可愛いを汚して


※Twitterタグ「いいねした人のイラストを小説にする」その2。しをさん(@siwo_fgo)のイラストが元です


 はらり、と乳房を覆っていた下着が落ちていった。
 背中に回された男の手が、ブラジャーのホックを外したのだ。縁にレースが付いていて、谷間部分にリボンが付いているそれは、が普段着けているものより幾分可愛らしいものだ。重力に従って落ちていき、男の手の上に着地した。つまみ上げられて、じろじろと観察されているのを見て、自分の意図を見透かされているような気分になって、は視線を泳がせた。当然のようにの様子に気が付いている男──キャスターのギルガメッシュは、つまみ上げたブラジャーをひらひらとの前で振った。

「な、なんですか。人のブラで遊ばないでください」
「いや、我の記憶にない下着だと思ってな」
「そ、そうですか? 前から持ってましたよ」
「貴様もついに惚れた男の前でめかしこむことを覚えたか」
「なっ……!? ま、前から持ってたやつだから!」
「ほーう? 前から持っていたものならなぜ今頃改めて着けたのだ」
「たまたま! 今日たまたまだから! べ、べつに王様のために可愛いブラしてたんじゃないから!」
「我はなにも言っておらんぞ」

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるギルガメッシュの顔を見て、ははっと我に返った。必死に否定するうちにすっかり墓穴を掘ったらしい。今から言い訳を考えても、ギルガメッシュにばれてしまった以上はもう無駄だ。なにを言っても論破される未来が見える。

「ふん、貴様もつくづく我に惚れこんでいるな? 我のために少しでもめかしこもうとする努力は認めてやろう」
「うう……は、恥ずかしいからもうこの件には触れないでもらえませんか……」

 ずばり言い当てられてしまい、真っ赤に染まった顔を覆う。別に、ギルガメッシュのために可愛い下着をつけようとかそんなんじゃない。ただ、普段着けている、カルデア支給の下着が、あまりにも色気がないから。たまには可愛いものを身につけたくなったのだ。

(たまには、可愛いのをつけてるんだって知ってもらいたかっただけだし……)

 ギルガメッシュの記憶にあるが、色気のない無地の白やグレーの下着だけなんて、嫌だっただけ。だから、ギルガメッシュのためではない。
 くるくると弄ばれていたブラが、再びの胸に押し当てられた。

「つけろ」
「はい?」
「これを再度つけているところを見せろと言っている」
「え……え? なんで?」
「我が見たいと言っている、早くしろ」

 外したものを再びつけろとは。やる気満々で、ろくに見もせずに早々にブラを外したのはどこの誰だ。そう思いつつも視線で急かされ、このめんどくさい王様の機嫌を損ねたくないは言う通りにした。
 乳房にカップを当てて、背中のホックを留める。ずしりと肩に重みがかかる。この王様と男と女の関係になってからさらに大きくなってしまった胸に、じっと男の視線が注がれている。ブラをつけている状態でも──先ほどのやり取りの後では、ブラをつけていても恥ずかしい。それでも腕で隠したりはしない。許されていないからだ。
 手が伸びてきた。レースと柔肌の境目を、指でなぞっていく。時折、爪が肌を優しく引っ掻いて、の頬に朱が差した。

「ん、っ……」

 右胸から左胸にかけてレースをなぞった後、人差し指で谷間のリボンを爪弾く。それから、ふくらみの頂点を指の先でつついてきた。

「あっ」
「なるほど。男を誘う、というよりも、自らの好みのほうが大きかろうが、確かに普段のものよりかは目を楽しませる」
「んっ、王様……」
「その心に免じて、今宵は下着をつけたまま可愛がってやろう」
「え……? あっ」

 いきなりブラの上から胸を鷲掴みにされたかと思うと、右胸にくちびるを寄せられた。先ほどの刺激で勃起した乳首をブラ越しに探り当てると、そこを、布地もろとも口に含んだ。

「なっ、なにして、あっ……!」

 がギルガメッシュの口元を見ると、ギルガメッシュの厚い舌がブラの布地をべろりと舐めるところが目に入ってきた。唾液をたっぷりと含んだ舌は、ぬめぬめと光っている。ブラの厚い生地を唾液で浸してしまおうというのだ。

「だ、だめ、王様、や、んっ」

 がぶりと歯を立てられた。布地越しなので痛くないが、歯で挟む力はかなり強い。敏感になっている乳首を挟まれて、悲鳴に近い声を上げる。その間、左胸は布地越しにコリコリと乳首を引っ掻かれている。
 口の中で唾液に浸された布地は完全に湿り、とうとう乳首を濡らしてしまう。舌が布地を押し、ざらざらとした布の感触が乳首を責める。時折唾液を吸うようにして乳首を思い切り吸われ、は甲高い声を上げる。

「ひゃうっ、だめ、吸わないで、あ、ンっ」
「どれ、こちらも可愛がってやろう」
「ああっ……!」

 今度は左胸が同じ目にあった。唾液で濡らしたブラを、その下にある乳首を巻き込むように強く噛んだり吸ったり。ギルガメッシュの口から離れた後も、尖った乳首の先端とブラの布地が擦れて微細な刺激で感じてしまう。顔を真っ赤にして快楽に耐えるを見下ろして、ギルガメッシュが薄く笑った。
 次にギルガメッシュはの両脚を掴み、大きく股を開かせた。ブラと揃いのパンティのクロッチ部分は、うっすらとシミができている。

「だめだと言いつつもう濡れているではないか、ん?」
「やあっ……そんなとこ、そんなに見ないで……!」
「見せるためにこの下着を身につけているのだろう? だったらしっかりと見せろ」
「あっ!? や、だめ、におい嗅がないで、あんっ……!」
「いやらしいにおいだ。発情した女のにおいがするぞ、
「そんなこと、んっ、言わないでぇっ」
「どれ、ここもこのまま愛でてやらねばな」
「あうっ……!」

 シミがついた部分に鼻先を寄せ、すんすんとにおいを嗅いでから、胸と同じようにそこを唾液たっぷりの舌で舐めあげた。なぜにおいを嗅いだのか、ギルガメッシュの趣味なのか、それともを辱めることが好きなのか、そのどちらもか。定かではないが、ギルガメッシュに辱められると、嫌だと思う心に反して体は高ぶってしまう。今だって、においを嗅がれて浅ましい体を指摘されたことで、さらに下腹部が疼いてしまった。そんなの体を誰よりも知っているから、ギルガメッシュはセックスのたびにの羞恥心を煽ってくる。
 パンティはブラよりも生地が薄い分、すぐに唾液で濡れた。クロッチの布地越しに敏感な突起と割れ目を舌でぐりぐりと押されたり、べろべろと舐められたり。の体から出てくる愛液と合わさって、そこはすぐにびしょびしょになった。

「あっ、や、そこは、あんっ、そんなにしちゃ、あぁンっ」

 くちゅくちゅ、ぴちゃり、ずずっ。
 の喘ぎ声の合間に、いやらしい湿った音が耳に入ってくる。その音で、自分の股の間がどんなふうになっているのかが想像できる。唾液と愛液で色を変えたパンティが張り付いて皺を作り、淫らな突起も、いやらしい穴も、その形を浮き彫りにしているのだ。
 そこにひっきりなしに吸い付いて、また湿らせている男の姿を思い浮かべるだけで、の腰は誘うように動いてしまう。

「あ、ああっ、だ、め、王様っ、王様ぁ……!」

 混ざりあったものをちゅーっ、と強く吸い込まれ、は腰を浮かせた。下腹部から全身に広がる快楽に身をよじって耐えていると、いつの間にか全裸になった男がの両脚を抱えていた。腹につきそうな程に反り返った肉棒を、パンティ越しに突起と割れ目に擦り付けてくる。まさか、と思った直後に、パンティを脱がさず、クロッチ部分をずらして剛直を挿入してきた。

「あ、あっ……そん、な、はいたままなのに」
「今宵は下着をつけたまま、と言ったであろう。貴様も随分と興奮しているではないか。いつもより濡れているぞ」
「んっ、や、あっ……!」

 ブラもパンティも身につけたままなんて、初めてのことだからだろうか。奥まで突き入れられた時の肌の感触がなく、代わりに湿ったパンティが押し付けられる感触がして、まるで。
 一瞬よぎった考えを振り払うように、頭を振る。それをが快楽を感じているゆえの行動と取ったのか、それともの考えを見透かしているのか。ギルガメッシュは奥を突くと一旦腰を引き、の体を反転させた。膝立ちになったギルガメッシュに腰を高く持ち上げられると、布をかき分けて熱く太いものが入ってきた。

「ん、んう……あっ、ああっ、王様っ、ひんっ」

 剛直の形に慣らすようにゆっくりと奥まで入れてから、ゆるゆると腰を動かし始める。最初はゆっくりと、だんだん強さと速さを増していく。ぱん、と強く突き入れられると、快感で力が入らないの体が前方に押し出される。それを煩わしく思ったギルガメッシュが、の背中に回っているブラのサイドベルトを掴んで引き寄せた。

「あっ! は、あん、やだ、そんなとこ掴んじゃ、だ、め、あうっ」

 ギルガメッシュが激しくの中を突き上げる。揺れ動く体が、サイドベルトを引っ張って引き寄せられる。そんなことをされては、たちまちブラのサイドベルトが伸びてしまう。

「はあっ、だめぇっ……!」
(こんなの、まるで)

 ──犯されているみたいで。

「っ、中が締まったぞ、なにを考えていた? 言え、
「んっ、や、やだっ、ひゃうっ」
「まあ、大方予想はつくが。貴様、我に乱雑に扱われて興奮したな?」
「……っ! ち、ちがう、そんなこと、ああっ! はげし、あうっ」

 再びサイドベルトを強く引き寄せられ、ズンと奥に衝撃が走る。体が震え、嬌声が上がったことが、すべての答えだった。

「はっ、体は正直とはよく言ったものだな! 下着を使って引き寄せられて、犯されているようだと興奮したか?」
「やぁっ、ちがう、ちがうのぉ……! ひゃあっ!」
「どの口が言うか、この好き者め!」

 腰を掴んでいた手で尻を叩かれた。ぱん、と高い音が鳴っていたので、尻にはさぞ見事な手形がついていることだろう。下着を使って引き寄せられたり、尻を叩かれながら容赦なく奥を突き上げられて、あられもなく嬌声を上げている自分が恥ずかしくて、どうにかなりそうだった。

(こんなの、やだ、恥ずかしくて、おかしくなっちゃう……!)
「あ、ああっ、だ、めぇっ……!」

 目の前に火花が散った。絶頂を迎えたのだとわかったのは、肉棒のピストンが再開してからだった。もう一度尻を叩かれ、切ない声を上げてしまう。

「イったな、
「や、あんっ、はあっ」
「羞恥心を煽られながら犯されて極まるとは、とんだ淫乱よなあ?」
「あっ、ああっ、ちが、う、いんらんじゃ、ひうっ」
「まだ認めぬか、強情め。まあよい、いずれ自ら淫乱だと叫びながら絶頂するまでに調教してやろう。今は」
「あっ!」

 奥を突いてから肉棒を引き抜くと、再びを仰向けにしてから貫いた。ぐちゅ、と音を立てながら飲み込まれたモノで、の奥を抉るようにして腰を打ち付け続ける。

「貴様に似合いの姿にしてやるぞ、!」
「ああっ! あっ、あぁんっ、そんな、あっ!」
「そら、イけ!」
「ひゃうっ、い、く、あっ、ああっ、おうさまぁっ……!」

 ぐりぐりとクリトリスを押されながら中を激しく突き上げられ、は背をしならせて果てた。ギルガメッシュは腰の動きを止めて締め付けを味わった後、腰を引いて立ち上がると、のブラに白濁をぶちまけた。

「あ、ああ……」

 ある程度胸に出すと、ギルガメッシュは精液で濡れた肉棒の先端をの股間に擦り付けた。パンティで擦れた感触で、中に残っていた精液がぷくりと出てくる。鈴口からこぼれ竿に垂れた精液をパンティに擦り付けると、ギルガメッシュは満足したように口角をつり上げた。

「見ろ、上も下も我の精が染み込んでいくぞ」
「うう……そんな、これ気に入ってたのに……」
「我のために身につけていたのだろう、ならばこうなって本望だろう」
「もう、ばか……」
「汚されて興奮したくせになにを言うか」
「う……そ、それは、ちょっと興奮した、けど……」

 のことならなんでもお見通しのようで、もはや否定する気も起きず、素直に白旗を上げる。情事後の赤い顔に、さらに羞恥の色を足したを見下ろすギルガメッシュの顔には、ご満悦といった表情が浮かんでいた。
 絶頂の余韻が抜けた頃に身を起こし、ギルガメッシュの唾液と精液、それにの汗でべとべとになったブラとパンティを脱ぐ。

(これ、どうしよう……)

 洗ってちゃんと精液のにおいとか取れるのだろうか。ブラは引っ張られて伸びてしまったかもしれないし、パンティもずっとクロッチをずらして行為に及んでいたので伸びたかもしれない。えっちの小道具にしてしまったものを誰に相談できようか。下手をすると、この下着はこのまま捨てることになるかもしれず、今更ながら後悔する。

「これ、私が持ってる下着の中で可愛いやつだったんだけどなあ……」
「下着ぐらいでなにを暗い顔をしている。買えばよかろう」
「ええ……カルデアで下着の通販するの気まずすぎます、無理」
「ならば我が買い与えてやろうか?」
「えっ」

 ギルガメッシュの発言に驚いて彼のほうを見ると、にやにやと意地の悪い顔をしていた。その顔を見ては直感した。これは困っているマスターを助けてあげようとかそういうことではなく、明らかにで遊んで楽しもうという意図で言っているのだと。

「あの、やっぱりいいです」
「遠慮するな。我の選んだ下着を貴様に与えてやろうというのだぞ。こんな気まぐれをまたいつ起こすとも限らん、素直に受け取るがよい」
「いやいやそれ絶対私で遊んでるだけですよね? 絶対穴空いたパンツとか透け透けの赤のレースのブラとパンツとか紐状のそれもう紐じゃんて感じの下着とかですよね!?」
「雑種にしては察しがよいな。さては貴様、我にエロい下着を与えられるのを期待していたな? この好き者め、よいぞ、期待には応えてやろう」
「ちがーーう! 全っっ然期待してない!」
「こやつめ、よいよい、照れずともよい。雑種の浅ましい欲望を叶えてやるのも王の務め。今の我は賢王と慕われるだけあって寛容だからな」
「そんな寛容さ求めてないから! 謹んで遠慮します!!」

 このやり取りを三十分ほど続け、なんとかギルガメッシュの説得に成功したは、間一髪エロい下着を買い与えられる危機を脱した。
 しかし。結局、この日身につけていた下着はゴムが緩んでしまって捨ててしまうことになり、それに気づいたギルガメッシュに代わりの下着をこれでもかとチェストに詰め込まれることとなった。



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