スコールと夜道2



 はいつものようにバイトを終わらせ、お迎えを待っていた。今日のお迎えはスコールだ。
 十一月にもなると寒さが体にしみる。特にトレイやトングを洗った後なので、手がかじかむ。両手をすり合わせていると、スコールが見えた。はスコールのほうへ駆け寄る。
「ううー寒い」
「……手袋は?」
「今日忘れちゃったんだよね。出掛けにバタバタしてて」
 は少しほっとした。というのも、昨日高谷家で夕飯をご馳走になって帰ると、なぜかライトとスコールの機嫌が少し悪かったのだ。ライトには遅くなってごめん、と謝ると、「いや、君が無事ならいいんだ」と機嫌を直してくれた。しかしスコールの機嫌は直らず、どうしたものかと今朝まで悩んでいたのだが、今の様子を見ると機嫌は直っているらしい。よかったよかった、と思いつつ手をさすっていると、不意に、スコールから手袋を差し出された。
「え?」
「片方貸してやる」
「え、でも」
 が断ろうとすると、スコールはすばやくの左手を取って、手袋をはめた。そして、の右手を取り、自分の上着のポケットに入れたのだ。
(こっ、これって……!)
 少女マンガ等でよく見る光景だ。カップルとか、両思いなのに付き合ってない男女がやる。
 スコールを見ると、自分のしたことに照れているのか、そっぽを向いている。
(か、可愛い……)
「ありがとう、スコール。あったかい」
 スコールは頷いただけだった。が、機嫌は悪くないだろう。今なら、昨日の不機嫌の理由を聞けるかもしれない。
「ねえ、なんで昨日怒ってたの?」
「…………別に、怒ってない」
「でも、機嫌悪かったでしょ。私、なんかした?」
「…………」
 少しの沈黙の後、スコールは渋々口を開いた。
「……クラウドと、いつあんなに仲良くなったんだ」
 は目を瞬いた。クラウドと仲がいい?
 昨日はバイクで送ってもらったのだが、は膝上丈のハーフパンツにタイツをはいただけだったので、足が非常に寒かったのだ。それを「足寒い!」「そんな格好してるからだ」と言い合っていただけなのだが、スコールには仲良く見えたのだろうか。
「いや、昨日やっとまともに話したんだけど……」
「…………そうか」
「クラウド、私とスコールが付き合ってるって思ってたから、私のことなんて興味ないと思うよ」
「……っ!?なんだって?」
 スコールが勢いよく振り向いた。
「ほら、これしてるから、そう思ったんだって」
 がペンダントを指すと、スコールが納得したように息を吐いた。スコールの顔が、少し赤くなっている。
「……悪かったな」
「ん、気にしてないよ。私がなんかしたんじゃなくてよかった」
 スコールのポケットの中でつないだ手に、少し力を入れると、スコールが握り返してくれた。
(可愛いなぁもう)
 スコールの赤くなった耳を見て、は心まであったかくなった気分だった。



「そういえば、クラウドってなんのバイトしてるのかな?」
「……知らないのか?」
「スコール知ってるの?」
「ゲーセン」
「……………………あ、そう」


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