そんなジャージなんかよりもこっちのほうがいいんだと言わんばかりにを包んでいると、が笑いながら背中に手を回してきた。
「もちろん、精市の腕の中が一番だよ」
「……」
「ねえ、もう撮るのはいいでしょ。私、そろそろ精市くんと、エッチなことしたい……」
そんなことを彼ジャージ中の恋人に上目遣いで言われて理性を保てる男がいるのだろうか。いや、いない。
抱き締めたままベッドに押し倒す。見慣れたシーツの上に寝転がったはいつもより蠱惑的に目を細めている。その指で顔の輪郭をなぞられた幸村は、顔に血が昇っていくのを感じた。
「……俺をこんなに誘惑して、どうするつもりだい」
「だって……精市くんが、あんな目で見てくるから……ずっとエッチな目で見られて、撮られてるうちに、私もエッチな気分になっちゃった……」
それを聞いて、幸村はの股の間へ手を滑らせた。下着の中を探ると、そこは確かに濡れていた。
興奮していたのだ。幸村の欲望の視線を一身に浴びて、いやらしい姿を撮られて。キスをしてからずっとどこか上の空だったのは、幸村との行為を想像して――
(エロすぎる……エロすぎだよ……!)
の痴態に一層興奮した幸村は、の局部を探る指を、いじる動きに変化させた。指を中へ入れてから鉤爪状にして、クチュクチュと派手に音を立てながら刺激した。
「あっ! や、だめ、パンツ、汚れちゃう」
すでに自分の体が出来上がりつつあるのを察してか、が自らパンツを脱いだ。続いてブラも外し、ベッドの外へと放った。
「すごい、もうこんなになってるよ、のここ。ほんと、エッチな体だね……」
「は、あっ……や、ぁんっ」
指を動かすごとに内部から愛液が垂れ、幸村の指を汚していく。二本目もするりと飲み込まれる。空いた左手で露わになった胸の頂点を摘みながらより深くまで二本挿すと、が切ない声を上げた。
「あっ、あ、ん、だめ、イきそう……!」
「……! いいよ、イって、俺の指で」
「あ、ああ、は、あっ――!」
が反応するところばかりを狙って指で押してやる。それを続けるうちに、押し倒した時にの下敷きになっていた幸村のジャージを掴んで、は体をしならせた。中から溢れてきた愛液が幸村の手のひらまで濡らしていた。それを丁寧に舐め取って、幸村は息を乱したに覆いかぶさってキスをした。
幸村との行為でが達するのはこれが初めてだった。いつも気持ちいいとは言っていたし、実際嬌声を上げてよがってはいるのだが、イくことはなかったのがひそかに気になっていた。つい二ヶ月前に童貞を脱したばかりだからしょうがないのかと思っていたが、諦めないでよかった。
「気持ちよかった?」
「……うん、すごく興奮しちゃった……」
「俺も、がイくところを見てすごく興奮してきたよ」
「んっ……ん、はあっ……!」
くちびるにキスをしてから首筋、鎖骨、胸と順に吸い付く。両手で胸を揉みほぐしながら固くなった乳首を吸うと、の甲高い声が上がった。
ああ、ダメだ。もっとの体を味わいたかったけれど、のエロい反応を見ていたらたまらなくなってきた。性器はすでにはち切れんばかりに勃ち上がっているし、も幸村を受け入れる準備は十分だろう。入れてからを思う存分しゃぶり尽くしてやる。
枕元に置いていた避妊具を取ると、一分一秒を惜しむように雑に開け、天を向いた逸物に着ける。ゴムを被った先端を割れ目にあてがうと、潤んだ肉の感触が伝わってきた。ぐちゅ、にちゅ、と擦り付けていると、業を煮やしたが腰を揺らして幸村を奥へと誘った。
「ん……精市くん……早く、入れて」
「なにが欲しいのか、ちゃんと言って」
「……せ、精市くんの……」
「俺の、なに?」
「……精市くんの……お、おちんちん……入れてほしい……」
それを口にした瞬間、きゅっと入口が狭まる感触がして、のいやらしい言葉にも体にも興奮した幸村は一気に突き入れた。
「ああっ……! ん、うっ……!」
「すっごいエッチだよ、最高……」
「もう、言わせたがりなんだから……」
「しょうがないよ、がこんないやらしいこと言うの、俺の前だけなんだから。興奮して体もいやらしくなってるし、言わせたくもなるよ」
「あっ……! ん、そう、だよ、こんなこと言わされたの、精市くんが初めてなんだから、んっ……!」
「はあっ……中、すごい……!」
一度達した後だからなのか、それとも幸村にいやらしいことを言わされた後だからなのか、中は幸村の律動を拒むように狭かった。あまりの気持ちよさにすぐ出そうになる。長い息を吐いて落ち着かせ、の腰を掴んでから改めて腰を動かした。奥の狭くなっているところ目掛けてズンズンと打ち付ける。
「あっ! あ、ああん、きもち、いい……!」
「っ……!」
気持ちいいと叫びたいのは幸村も同じだった。腰を押しても引いても快楽が脳天を駆け巡る。
ふと、の下に敷かれている立海のジャージが目に入った。幸村はピンときた。これ、今に着せたらすごくエロくないか。
ぐっと腰を押し付けてから引き抜いて、幸村はの体を起こした。突然中のモノを失って物足りないような顔をしているに、「ほら、これ着て」とジャージを着せる。前のジッパーは閉めないまま。が両袖を通したのを確認してから、幸村はベッドの上に仰向けに転がった。
「、上に乗って」
ここに座れと言わんばかりに怒張を持って示すと、幸村の上に跨ったが、そこに目掛けて腰を下ろした。
「んっ……あ、あ……」
「自分で動いて」
「あっ、ん、はあっ……」
「ああ……やっぱりエロい、最高……」
幸村の言う通りに自分で腰を振って快感を得るは、シンプルにエロかった。幸村のジャージを着せられているのも征服欲を満たされるし、動きに合わせて胸が揺れているのもがそれだけ幸村を貪っている証拠に思えてそそられる。
が幸村の上で弾む。動き自体は幸村のそれと比べると緩やかだが、時折いいところに当たるのかが甘い声を出して幸村を締め付ける。いいところを求めてまた腰を振るがいやらしくて、揺れる胸に手を伸ばし、下からも突き上げてやる。
「あっ、や、あん」
「気持ちいい?」
「んっ、う、んっ、きもちいい」
「ああ、ほら、ちゃんと俺のジャージ着て、校則違反だよ」
上下に揺れるの肩からジャージがずり下がるのを、理性を失った幸村が意味不明なことを言って咎める。上体を起こして肩にかけてやって、ジャージにすっぽりと収まったの両肩を見て満足する。こうして見ると、ジャージはの肩幅を包んでまだ余裕がある。袖も余っているし、裾もが着るとミニのワンピースのようになる。幸村はまだ成長期の途中だが、体格はもう完全に男だ。鍛えているから腹筋も割れているし、体力だって並の男よりはある。
(普段俺を年下扱いしてるけど、俺はもう男なんだよ、)
ベッドの上に座り、その上にを乗せて下から突き上げる。は幸村にしがみついて突き上げのタイミングで嬌声を上げている。もう完全に幸村のペースで、は翻弄されるままになっていた。
「精市く、んっ、あっ」
「もっと、思いっきり声出していいんだよ、俺たちだけなんだから」
「精市くん、ああっ……!」
(そうだよ、ここには俺たちだけなんだ)
の部屋だと声も物音も控えめにしなくてはいけないが、今はふたりだけ。なにも遠慮する必要がないんだと、幸村はをベッドに押し倒して激しく犯し始めた。
「あっ! あっ、だ、めっ、」
奥を小刻みにえぐるような動きに、ベッドがぎしぎしと軋む音が伴った。の中は幸村に与えられる快楽で蕩けている。中を突く度にぐぽぐぽと愛液が卑猥な音を立てていた。
「あっ、ああっ……!」
「はあっ……、好きだ、も、出るっ……!」
「私も、すき、精市……! いいよ、きて、あっ、ああっ……!」
中の肉の、搾り取ってやろうという締め付けに耐えきれずに射精する。出し切るまで腰を奥に押し付け、多少呼吸が落ち着いてから引き抜いた。未練がましく絡みついてくる膣内に、本当にいやらしい体だなと思いながらゴムの処理をした。
「精市くん、ごめん……ジャージ、汚しちゃった」
荒い息の合間にが謝ったが、幸村は首を横に振った。着せたのは幸村であるし、の汗を吸ったぐらいなら汚れたうちにも入らない。むしろ、の汗が染み付いているならしばらく洗濯しないでオカズにしようかと思うくらいだった。それをに言うと絶対にやめろと反対されるので黙っておくが。
ジャージを脱いで肌を露わにしたが、見慣れた自分のベッドに横たわっている。汗に濡れて快楽に紅潮した白い肌が扇情的だった。誘われるまま、に抱きついてキスをする。
「はあ……すごくエッチだったよ、。騎乗位ってこんなにエロいんだね」
先程までのの痴態を思い出して、感慨深い息が漏れた。気持ちいいかどうかではなく、が幸村の上で自分で動いて幸村のモノを貪っているという事実がたまらなくエロいのだ。
「……は、恥ずかしい……」
「どうして? あんなに積極的な、初めて見たよ。すごく良かった」
「それが恥ずかしいんだってば……なんか、色々すごいこと言った気がする……」
「それだけいっぱい気持ちよくなったってことだろ? 初めてイってくれたし」
「うう……幸村くん、上手いんだもん……」
「好きな人を気持ちよくさせたいだけだよ」
を抱き締めて細かいキスを顔中に降らせると、の顔はますます赤くなっていった。
だが、がイったのは最初の指の愛撫だけである。挿入してからはかなり感じていたものの達してはいない。そこがまだまだ経験不足ゆえなのかもしれない。
「早くを俺のでイかせたいな」
「今もすごく気持ちいいから気にしなくていいのに……その歳で中イキさせられるようになっちゃうの、さすがに女泣かせすぎるよ……」
「ふふ、俺も女泣かせにはなりたくないよ。しか泣かせたくないからね」
こうやって肌を合わせる相手はしか考えられない。そう含ませて言うと、の顔がまた赤みを取り戻した。
その可愛い頬にもキスをしてから、またくちびるへ吸い付いた。舌と舌を絡ませ合って、の口の端から垂れた唾液も残さず舐めとる。
「好きだよ、。好きすぎて、もう離れられない……」
「精市くん……私も、大好き……」
再び熱を帯びてきたの瞳を見つめて、想いを口にする。本当に、以外を目に入れる余地もないほど、幸村の中はへの感情で埋まっている。と別れるなんて考えられない。と一緒になることしか見えていない。
キスを繰り返しているうちに、また体の熱が上がってきた。夜は長い。ふたりが愛を交わす時間はまだ残っている。幸村の手がの秘所を探り、まだ十分な潤みが残っていることを確認する。
「……もう一回、いい?」
クチュクチュと粘着質な音を立てて指を動かすと、が短く喘ぎながら脚を開いた。どうやら、これが答えらしい。もう一枚コンドームを手に取ると、幸村はまた豪快に封を切って中身を取り出した。
結局、この日は三回セックスをした。夜は長いといえど、の体力には限りがあるし、幸村も明日も変わらずテニスだ。惜しみつつもふたりでシャワーを浴びて就寝した。
***
翌朝は部活がある幸村に合わせて起床し、昨晩のカレーを食べて幸村宅を後にした。一晩おいたカレーがまた美味しくて、幸村は絶対真田に自慢しようと思った。
のマンションの前に来ると、猛烈に離れがたくなっての手を離すことができなくなった。
「精市くん、もう行かないと」
離そうとしてもぎゅっと手を握ってくる幸村に、が困ったように眉尻を下げた。
「……うん、わかってる。ごめん、困らせてるね」
部活に行かなくてはいけないとわかっているのに、手のぬくもりが離れていこうとすると、反射的につかんでしまう。こんなことをしてもしょうがないとわかっているのに、を前にすると上手く自分を制御できない時がある。
「精市くん。精市くんに渡したいものがあるんだけど、ちょっと手を離してもらえる?」
動く様子がない幸村に苦笑いをこぼしたは、そう言って幸村の手から離れた。手の中からなくなったぬくもりに途端に胸が苦しくなる幸村だが、の話を聞こうと口を閉じて待った。
が鞄から取り出したものは、キーケースだった。中に納まっている鍵をひとつ外し、それを幸村に差し出した。手のひらに乗った鍵は、真新しいものだった。これとよく似たものがもうひとつキーケースにある。そっちはが普段使っているものだ。
「これ、まさか」
「私の部屋の鍵。平日に会う時精市くんを待たせちゃうことがあったから、それで部屋の中で待っててもらおうと思って」
つまり、合鍵である。合鍵というワードを思い浮かべた瞬間、幸村の心臓はうるさいほどに高鳴り出した。の顔を見ると、は穏やかに笑っていた。
「いいのかい、俺に合鍵なんて渡して」
「ん? 私はいいと思ったんだけど、いらない?」
「まさか! でも、絶対好きに使ってしまうよ。夜中に忍び込んだりするかも」
「うーん……それ、普通に考えたら悪いことだけど、私にとっては別に悪いことでもないからなあ……私の部屋に突然来たりするくらいならいつでもいいよ。できれば連絡してほしいし、危ないことはしないでほしいけどね」
そんなことをさらりと言うものだから、幸村はたまらなくなってを抱きしめた。連休中だが仕事があるのか、マンションから出てきたスーツ姿の男が奇異の視線で幸村たちを一瞥した。そんな目もまったく気にならなかった。
「ありがとう、大切にする……」
「うん。なくさないでね」
「ああ、絶対」
合鍵を渡してくるということは、幸村のことを信頼しているということ。幸村にそれだけ心を許していて、受け入れているのだ。夜中に突然来ても構わないと困った様子もなく言うくらいには。
その心が、どうしようもなく嬉しかった。
もう本当に学校に行かないとまずい時間になったので、腕の力を緩めてを解放した。くちびるを音を立てて吸って、ようやく離れる。
「じゃあ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい、精市くん」
「……今日、帰りに寄ってもいいかい?」
「うん、待ってるよ」
その返事を聞いてからもう一度キスをして、それからようやく学校へと歩き出した。曲がり角でを振り返ると、まだ幸村のことを見送っていて、手を振っていた。手を振り返して角を曲がると、今度こそが見えなくなった。
姿が見えなくなっただけで胸が苦しくなった。もう会いたい。
こんなに好きになってもいいんだろうかと少し怖くなるくらいにどんどん好きになっていく。深みにはまっていっている感覚を覚えるほど、しか見えていない自覚はある。
加速度的に想いを深めていく自分をがどう思っているのかわからないが、テニスや学業、友人との付き合いをおろそかにしなければ咎めたりはしないだろう。そのラインを超えなければ、は幸村を拒絶したりはしない。逆に言えば、との約束よりもそれらを優先させたがるし、テスト期間などには厳しいのだが。
への想いを日々持て余している幸村に対し、は冷静に線を引いていて、そんな彼女を恨めしく思うこともある。その線引きが幸村を思ってのことだと理解しているだけに、余計に持て余してしまうのだ。だから、なにも我慢しなくていい触れあいの時間が待ち遠しくなる。
(それも、俺が自立するまでの辛抱か)
今はどうしようもないことについての考えを息を吐いて中断すると、幸村は駅までの道のりを走り出した。
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