おもちゃあそび


※お題箱より「ぐだ♀にリモコン式バイブを入れたまま業務をさせる会長」


 その日は、ギルガメッシュがアメリカから日本へ一週間ぶりに帰って来た日だった。
 会長秘書となったは、いつぞやのように空港まで迎えに行き、車内でイチャイチャしながらウルク商事ビルまで戻ってきた。特に来客予定もない、仕事も立て込んでいないギルガメッシュは、比較的のんびりと仕事をするはずだった、の頭の中では。
 会長室に着くなりキャリーの中を探っていたギルガメッシュは、十五センチ四方の箱を取り出した。ギルガメッシュが自ら荷物を持ってくるとは珍しいなと思っていると、開けられた箱の中身を見てぎょっと目を瞠った。

「なに、それ……」
「気になるか? よいぞ、手に取ってみるがよい」
「え、う、うん……」

 箱の中には、三角の平たいヘラのようなものに、先端が丸くなっている十センチほどの棒状のものがついている本体らしきものと、リモコンのような部品が入っていた。本体のほうを手に取ってみる。ヘラに付いている棒の根元は細く、先端にいくにつれてだんだんと太くなっており、少し反り返っている。棒がついている側のヘラの側面、三角形の底辺側には、細かいブツブツがついている。ショッキングピンクのシリコンでできており、表面はさらさらとしていて、適度に弾力がある。
 がそれを観察している間にコートを脱いだギルガメッシュが、の腰を抱き寄せてきた。ゆっくりと腰や尻を撫でる手つきにいやらしいものを感じて、はギルガメッシュを見上げた。
 透き通った赤い瞳に宿る欲の色。それを見た瞬間に、はこのシリコン製のものの正体をなんとなく察した。嫌な予感がするが、確かめなければなるまい。

「あの、一応聞くけと、これなに……?」

 の戸惑った様子に、ギルガメッシュが楽しそうに喉を鳴らした。

「バイブだ」

 嫌な予感が当たった。女性器の中に入れて振動させて性感を呼び起こす道具である。そして、それをギルガメッシュがに見せてきたということは、これをに使いたいという意味である。

「え、まさか今使おうとかそういう……?」
「当たり前だろう。そのために買ってきたのだからな」

 至極当然という顔でのスカートをたくし上げるギルガメッシュ。は慌ててその手を掴んだ。

「ま、待って待って! なんでそうなるの!? 仕事中だってば……!」
「今日は特に予定がないのだろう、ならば誰の邪魔も入らん」
「そ、そういう問題じゃなくて、んっ」

 ギルガメッシュのくちびるがの口を塞いだ。腰を強く抱かれ、唯一自由になる右手も絡め取られて貝殻のように繋がれてしまい、抵抗する手段を潰されてしまった。長い舌がの口内に遠慮なく侵入してきて、舌先で上顎の歯の裏をなぞっていく。舌のざらざらの表面が敏感なところをチロチロと刺激し、ぞくぞくとしたものがの腰に走った。ちゅる、との唾液を吸うと、ギルガメッシュはやっと舌を抜いた。
 の顔が赤くなり、瞳が潤んでいるのを確認したギルガメッシュは、を抱えあげるとソファセットへと運び、革張りのソファにを横たえた。が起き上がる前に覆いかぶさり、またキスをする。

「ん、ふぅ……ギル、ん、だめ……」
「久しぶりの貴様との時間だ、だめとは言わせんぞ」
「でも、しごとは、」
「今日の予定は? 我の秘書よ」
「…………特に、ないです」
「いい子だ」

 抵抗の理由を奪われ、またくちびるに甘い感触が降りてくる。優しく口内を蹂躙される間に、スカートがまくり上げられるのがわかった。キスとともに太ももを撫でられた後に、股間に指が伸びて、の秘部を探ってきた。パンティの隙間から入ってきた指が潤みを探り当てると、男から低い笑い声が漏れた。

よ。貴様の体は誠、正直者よな」
「っ……! う、だ、だって、そりゃあ私だって、仕事中じゃなきゃギルとえっちしたい、もん……」
「愛いことを言うな。今すぐ入れたくなるだろうが」

 ちゅ、と軽くくちびるに吸い付いてきたギルガメッシュの瞳が、熱くを見つめていた。ひとたび日本を離れると一ヶ月は帰ってこない時も頻繁にあるというのに、一週間離れただけでこんな目をしてくる。性欲が強いというのもあるかもしれないが、それだけギルガメッシュに求められている気がして、その目だけでの胸がきゅうっと苦しくなる。

(私も、ギルと会いたかった)

 たった一週間、けれど、一週間もだ。そばにいないだけでさびしい、苦しい。もっとずっと一緒にいられるようになりたい。ギルガメッシュが日本を離れるたびに、早く一人前の秘書として彼を支えられるようにならなければ、と思うである。
 パンティを太ももまで下ろされ、脚を広げられる。あらわになったの秘部に指を這わせ、濡れ具合を確かめるギルガメッシュ。入口の柔らかさを堪能した後、人差し指を中へ入れる。

「っ、う」
「中まで濡れているな。どうした、久しぶりに我に会って興奮したのか?」
「は、ぁっ……やだ、恥ずかしい……」

 体の状態を指摘され、思わず頬を赤くすると、ギルガメッシュのにやにやとした顔が近づいてきた。赤い頬をくちびるで食むと、中に入れた指で性感帯をぐにぐにと押して、さらに中を濡らそうとしてくる。

「ふ、あ、ギルっ……」

 くちゅくちゅと音が立つようになると、やっと指を抜いた。バイブの棒部分をの中にゆっくりと挿入し、ヘラの内側のブツブツがクリトリスに当たるように位置を調整する。

「ん……う、ん……あ、なに、これっ……!」

 ギルガメッシュがリモコンでスイッチを入れると、中の疑似ペニスがうねうねと回転し始める。亀頭部分が容赦なく性感帯を押し上げ、さらにその動きによって奥へ奥へと進んでいこうとする。中に空気がないためか、回転の動きで吸い付くような動きになっているのだ。そして、奥へと進むたびにヘラのブツブツがクリトリスを刺激する。

「あ、ああ、なにこれ、んんっ……!」
「なるほど、なかなか考えて作られているな。気持ちいいか、?」
「あう、うっ……わかんな、ううっ!」
「ふ、よさそうだな。音も思ったほどうるさくない。これなら遠隔操作で色々楽しめそうだな、よ」
「いろいろ、って、あっ!」

 バイブの疑似ペニスの大きさはギルガメッシュのものと比べると長さも太さも小さいのだが、中の性感帯とクリトリスを同時かつ容赦なく責める動きが、急速にの体を濡らしていく。愛液が、粘性が強いものから水っぽいものへと変わっていき、入口から滴り始める。

(ソファに、ついちゃう)

 とは思うものの、ギルガメッシュはがおもちゃに責め立てられているところをニヤニヤと眺めているだけで、ソファのことなど眼中にもない。なんとかして、おもちゃを止めてもらわなければ。その時だった。
 ぴりりりり。
 の携帯端末の着信音だった。振動する端末を上着のポケットから取り出すと、着信画面には「ウルク商事 受付」と表示されていた。このビルの受付から電話だ。

「ギル、電話だから、んっ」
「そうか、早く取るがいい」
「そうじゃなくて! これ、止めて、あっ……!」
「そら、早くせんと切れてしまうぞ」

 電話に出るからバイブを止めろと言っているのに、ギルガメッシュはスイッチを押して動きのモードを変えるだけで止めはしない。先ほどよりもバイブの動きがゆっくりになったが、それでも下腹部にぴったりと密着して、奥へ絶え間なく快感を与えている。
 リモコンはギルガメッシュの手に握られている。鳴り続ける電話。は数瞬迷った後、着信を取った。

「は、い、藤丸です」
「ウルク商事本社ビル受付です。あの、お約束ではないんですが、藤村建設の藤村社長が、会長にご挨拶されたいとのことで受付にお見えなんですが」
「っ、藤村社長が……確認して、折り返します、んっ」

 というと、は受付の返事を聞く前に電話を切った。こんな短いやり取りでも、バイブの音が聞こえているのではないか、変な声になっていることに気付かれていないかと、色々なことが気になって寿命が縮む思いだった。ギルガメッシュを睨む。

「もう、ギルのばか、ん、あっ……だ、め、お客様が」

 の憎まれ口を戒めるように、バイブが動きを変えた。ゆっくりとしたグラインドから動きが早まる。性感に逆らえずに中を締め付けると、バイブをさらに奥へと吸い込む形となってしまい、クリトリスがブツブツで甘く痛めつけられる。

「ふむ、客か。会ってやってもよいが、そうだな……」

 楽しげな表情はそのままで、なにやら考えるような間を置くと、こんなことを言い出した。

「貴様が代わりに行ってこい」
「え……は!?」
「アポなしでやってきたとはいえ、誰かが対応してやらねばならんだろう。秘書の貴様が行け」
「それは、わかるけど、っ……! ギルは?」
「気が向いたら行ってやる」
(絶っっ対バイブで遊ぶ気だ……!)

 このニヤニヤとした顔。その表情といい先ほどの電話中にバイブを止めなかったことといい、来客対応中にバイブプレイを楽しむ気だ。

「なんで、ン、だめったら、あっ」

 なんとかギルガメッシュを説得して客の相手をさせたいが、股間にはまっているおもちゃがの意識を持っていってしまい、ろくに口を開くことができない。涙目でギルガメッシュを睨むが、愉悦状態の表情が崩れることはない。の持っている端末を取り上げると、

「我だ。あいにく我は手が放せん、客の元へは今からが行く。商談スペースの応接室に通せ」
「!」

 受付に電話をかけて、そう言い切ってしまった。逃げ道をふさがれてしまったは、口をぱくぱくとさせながらギルガメッシュの袖をつかむ。ギルガメッシュはその手を優しく撫でると、そっと突き放す。

「早く行くのだ。あまり客を待たせてはならんぞ」
「……っ! ばか、ばか!」
「なんとでも言え。だが、そうさな、それではまともに歩けんか。途中までは我が運んでやろう」

 そう言ってギルガメッシュは、のパンティとスカートを直し、横抱きに抱え上げて歩き出した。その足は会長室を出てエレベーターに乗り、応接室のある一階へと向かっている。

「ん、だめ、ったら、こんなの絶対ばれちゃうから、ぁっ」

 ギルガメッシュに精一杯抗議をして、こんなバカなことをやめさせたいのに、揺れが体に伝わってくるたびにの口からは甘い声が上がってしまう。バイブは単一的な振動ではなく、強弱を繰り返す動きになっている。バイブの振動が歩く揺れと重なるタイミングでクリトリスと中を刺激され、甘い声を抑えられなくなってしまうのだ。すっかりおもちゃに翻弄されているを見下ろし、満足そうな笑みを浮かべるギルガメッシュ。

「貴様が問題なく対応すれば、客とてすぐに帰るだろう」

 赤い瞳には愉悦の二文字しかない。もはやどうあってもを客の前に出し、バイブで弄びたいらしい。こうなった時のギルガメッシュには、なにを言っても無駄だ。信じられない、と非難めいた目で見上げても、なだめるようにキスが降ってくるだけで、行為そのものは止めないのだ。
 とうとう応接室の前に着いてしまった。を降ろしたギルガメッシュが、行ってこいとでも言うように背中を押した。その軽い衝撃にも体を反応させてしまい、ますますギルガメッシュの機嫌を良くしてしまう。

「この調子では客の前で果てるのではないだろうな?」
「っ……ばか、そんなわけ……!」

 と、強がってはみるものの、バイブの振動に絶え間なく弄られているクリトリスは、すっかり肥大しているのがわかる。バイブをはめた当初よりも、ブツブツが当たるのだ。そこだけはどんな刺激でも感じてしまう体は、中に入っている棒を締め付けて、愛液が滴り落ちそうになっているほどだった。
 下腹部の快楽の波が落ち着くまで待とうと思っていたのに、ギルガメッシュがそれを許さなかった。コンコン、と勝手に応接室のドアをノックしてしまったのである。

「ギル……!」
「客をこれ以上待たせてはならんだろうが。それとも、今ここで犯してやろうか」
「あっ……!」

 うなじに熱いくちびるを押し付けられた。結い上げられた髪を吐息がなぞった後、もう一度うなじを軽く吸われる。バイブによる快楽とは別の、ギルガメッシュに与えられる官能を呼び起こされそうになり、は応接室のドアに縋りついた。

(お客様が、ドアのほうを見てるのに)

 ノックをしたからには、中の客はドアからやってくる人物を見ようとしているはずだ。ドア越しに視線を感じて、の体がカッと熱くなる。こんな、おもちゃを股にはめられたいやらしい姿。このドア一枚を開けたら、見られてしまう。

「時間切れだ」

 わずかな沈黙の間、ブーッ、ブーッ、というバイブの音が、かすかに聞こえた。

「客が帰ったら解放してやる。それまでイってはならんぞ」
「な、そんなっ……!」
「案ずるな、貴様が淫らな顔を我慢できるのか、しっかりと監視カメラで見ておいてやる。そのために監視カメラがある商談スペースに来たのだからな」

 もう一度の背中に手のひらが押し付けられる。は潤みきった目で男を睨みつけるが、リモコンを手に持った男が表情を変えることはなかった。
 完全に楽しんでいる。バイブをはめられたが客の前でどんなことになるのか、客はの状態に気づくのか、それを見て愉悦に浸ろうとしか考えてない。

(もう、ギルのばか……! どうにでもなれっ)

 一秒たりとも待ってはくれない現実に向き合うため、ドアを開けた。
 立ったまま待っていた藤村建設の社長と営業部長の男性が、を見て頭を下げた。

「お、お待たせしました……!」
「ああ藤丸さん! すみませんアポイントもなく急にお訪ねして」
「いえ、会長はあいにく席を外しておりまして……っ」

 受け答えの最中にバイブの動きを変えてきた。断続的な動きが小刻みになり、よく耳を澄ますとブッブッブッ、という駆動音が聞こえる。水っぽくなってしまった愛液が滴るのがわかる。垂れないよう膣口に力を入れると、中の棒を締め付けてしまい、いっそう奥へと誘ってしまう結果になる。中もクリトリスもさらにいじられることになってしまうのだ。
 客がふたりで来ていてよかった。絶え間なく喋ってくれれば、バイブの駆動音に気付かれずに済む。だが一方で、面会の時間が長引いてしまう可能性がある。が口を開く回数も多くなって、甘い声を漏らしてしまうかもしれない。さらに、ギルガメッシュによっていつバイブの振動パターンを変えられるかわからない状況がたまらない。こんな時間が続けば、本当にイってしまうかもしれない。

「ギルガメッシュ会長も相変わらずお忙しいようで──」
「んっ……ァ、む……っ」
「藤丸さん?」
「あっ、申し訳ありません、く、くしゃみが、出そうになりまして……んっ」
「ああ、近頃は寒いですからなあ。うちの社内でもインフルエンザが流行っております。そちらも従業員数が多いから流行ってしまうと大変でしょう」
「ええ、そうですね、っ……今年は、まだ流行って、ないようなんですけど、」

 なんとか受け答えしているが、会話の内容はほとんど頭に入ってこない。挨拶と言っていたので特に重要な話はしないと思うが、冷や冷やするものだ。
 不意に、バイブがまたグラインドを始めた。円を描いて中をえぐるような動きになり、は思わず固く目をつぶった。怪しまれないようすぐに目を開けて、代わりにジャケットの裾をぎゅっと握った。
 滴った愛液が、パンティを濡らしているのがわかる。駆動音もそうだが、ぐちゅぐちゅと水音が漏れていないかも心配になってくるほど、の中はほぐれてしまっている。

(こ、んなのむりぃっ……! イっちゃ、う、だめ、だめぇ……!)

 見るからにつらそうな表情で頬が紅潮しているし、体だって震えているし、足も内股になっている上に時折甘い声を漏らしている。こんな状態で、バレないはずがない。バレてはいけないと思って少しでも声や表情を抑えようとすると、ますます恥ずかしくて興奮してしまい、逆効果だった。
 取引先のふたりはの様子に気づいているのかいないのか。会話からはわからないが、ふたりの目線がの下半身にいっているような気がしてならない。気のせいであればいいのだか、もし気のせいでなければ。

(っ、だめっ……!)

 あらぬ想像をしてしまい、体が勝手に興奮する。達する寸前まで高められた体が、このままでは本当にイってしまう。必死に想像を振り払って、なんとか会話に集中しようとする。

「──では、今後とも、どうぞよろしくお願いします」
「あっ、はい、こちらこそ、なにとぞよろしくお願いします……!」

 取引先の相手が名刺を取り出して、会長によろしくお伝えくださいとに渡してくる。それを、腰を折りながらなんとか受け取る。前かがみになると、バイブの反り返った先端がのいいところに当たるのだ。またじわりと滴った愛液の感触を内股に感じながら、取引先に定型文を返す。
 しかし、ここからが本当の難所である。お客様を正面玄関までお見送りしなければならないのだ。今のこの、いつ絶頂に至ってしまうかわからない体で、正面玄関まで普通の顔をしながら歩けるのか。

(む、むりっ……! 歩いたら、ブツブツが当たっちゃう、っ……)

 一歩を踏み出した途端に、にちゅ、と股の間から卑猥な音がした。ぐずぐずに溶けた膣内を、バイブがグイングインとかき回し、突起をブツブツで押しつぶし、はとうとう限界を超えた。

「ひっ、ぁっ──!」

 イってしまった。腰が勝手にがくがくと震え、立っていられないほどの波がの体を駆け巡る。客人ふたりがドアを開けようとしている後ろでへたり込む。このままでは、座り込んでしまったにふたりが気づいてしまう。立ち上がらなければ、立ってお見送りをしなければと思えば思うほど、力が抜けて体が言うことを聞かない。どうしよう、どうしようとが混乱しかけたその時だった。

「ギルガメッシュ会長!」

 取引先の社長の声だ。ドアを開けた先にギルガメッシュが立っていたので、驚いた声をしている。

「今ちょうど手が空いたのでな」
「そうでしたか。お忙しいところ、わざわざありがとうございます」
「構わん、我が見送ろう」

 と言って、客を伴って部屋を出ようとする。
 ドアを閉めきる直前、を横目で一瞥すると、ニタリと目を細めた。

「貴様はそこで大人しくしていろ。──イってはならんぞ?」
「ぎ、会長っ……!」

 そう言い残してドアを閉めた。足音が遠ざかっていくのを聞きながら、なんとか取引先のゲリラ訪問を乗り切ったと胸をなで下ろす。が、この後に待っていることを想像して、また顔を青くした。

「ん、ふぅっ……」

 相変わらず中を愛撫していたバイブが、不意に動きを変えた。取引先の相手をしているギルガメッシュが、片手間にバイブを操ったのだ。

(ギルの、ばかっ!)

 また盛り上がり始める体をなんとか落ち着かせようとしてみても、一度達してしまった体は快楽に正直になっている。こぼれそうになる愛液がカーペットを汚してしまわないよう、四つん這いになって耐える。

「は、やく、ギル、早く来て、」

 客人を見送ったら、このおもちゃから解放される。イきたいのにイけない、しかし局部は絶え間なくバイブで弄られている状況から、一刻も早く解放されたい。の頭にあるのはそのことだけだった。

「ほう、二度目の絶頂は耐えたか」

 応接室にひとり残されてから、何分、何十分経ったのか。快楽に耐えることで精一杯なには時間の感覚がない。何時間も経っているような、五分ほどのことのような。ギルガメッシュがドアを開けて入ってくるまでに、何度絶頂を耐えたのかもわからない。気がつけば、目線の先にギルガメッシュの革靴があった。

「ギルぅ……も、やだぁ……これ、外して……!」
「ならん、まだだ」
「ん、なんでっ……」
「貴様を犯す準備が必要だからな」

 というと、ギルガメッシュはの目の前でベルトをくつろげ、スラックスを下着もろとも下げた。が顔を上げた先には、もうすでに兆している男根があった。

「準備って……まさか……」
「そのまさかだ。くわえろ、

 下座のひとりがけのソファに深く腰掛け、に向かって肉棒を向けてくる。は四つん這いのままソファに近づき、ギルガメッシュの足下に膝立ちになると、おずおずとそれに手を伸ばした。

「え、う、でも、私フェラしたことないよ……?」
「なに、射精まで導けとは言わん。貴様の中に入れるに十分な状態にすればよい」
「う、うん……わかった」

 ギルガメッシュの性器を手に取る。半勃ちで、の中に入るには少し早い。指で輪っかを作り、根元から先端までをゆるゆると扱くと、だんだん硬さを増していく。ギルガメッシュの手がの後ろ頭に回り、顔を股間へと引き寄せられた。目の前に迫った男の象徴を、舌を伸ばしてぺろりと舐めた。

(しょっぱくて、ちょっと苦い……?)

 鈴口に溜まった先走りを舐めると、なんとも言えない味がした。亀頭をぺろぺろと舐めていると、手の中の竿が膨らみ、すっかり硬くなっていた。ギルガメッシュは腰を動かしての頬に肉棒を擦り付けてくる。卑猥な形に育ち、熱を持っているそれを、押し付けられるままに口の中に含んだ。

「ん、むっ……」

 口の中で舌を動かして肉棒を愛撫する。ちろちろと舐めるかたわらで、口の中に入らない根元を手で扱くと、肉棒はさらに大きくなっていく。

(ギルの、おっきくて、口いっぱいで、苦しい……)
「もっとだ、もっと奥まで、喉元までくわえるのだ
「ふ、ぅっ……」

 後ろ頭に回った手がの頭を押さえ、ぐっと奥まで入れてくる。急に喉元を襲った圧迫感にえづきそうになるが、目をぎゅっとつぶって耐える。息苦しさからか、喉の奥が狭まり、意図せずして肉棒を締め付けてしまっていた。

「はあ、、いいぞ、そのまま奥で締めろ……!」
「んっ、ふ、むうっ……!」
(ギルの、熱い……!)

 興奮したように腰を動かしてくるギルガメッシュ。射精まではいかなくてもいいと言っていたが、この様子では口の中に出しそうな勢いである。口の中に出すのはまだいい。顔にぶっかけたい、と以前に言っていたこともあるので、下手をすると顔射されてしまうかもしれない。会社でそんな憂き目に遭うのだけは避けたいが、果たしてこの男の気分次第である。

、出すぞ、すべて飲み込めよっ……!」
「んう、んんーっ……!」

 の口の中で好き勝手に動いた後、ぐっと腰を押し付けて奥で精を放った。口の中で脈打ったかと思うと、びゅるびゅるとどろどろの精が広がる。その青臭さといったら。吐き出しそうになるのをこらえてなんとか飲み込むが、お世辞にも美味しいものとは言い難い。むしろもう飲みたくない。

「げほっ、うえ、ギルぅ……」
「どうだ、我の子種の味は? 美味かろう」
「なんか、変な味……においがすごい……」
「ふむ、そうか。飲み込むのはまだ早かったか。ならば次は顔にぶっかけてやろう」
「えっ……や、やだ!」
「我の精液にまみれた貴様はさぞいやらしかろうな。写真に撮って永久保存せねば」
「しなくていいですっ! あ、ひゃうっ!?」

 不意に、中に埋め込まれたバイブが激しく振動した。フェラに夢中で存在をすっかり忘れていたが、今の今までバイブははまったままだ。ポケットから取り出したリモコンでバイブの強さを変えた男は、ニヤニヤと笑いながら上着を脱ぎ捨てた。の体を抱き寄せ、ソファに座っている自分の上に乗るように抱えると、タイトスカートをたくし上げての股間を露出させた。

「あ、だめ、もう抜いてぇっ」
「貴様、先ほど待っている最中何回気をやりそうになったのだ」
「ん、んっ……そんなこと、な、い、」
「嘘をつくな、こんなに濡らしておいて」

 と言って、ギルガメッシュが濡れたパンティ越しにクリトリスをつつくと、の体に電流が走った。

「あっ、だ、め、なんか出ちゃうっ……!」

 イく寸前のような、尿を出す瞬間のような、絶頂感と排泄感が混ざりあったなんとも言えない感覚がを襲った。腰を引いてその衝動に耐えるが、目の前の男はそれを許さなかった。
 電光石火でパンティをずり下げ、バイブのブツブツをクリトリスに押し当てるように、棒がより深く中をえぐるように、手のひら全体で股間を押したのだ。これにはたまらず、は悲鳴のような嬌声を上げて果てるしかなかった。

「ひゃ、ああ〜〜っ! なに、これぇっ……!」

 尿が出る穴から、ぴゅっぴゅっ、と透明な液体が噴き出したのだ。ギルガメッシュの体にかかり、ソファの革に染み込み、飛び散ったものはカーペットにまで飛んでいた。

(な、にこれ、おしっこ……? 私、応接室でおしっこ漏らしちゃったの……!?)

 拭かなければ、と慌てる頭とは裏腹に、体のほうは腰が抜けてしまって動かない。ギルガメッシュの胸に力なくすがりついたの体はびくびくと跳ねており、絶頂の深さを物語っている。息も絶え絶えに快楽に耐えるを、ギルガメッシュの手が優しく撫でた。

「あっ、ひ、ん」
「ついに潮を噴いたか、よ」
「しお……? おしっこじゃ、ないの……?」
「ああ、同じ穴から出るが尿と潮は違う。まあ、愛液のようなものだ」
「よ、よかったあ……おしっこ、漏らしちゃったのかと……」
「ふん、これが尿でも我は構わんが」

 ギルガメッシュが体に飛び散ったの潮を指で掬い、ぺろりと舐める。そんなもの舐めないで、と言おうとしたが、中のバイブをいきなり引き抜かれたことで口を封じられた。
 愛液まみれのバイブをそのへんに放ると、ギルガメッシュはの腰を掴み、反り勃った肉棒めがけての体を下ろした。散々バイブに溶かされきった入り口は、いきなりの挿入にも驚くことなく熱を受け入れた。

「あ、ああっ……ギル、ギルのおっきいのが、入ってくるよぉ……」
「っ、く、今日は一段と、中がすごいぞ。きゅうきゅうと我のモノに絡みつくようだぞ」
「あっ、あん、言わないでぇっ……」

 ソファに座ったギルガメッシュに抱っこされるような体勢で抱き上げられ、下からズンズンと太く熱い性器で突き上げられる。待ち望んだギルガメッシュの肉棒に、体が歓喜の声を上げているのがわかる。常に開かれた口からは、嬌声とともに涎が垂れる。その涎をギルガメッシュの舌が舐め、さらにくちびるを塞がれた。

「んっ、ふ、うっ……!」

 入り込んできた舌が、の舌の裏に潜り込む。舌の付け根をかいて唾液を出させると、それを残らずちゅーっと吸っていく。その間にも下からの突き上げが止むことはない。唾液を吸われ、中を突き上げられ、の頭が朦朧としてくる。

「ひゃあっ、あんっ、だめ、だっこ、ひんっ、きもち、いいっ」
「貴様はこれが好きだったな、そら、よい所に当たるだろう?」
「あぁん、そこ、だめぇ、また出ちゃうぅ……!」
「いいぞ、イけ! 潮を噴いてイけ、!」

 抱っこの体勢だと、肉棒が奥深くまで届くことに加えて、中の性感帯に当たりやすいのだ。ベッドのスプリングなどを利用した深い突き上げに、たちまち極まってしまうのが常だ。今は応接室のソファだが、ギルガメッシュはソファだろうが関係ないといった様子で、の性感帯をリズミカルかつ的確に叩いてくる。ぱんぱん、と肌がぶつかり合う音が鳴り響く中、は二度目の潮噴きを経験することとなった。

「ひゃ、あ、ああぁ〜〜っ!」

 ぴゅっぴゅるっ、と潮が噴き出した直後、腰をがくがくと震わせては絶頂した。ギルガメッシュの腹に飛び散り、ソファだけでなくシャツや脱ぎ捨てた上着にも潮が染み込んでいく。全身が赤く染まったの体を抱き締めて、締め付けを堪能したギルガメッシュは、荒い息を繰り返すくちびるにむしゃぶりついて中を擦り上げる。

「ん、ふうっ、ぎ、るぅっ……!」
「イくぞ、中に出すぞ、!」
「ああっ、なかに、ぎるのせーし、くるぅっ……!」

 ぎゅうっと強い力で抱き寄せられた瞬間、中の性器がどくりと脈打った。最後の一滴を出し切っても抱き合ったままで、くちびるを吸いあって余韻に浸るふたり。ギルガメッシュの顔にも汗が滴り、金髪が汗で顔に貼り付き、透き通った色になっていた。ちゅぱ、ちゅぅ、というリップ音のほかには、放られたバイブが駆動する音だけが響いていた。



「どうしよう、これ……」

 我に返ったが、途方に暮れた声を出した。いちゃいちゃしながらセックスの余韻に浸っていると、思いのほか時間が経っていたようで、が噴いた潮やら垂れた精液やらが、すっかりソファとカーペットに染み込んでいたのである。今からシミ抜きをしても、どれほど取れるものか。にはわからなかった。
 頭を抱えるとは裏腹に、ギルガメッシュは上機嫌で服を直している。

「はっ、なにを気にすることがある。そのようなもの、買い替えればよい」
「そ、そうだけど……」

 そう言うギルガメッシュのシャツと上着にもしっかり潮がついてしまっている。お値段が破格のスーツとシャツに、うっすらとシミがついて台無しになっているのだが、ギルガメッシュは気にしたそぶりもみせない。

「このシャツもそのソファも、貴様の初・潮噴き記念に保管しておくか」
「なっ……! 絶対だめ! お願いだから捨てて!」
「なにを恥ずかしがる。記念日が増えるのはいいことだろうが」
「こっ、こういう記念日が増えても嬉しくないっ!」
「照れおって、愛いやつよ」
「むぎゅっ」

 が照れから拒絶しているものと思い込んだギルガメッシュが、我の嫁可愛いゲージを突破させて抱きついてきた。その馬鹿力と硬い胸板によって、窒息寸前まで抱きしめられるのだ。としては嬉しいのだが、体力を使った後はやめてほしかった。死にそう。

「ホテルへ行くぞ、
「……へ? ホテルって、これから?」
「当然だ。今行かずにいつ行くのだ」
「え、まさか……まだえっちするために……?」

 ギルガメッシュの誘うような視線に嫌な予感を覚え、恐る恐る疑問を口にする。ギルガメッシュの口はなにも言わなかったが、色気たっぷりに釣り上がった口元が答えだった。

「し、仕事中なのにっ!」
「今日の予定は?」
「〜っない、けど……!」
「どちらにせよ、我も貴様も着替えねばならんだろう。それとも、その愛液にまみれた下着で一日過ごしてみるか?」
「……! き、着替えたい、けど、けど……!」

 なおも無駄な抵抗をするの耳元に口を寄せると、ギルガメッシュは甘い吐息とともにこう吹き込む。

「貴様の好きな抱っこもお馬さんもわんわんも、存分にしてやろう。──行くぞ、

 欲望で掠れた、低い声を耳に直接吹き込まれては、抵抗などできるはずもない。
 その声だけで、ぞくぞくと腰が抜けてしまったは、ギルガメッシュの上着に皺を作る。

「……はい」

 真っ赤な顔をギルガメッシュの胸で隠しながら、蚊の鳴くような声で、しかしはっきりと頷く
 喉の奥で低く笑ったギルガメッシュは、応接室の電話機から受付に内線をかけると、この応接室は今日一日使用禁止の旨を伝える。ソファとカーペットを変える前に清掃業者や社内の人間が使っては、色々と面倒だからだ。
 このビルでのやることを終えたギルガメッシュが、の体を、来た時と同じように横抱きに抱え上げた。

「今夜は寝かさんぞ、。覚悟しておけ」

 情事後の多少乱れてしまった姿ということが気にならないような、むしろその乱れが艶を引き出していると言わざるを得ない必殺の流し目を送られて、再びりんごのように真っ赤になってしまう。そんなを力いっぱい抱きしめて、ギルガメッシュは弾むような足取りでホテルへ向かったのだった。
 翌日。ウルク商事の会長と会長秘書は、そろって有給休暇を取ったという。



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