汗とノースリーブ


※腋舐め


「んっ、ふ、ぅ……」

 口の中に含んだ熱に舌を這わせるたびに、それは硬さを増していく。どんどんと膨らんでいくそれを、根元を扱きながら、喉の奥まで咥え込む。口の中から出てきた唾液を、咥え込んだものを吸い上げるようにして飲み込むと、男の太ももがぴくりと動いた。

「、いいぞ、その調子だ」
「んっ、う、ん……」
「だが、もっとだ。もっと舌を使わんと我は果てんぞ。次の会議までに、もう時間がないのであろう?」
「……!」

 ギルガメッシュの言葉にはっとして腕時計を見ようとするが、こちらに集中しろと言わんばかりに頭を掴まれた。ぐっと太いモノを喉に押し込まれ、えづきそうになるのを必死でこらえる。

「んん! ふ、あっ……」
(ギルの、おっきくて、苦しい……でも、早くイかせないと……)

 会長室のデスクの下。椅子に座ったギルガメッシュの足元に膝立ちになって、はギルガメッシュの肉棒を咥えていた。時折、熱心に舌を使っているを褒めるように、そしてギルガメッシュのほうを見上げさせるために、ギルガメッシュがの頭を撫でてくる。肉棒を咥えながら涙のにじむ目で見上げられると、ひどく煽られるらしい。にフェラチオをさせる時は必ずそうさせるのだ。



 この後の会議が迫っている中で、なぜこんなことをしているのか。
 にも原因はよく分からなかった。出先からウルク商事の会長室に戻ってくるまでは、少なくともまだ普通だったと思う。この男に普通という表現を当てはめてよいのか疑問だが。
 問題は、会長室に着いてからだ。苛烈な夏の日差しとアスファルトの照り返しで、立っているだけでも汗をかく外から冷房が効いた会長室に入り、やっと暑さから解放された。今日はジャケットの下はノースリーブシャツと、タイトスカートに薄いストッキングだったが、それでも一瞬外を歩いただけで汗が出ていた。はギルガメッシュの上着をハンガーにかけると、自分のジャケットも脱いだ。

「ふう……」
(一応制汗スプレーはしてきたけど、汗が染みてたら恥ずかしいな……)

 と、さりげなく腋を持ち上げてみた、その時だった。

「なっ……!? 貴様、!」
「はっ、はい!?」

 いつになく厳しい声がデスクのほうから飛んできた。そこで気がついた。ここに着いてから、ギルガメッシュにまだお茶のひとつも出していなかった。

(まずい……! 機嫌損ねちゃった……!?)

 先にお茶も出さないまま自分のことをしてしまったので、さすがに恋人といえどギルガメッシュも怒っているのだろう。恐る恐るデスクのほうを振り向くと、ギルガメッシュがなぜか血走った目でを睨んで──いや、凝視していた。

、貴様……こっちへ来い!」
「え、は、はい……?」
「もっと近くへ来い!」

 デスクを挟んでギルガメッシュの前に立とうとすると、さらに厳しい声で招かれた。なんだ、どうしたんだろうと思いつつ、触れられる距離まで行くと、椅子から身を乗り出したギルガメッシュがの体を抱き寄せた。

「ひゃっ! え、ちょっと……!?」

 ギルガメッシュがものすごい力でを抱き寄せ、自分の膝の上に横抱きにした。頭が状況を処理しきれずに、は目をぱちくりさせるばかりである。

「貴様ぁ……こ、このようなふしだらな格好で今まで仕事をしていたというのか……!?」
「……はい? なんて?」
「その服装のことだ、たわけ!」

 ギラギラした目での体を見下ろすギルガメッシュ。つられても自分の服を見下ろすが、

(いや……普通じゃない? ふしだらさとかないよね? 普通のノースリーブシャツとタイトスカートじゃない?)

 どのへんがギルガメッシュの言う「ふしだらな格好」なのか、まったくわからなかった。

「いや、普通だと思うけど」
「普通だと!? 貴様の常識は一体どうなっているのだ! こんな、」
「ひゃっ……!」
「乳房の形も尻の形も丸わかりの服装が、普通だと言うのか貴様!」
「あ、や、ちょっと、んっ、」

 の体を抱きしめたその手で、胸と尻を無遠慮に揉んでくるギルガメッシュ。逃げようにもがっちりと抱え込まれてしまっているし、揉む手を止めさせようと自分の手を重ねても、逆に誘っているように受け取られてしまったのか、さらに本格的に揉まれてしまう。

「ギル、ん、やめて、」
「なによりけしからんのは、この腋だ!」
「あっ!?」
「腋をむき出しにするだとぉ……これがふしだらでなくてなんなのだ!」

 と言うと、の腕を持ち上げて、無防備にさらされたの腋にむしゃぶりついたのだ。興奮したように鼻息荒く、舌でべろべろと腋を舐められて、はくすぐったさと恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

「や、やだ、そんなとこ汚いっ! やめて、ギル、あっ……!」
「汚いだと?」
「やあっ、そこでしゃべらないで、んっ、だめ、そこはぁっ……!」
「なんだ、早く言わぬか! いやらしい腋をしおって……!」
「だめ、そこ、汗かいてるから、あ、ン、だめぇ……!」
「はっ、汗などとうに舐め取ってやったぞ! どれ、そっちの腋も舐めてやろう」
「やだ、あっ、あぁん、やめ、あうっ」
「嫌がりつつも腰が揺れているぞ、この淫乱秘書め!」

 ぢゅぱ、ぢゅう、と腋についた汗だか唾液だかわからないものを吸うと、の腰が砕けた。くすぐったさと快感が合わさったようなものが腋から下腹部へ走り、羞恥心も相まっての体から抵抗の力を奪った。
 ギルガメッシュは、のシャツの胸元のボタンだけを外すと左胸だけをはだけさせ、ブラジャーをめくり勃起してしまった乳房の先端を露出させる。腋の後はそっちを可愛がり始めた。が視線を下ろすと、ギルガメッシュが自分の乳首を舌で押しつぶし、吸い付き、こねくり回している光景が目に入る。そんないやらしい光景、恥ずかしいと思うのに目が離せない。恥ずかしいのに、興奮して、もっと、もっとしてほしいと思ってしまう。

「ギルぅ……だめ、やめてってば、三十分後に、あっ、会議、んんっ」
「ならん、ふしだらな格好で上司を誘惑した秘書に罰を与えるのが先だ!」
(ギルの、もうギンギンに硬くなってる……)

 尻に押し付けられる硬いモノが、もうすっかり臨戦態勢になってしまっている。こうなってはなにを言っても無駄だ。一度射精しなければギルガメッシュの気が済まないことは、これまでの経験から嫌というほどわかっている。

(仕方ない……ここは、口で満足してもらうしか……)

 そして、セックスになってしまえば絶対に一度や二度では済まないことも、経験上知っている。これ以上体を弄られて本気になる前に、口で一発抜いてお茶を濁すしかない。

「ん、ギル、会長……わかったから、口で、するから……」
「ほう? 自分から罰を受ける気になったか」
「んっ」

 ギルガメッシュは最後に乳首をひとつまみすると、腕の拘束を解いた。絨毯の上にへたり込むように座り、はギルガメッシュのベルトを外した。スラックスと下着を一緒に下ろすと、ぶるん、と肉棒が腹につかんばかりに反り返った。
 たくましく育ったモノを見ると、なぜか胸がどきどきしてしまう。そっと竿を握って自分のほうに傾けると、ひと思いに口に入れた。



 ──というのが事の顛末だが、には未だにどうしてこうなったのかよく分からなかった。
 夏場にはよくある服装ではある。冷房がきいたオフィスではジャケットなどの上着を脱ぐ機会が少ないだろうが、一般的には珍しいものではない。ギルガメッシュの前で、初めてノースリーブシャツとタイトスカートという組み合わせを見せたからだろうか。

「どうした、舌が止まっているぞ」
「ふ、んむぅ……!」

 喉奥に突き込まれる。いけない、考えごとをしていたせいか動きが止まっていた。気を取り直して、亀頭を咥え直す。

(ギルの、やっぱりおっきいから、苦しい……エラも、こんなに張って……)

 亀頭のエラに沿って舌を這わせる。ざらざらとした舌を押し付けるように、時折ゆっくりと。

(このエラが……これが、いつも私の中をかき回して……嬲ってるんだ……)

 勃起すると一段と体積を増すそこを舌でチロチロと舐めると、口の中で肉棒がびくびくと動いた。口の中全体で亀頭を吸い上げた後は、裏筋を舐める。右手で根元を扱いて、左手で睾丸を転がしながら、ギルガメッシュの性器を懸命に愛撫する。
 はあ、と長い息を吐いたギルガメッシュが、の頭をぐっと押さえつけてきた。腰を小刻みに動かして、の口内で快楽を得始めた。

「んっ、ふ、んぐっ」
「はっ、、いいぞ、そのままだ……!」
「ん、むっ、うぅ〜っ……!」
「出すぞ……! 口と顔、どちらだ?」
「ふうっ、ふい、いっ……!」

 顔に出されてはとんでもなくあとが面倒になる。口の中に出せと伝えたいのだが、口がふさがっていてうまくしゃべれない。

「ふ、よくわからんなそれでは。仕方がない、両方にしてやる!」
「んん! む〜〜っ!」
(両方って……!)

 直後、の口の中で肉棒がひときわ大きく脈打った。口内を精液が満たす前にギルガメッシュは腰を引き、残りのものをの口元にかけた。

「ひゃ、あ、」

 最後の一滴が元気よく飛び出し、の頬と前髪を汚した。目元にはかからなかったものの、前髪から垂れてこようとする。それを慌ててふき取る。

「うう……口って言ったのに……」
「よく聞き取れなかったのでな、許せ」

 恨みがましく睨んでみても、全然悪いと思ってないような顔で荒い息を吐いている。の頬についた精液を肉棒で掬い取ると、それを舐めろと言うように口に押し付けてくる。口を開けてそれを受け入れると、青臭い匂いと味が口内に広がった。

(……ギルの、まだこんなに硬い……)

 だが、ギルガメッシュの性欲に付き合っている暇はない。時計は会議開始時刻の十分前を指している。そろそろギルガメッシュに身だしなみを整えてもらって、会議室に向かってもらわなければならない時間だ。

「会長、もうこれ以上は……」

 予定に間に合わなくなるから、とが立ち上がった時だった。
 ギルガメッシュの腕がの体を再び絡め取り、デスクの上に押し倒したのだ。

「ひゃあっ! ギ、会長、待って……!」
「まだだ、貴様への罰はまだ終わっておらんぞ……!」
「やっ、だめ、会議、間に合わないから、あっ!」

 タイトスカートをまくり上げられ、パンティをずり下ろされてしまう。脚を閉じてこれ以上下ろされまいと抵抗するが、あと十分後に始まる会議の資料が、が抵抗するたびにの下でくしゃりと鳴ったのを聞いて、体から力を抜いた。デスクの上に、資料が置いてあったのだ。そしてそれは、今はの下敷きになっている。

「心配いらんぞ、あと十分で終わらせてやる……!」
「あっ、んっ……ギル、はやく、ぅ……」

 猛ったモノで入口を擦られると、くちゅ、にちゅ、と粘着質な音がした。最初の腋や乳房への愛撫もそうだが、ギルガメッシュの性器を舐めていた最中も体が反応していたらしい。恥ずかしさで顔が熱くなる。

「会長、入れてください、だろう?」
「なっ……! そんな、恥ずかしいこと……ギル、お願い……!」
「ならん、罰だと言っただろう」
「っ……!」

 焦るを楽しそうに見下ろして、さらに焦らすギルガメッシュ。弓なりに細くなった赤い目は、情欲と嗜虐に濡れている。を逃がしてはくれない。
 迫る会議の時間。それが、の羞恥心を屈服させた。

「かい、ちょう……いれて、ください……あ、ああっ……!」

 ぐちゅ、といやらしい音とともに、剛直がの中に入ってくる。先ほど一度射精したばかりとは思えないほど硬く熱い。
 十分で終わらせるという言葉通り、ギルガメッシュは最初から激しく突き上げてくる。あまりの激しさに、の下の資料がくしゃくしゃになっていくのが音で伝わってくる。

「あっ、あっ、や、そんな、激しくしたら、資料が、ああっ」
「は、そんなもの、中身はとうに頭に入っておるわ! こちらに集中しろ、!」
「んっ、ああっ、かいちょ、ギルぅっ……!」

 だんだんとギルガメッシュとのセックスのことしか考えられなくなり、口から甘い声しか出なくなる。そんなを見下ろし、ギルガメッシュはさらに興奮したように突き上げる。
 の両手首を頭上でひとまとめにして押さえつけると、の腋がギルガメッシュにさらされる。白い腕と腋、中途半端に乱されて露出した左の乳房。そのどれもが、ギルガメッシュを興奮させる。

「つくづくいやらしい格好だ。こんな格好をして我を煽ったのだから、こうなることは予測して、いや、期待していたのだろう? 淫乱秘書め……!」
「あっ、ちが、期待してなんか、あんっ、ちがうのぉ……!」
「貴様のような淫乱は、上司である我が躾けなければな……! 貴様は誰のものか、しっかりと刻め!」
「あっ、あうっ、ギル、ぎるのもの、ぎるだけだからぁっ……!」

 ギルガメッシュがの両手を離し、覆いかぶさるように上体を折った。解放された両手をギルガメッシュの背に回し、彼のくちびるにからキスをする。ちゅう、ちゅぱ、とリップ音を立てながら一通りキスを楽しむと、ギルガメッシュはラストスパートをかける。

「あっ、あんっ、ああっ、ぎるっ、イくの、ぎるぅっ」

 ぱんぱん、と肌がぶつかり合う音の中に、の下の資料が擦り合う音が混じる。もギルガメッシュも、そんな資料のことはすでに頭の中にない。

「はあっ、我も、イくぞ、……!」
「あぁんっ、なか、中に出して、は、あっ、イ、く、ああ〜っ……!」
「ぐ、うっ……!」

 頭の中が白む。数瞬後、詰めた呼吸が再び動き出すとともに、全身に快楽が広がっていく。の震える腰を押さえつけたギルガメッシュが膣内に精を放ち、の首筋に顔を埋めて荒い息を繰り返している。冷房が効いた会長室にもかかわらず、ふたりは汗だくになっていた。
 呼吸が整う頃になって、ギルガメッシュが顔を上げた。どちらともなくくちびるを吸い合う。

「ん、ギル、時間……」

 キスの合間に会議のことを口にする。それも、またキスでふさがれてしまう。

「こんな格好で行けると思うのか」
「ん、それは、そうだけど……」

 情事のにおいが染みついたままでは、到底仕事の話などできないとわかっている。ここは、諦めて会長遅刻の連絡をしなければならないだろう。

「もう、ギルのせいだからね」
「なにを言うか、貴様の格好のせいであろう。ふ、そうか、まだわかっておらんようだな」

 にやりと笑ったギルガメッシュに、とても嫌な予感を覚えた。とにかく一刻も早く離れようと、ぐっとギルガメッシュの体を押し返そうとするが、の力でどうにかなるはずもなく。

「あ、いや、わかった、わかったから! 私が悪かったから!」
「ふん、遅いわ。貴様が反省していないのはわかっているぞ、。どれ、もう一度教育してやろう」
「も、もうわかったってば! とにかく、遅れるって電話しないといけないから……」
「いいぞ、好きに電話するがいい」
「あの、だから離れてください……って、あ、ちょっと、あっ!」

 中に入ったままの性器で、再び膣内を擦り始めたギルガメッシュ。

「どうした、電話するのだろう? 早くせんと会議が始まるぞ」
「あんっ、あう、だめ、だめったら、もうえっちは、だめぇっ……!」

 その後、ギルガメッシュに中を犯されながらもなんとか遅れる旨を出席予定の役員秘書に電話を入れたは、ギルガメッシュに思う存分教育されてしまった。
 教育が終わるころには、会議は終わってしまっていたという。

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