女の子の日


※本番なし


「うう……お腹痛い……」

 ある日の夜、藤丸は腹を手で覆うようにしてベッドに横になっていた。女性に付きもののアレ、生理痛である。今日は一日目の夜。生理痛が重い時であった。
 会社を休んだりするほどの重さではないが、やはり腰のだるさや腹痛、重い時は頭痛もある。今日は頭痛はそれほどではないが、腰の疲労感が半端ではない。定時でさっさと帰ってきて、あったかいものを食べてから風呂に入って早めに床についている。

(今日はせっかくギルが帰ってきてるのに、体調悪いって会うの断っちゃった……)

 ギルガメッシュが日本にいる時は、基本的に夜は一緒に過ごす。だが今日は夜の相手もできない上、起き上がっていることもつらいので断ったのだ。ギルガメッシュは電話の向こうで大層不満そうだったが、体調が悪いなら仕方ないと引き下がってくれた。

「……仕方あるまい、体を温めてゆっくり休め」
「……え、いいの?」
「いいもなにも、体の生理現象はどうしようもないだろう。我は医者ではない。貴様を前にしておあずけに耐えられる男でもないつもりだ」
「ギ、ギル」
「気にせず今夜は養生しろ」
「うん……ありがとう」
(ギル、今頃なにしてんだろ)

 今日はと会う予定だったから仕事はそれほど入っていないはずだが、空いた時間は有効に使う男だ。おそらく仕事を片付けていることだろう。
 生理になっていなければ、今頃はギルガメッシュと会っているはずだった。離れていた時間を埋めるように、触れ合って言葉を交わして、情熱を分かちあっていたはずだ。
 さびしい。本当は隣にあるはずの体温がない。ひとりきりのベッド。あったかくしているはずなのに、どこかひんやりしている気がする。

(さびしい)

 膝を抱えるようにして布団の中で縮こまると、は無理矢理目をつぶった。さびしい気持ちはギルガメッシュに会わない限り消えない。ならば、今は目をつぶるしかないと思ったのだ。
 それから電気も消さないうちにうとうとしていたは、不意に体に降りてきた重みで目が覚めた。

「!? な、なに!?」
「ん〜、起きろ
「ん……!? ギル!?」

 目を開けて飛び込んできたのは、の体に回されたたくましい腕だった。頭のすぐ後ろから聞こえてきた声は確かにギルガメッシュのもの。横向きに寝ていたの背中に抱きつくようにしてのしかかっているらしい。

「ギル、なんでここに……!?」
「貴様に会いにきたに決まっているであろう」
「会いにって、今日は」
「すん、いいにおいがするなぁ
「え、うん、お風呂入ったし……って、ギルはお酒くさい……!」
「なに、コトミネとちょっとな。飲んだうちにも入らんぞぉ」
「すごい酔っ払ってる……! ん、や、ギル、おもい……」

 すんすん、とのうなじや髪のにおいを嗅いでは、ちゅ、ちゅっとそこに吸い付いている。それはだんだんと顔に移動してきて、の頬やこめかみ、まぶた、くちびるなど、顔中どこへでもキスを降らせている。そのくちびるからは、やはり度を越したアルコールのにおいが漂ってきている。

「ギル、ん〜〜!」

 重いから離れて、と言おうとした口を塞がれた。舌でべろべろと口内を舐められて、ぐちゅぐちゅと唾液がかき回される音が内耳から伝わってくる。その舌からもほんのりアルコールの味がする。のしかかってくるギルガメッシュの重さと息苦しさに、しばらくされるがままになっていたが、ギルガメッシュの手が胸を揉んでいることに気がつき、慌てて首を振ってキスから逃れた。

「ぷはっ、ギル、今日はえっちできないんだってば!」
「んん、よい香りだ。貴様はなぜそんなにいいにおいがするのだ」
「あ、だめったら、もーー話聞いてこの酔っ払い!」

 パジャマのボタンを外して、就寝前でブラジャーをしていなかった胸の谷間に顔を突っ込んで大層御満悦である。の話も聞いているようで聞いていないし、数時間前に自分が言ったことも欲望を前にして失念しているらしい。手に負えない酔っ払いである。
 ギルガメッシュの肩を押してなんとか逃れようとするが、の力ではびくともしない。そうしているうちに、パフパフを楽しんだギルガメッシュがキャミソールをたくし上げて、胸を直接揉み始めた。

「あ、こら! だめ、ギル……!」
「はあ、、よいぞ、乳首もこんなに上を向いて、いやらしいぞ
「あ、あん、ばかぁ……だめって言ってるのにぃ……ひゃ、あん」

 ギルガメッシュの体をぽかぽかと叩いても抵抗にすらなっていないようで、興奮で息を荒らげたギルガメッシュはの体を両腕で抱きしめると胸を吸い始めた。としても、そこを刺激されてしまうと弱い。さんざんこの男に開発されてしまったのだ。
 ちゅっと乳首を吸って先端を硬くすると、それを舌で転がすように舐める。それの繰り返しで、の胸元からリップ音がしばし絶えなかった。

「あっ、は、あん、だめ、ギル、ほんとにだめなんだってばぁ……」
「こんなにエロい声を出しておいて、なにがだめなものか」
「やぁん、だから、聞いてって、ギルぅ……」
「貴様のだめだめは期待の表れだぞ、。我は詳しいのだ」
「やっ、だめ、そこは……!」

 ギルガメッシュがの抵抗にも構わず、太ももを撫で回し、股間へ指を這わせた。

「む?」

 そこがいつもの柔らかい肉の感触ではないことに気がついたギルガメッシュが顔を上げた。その顔を睨みながら、はもう一度電話と同じことを言った。

「今日は生理だから、えっちできないってば」
「なんだと……!? それを早く言わぬか!」
「言いました! 電話で言いました! ギル、仕方ないって言ったじゃん!」
「電話だと? 我はコトミネと飲んでからここに直行したぞ」
「だから、ギルが言峰部長と飲む前に電話したんだけど」
「…………」
「…………」

 ギルガメッシュが気まずそうに視線を逸らした。の言葉で電話のことを思い出したのだろう。これでやっと大人しくなってくれるかとは期待したが、ギルガメッシュは手早くベルトを緩め始めた。

「ちょっ、ギル!?」
「ええいこの猛ったモノが目に入らぬか! ここまで本気で勃っておるのに貴様を前にしておあずけだと!?」
「えええ……」

 スラックスと下着を一気に引き下げてボロンと飛び出してきた彼のイチモツは、マックスで勃起していた。確かにこの状態でなにもできないのは、男として拷問に近いのかもしれない。だが、との電話を酒で失念して勝手に盛ってきたのはギルガメッシュだ。としては一体なにを言ってるんだと言いたい。
 が反論で口を開きかけた時、ギルガメッシュはの右手を掴んで自分の股間へと導き、そのイチモツを握らせた。

「ちょっ、ギル! な、なにして」
「これを手でしっかり握るのだ、!」
「な、や、ちょっと……!」
「どうなっている? 我のモノは。よく見ろ」
「え……? えっと、硬くて、太くなってる……ギルの、熱い……」

 たくましく育った彼の肉棒を見て、手で握っていると、不思議とどきどきしてきた。の手に収まり切らないそれは、充血して天を向いている。自ずと右手が肉棒を扱くように動いていた。

「ふ、まったく貴様は天性の淫乱よな。コレを握っただけで顔つきが淫らになる」
「い、淫乱じゃないもん……」
「では、なにか言う前にコレをしごいているのも淫乱ではないと?」
「だ、だってぇ……えっちできないから、せめて口で、って思って……」
「いいぞ、貴様の口で我を射精まで導いてみろ、
「う、うん……は、ん……」

 ベッドから降りたギルガメッシュの足元に膝をつくと、手にしたままの肉棒を咥えた。
 張り詰めたモノは硬く、大きい。口の奥まで入れても根元までは入り切らず、根元は手で扱く。口の中で竿に唾液を絡めるように舌を動かして、同時に頭を前後に動かして肉棒を口の中へ出し入れする。気持ちいいのか、ギルガメッシュの太ももがぴくりと震え、口の中のモノもビクビクとはねる。
 そのやり取りがしばらく続き、が左手でギルガメッシュの睾丸も弄び始めると、ギルガメッシュが興奮を抑えきれなくなったようにの頭を掴み、自分で腰を動かし始める。

「んっ、む、ふうっ」
「はあっ、、いいぞ、そのまま吸え!」
「ん、ん〜〜っ!」
「ぐ、っ、出すぞ……!」

 大きく脈打った肉棒からドロドロしたものが出て、の口内を汚していく。脈動が収まるのを待って口から肉棒を出すと、先端と口の間に糸が垂れた。口の中のものをすべて飲み込む前に、先端からとぷりと残滓がこぼれてきた。それが垂れる前に、亀頭にキスをするようにくちびるをつけ、吸った。

「ん、もう、これでいいでしょ、ギル……」

 もう終わったとばかりにが口を濯ぎに行こうとすると、ギルガメッシュがむっと眉を吊り上げての体に抱きついた。

「ギル?」
「そうではない、。貴様はひとつ思い違いをしている」
「思い違い……?」
「我は、貴様を抱きたいのだ。
「……? でも、今」
「違う。我が貴様の口で射精したことは貴様を抱いたこととは違う。我は貴様とセックスがしたい」

 一体なにが違うと言っているのだろう。セックスができないから口淫したというのに。彼の言わんとしていることがわからず、首をひねるばかりだ。
 そんなの様子を見て、ギルガメッシュは小さく息を吐いた。

「セックスとは我が、男が射精するだけして終わるものか?」
「……そうじゃない、と思うけど」
「そうだ。ふたりでするものだ。だが貴様は今、我が果ててそれで終わりだと言わんばかりだった。そうではない、我は貴様とのセックスでそんなことを求めているのではない」
「……ギル?」
「我は、貴様を抱きたいのだ。貴様を抱くことで、貴様を愛でたいのだ、
「……!」

 ギルガメッシュがの体をそっとベッドに横たえた。その上に覆いかぶさりながら、はだけたパジャマから露出した肌に手を這わせる。の肌を手のひら全体で味わうように、ゆっくりと。

「貴様の身も心も愛で、溶かしつくす。それが我の言うセックスだ。ただ我が果てて満足すればいいというものではない。一方的な行為になど意味はない」
「ギル……」
「互いに求め、愛し高め合う。貴様もそれを望んでいるのであろう」
「う、ん……そうだね、確かにギルの言う通り……確かに思い違いしてた、ごめんなさい」
「よい。理解し態度を改めるならそれで許す」

 セックスはふたりで行うもの。一方的にどちらかが満足してそれでよしとするのは、それは恋人同士の行為ではない。ギルガメッシュはそう言いたいのだ。そんな行為は、一方をないがしろにしている。
 お互いを愛しいと感じ、触れて、高まり合ってこそ。
 確かに、逆の立場で考えると、だけイかされるだけイかされて終わりなんて、さびしすぎる。好きだからこそ体に触れたい。──気持ちよくなってほしい。
 それを忘れていたに、ギルガメッシュが怒るのも無理はなかった。
 ギルガメッシュはしゅんと目を伏せたの前髪をかき分け、額にキスを落とした。これで許す、ということだろう。
 は不意に感じた疑問を口にしてみる。

「でも、さっきのフェラは」
「それはそれだ。我は男だ。射精するかしないかで言えば射精したいに決まっている」
「あ、そう……」

 かっこいいことを言っておいてこれである。雰囲気が台無しだが、そこがギルガメッシュらしいといえばらしいところだ。が半分呆れているのにもかかわらず、ギルガメッシュは顔にキスを降らせている。そのくちびるを受けていると、呆れているのも馬鹿らしくなってくる。
 しかしそろそろ口の中を洗いたい。ギルガメッシュが放ったものを飲み込んだはいいが、味が残っている気がするのだ。
 相変わらずのしかかったままのギルガメッシュに声をかけようとしたは、彼が体をまさぐっていることに気が付いた。露出した乳房を揉んで、時折乳房の先端を指で挟んだり押し潰したりしている。

「あの、ギル、なにして」
「言ったであろう。我は貴様を愛でたいのだ、
「うん……? え、や、ちょっと、」
「安心しろ、貴様も胸だけでイかせてやる」
「いやいや別に不満に思ってないから! ギル、あっ、だめ……!」
「遠慮せずともよい。常々、このいやらしい胸だけで貴様が達するかどうか試したかったのでな。ちょうどよい機会だ」
「や、ぁんっ、ギル、は、あっ……!」

 それから、肌を吸う音との甘い声が、の部屋をしばらく占拠していた。
 が胸だけでイかされてしまったかどうかは、ふたりのみぞ知るところである。



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