秘め事


※Twitterタグ「いいねした人のイラストを小説にする」その1。あいだまさん(@aidama_0324)の漫画が元です


「これは……雑種、貴様と我のただひとつの秘め事だ」

 赤い瞳がゆらりと動くのを呆然と眺めていた。気がついた時には背に柔らかい寝台の感触。目の前には、流れる金の髪と、揺らめく赤い瞳。
 チャリ、との上に乗った男の耳飾りが金属音を立てた。いつの間にか、黄金比に整った顔が、吐息のかかる距離までに近づいていた。
 きれいだと、場違いなことを思っていた。

「ヒッ」

 の視界の外にある男の左手が、タイツの上から太ももを撫でた。今までに誰にもそんなところを触られたことがなくて、思わずの口から悲鳴のような声が出た。仮に触られたとしても、女の子どうしでじゃれ合ったりからかったりするような可愛いもの。こんな、そういう意図をもってして異性に触れられたことなんて、一度も。
 距離を取ろうとするの上体を、男は肘をついて覆いかぶさって抑え込む。ぐっと胸の苦しさが増して、ドキドキして、息が苦しくて、顔から火が出そうなほどに頬が熱くなった。明かりを落とした薄暗い部屋の中でもの表情がわかるのか、男の赤い瞳が弓なりになる。

「──ゆめ忘れるなよ?」



 赤い瞳に魂を奪われていたら、くちびるに柔らかい感触が降ってきた。相変わらず赤い瞳がを捉えていて、一瞬なにが起こったのか理解できなかった。ぬめる舌で口をこじ開けられて、初めてくちびるに付けられたものがなんなのかを知った。

(キス、されてる、王様に)
「──っ……! ん、んっ……」

 恥ずかしさで耐えきれずに目を閉じると、それを見計らったように舌が一気に内部へ侵入してきた。奥へと引っこもうとするの舌を絡めとり、舌の裏側をぴちゃぴちゃ、と音を立てて愛撫してくる。

(なに、なにこれ、舌が)

 自分のものではない舌にそんなことをされるのは、初めてだった。
 口の中に満ちるギルガメッシュの唾液が、の口の端からこぼれる。一旦くちびるを離したギルガメッシュがそれを見咎めて、舌で唾液を掬った。

「こぼすでない、飲め」
「ん、んぅっ……」

 再び口付けて、の口に唾液を注ぐ。逃げ場を失って溢れそうになるそれを、やむを得ず喉を鳴らして飲み込む。息苦しさで目尻に涙がにじむが、ギルガメッシュはそれにも構わず、が唾液を飲んだことに満足そうに目を細めている。

「王様、これって」

 まさか、自分はギルガメッシュに抱かれようとしているのではないか。
 秘め事の意味ぐらい知っている。ベッドに押し倒されて、濃厚なキスをして。状況だって、どう考えてもそうとしか思えない。けれど、本当にそうなのか。心の底の疑問が拭えず、は口を開いていた。

(王様はなんで、私にこんなことを)

 のくちびるに、ギルガメッシュの人差し指が乗った。

「その口を開く時は、快楽に喘ぐ時のみだ。それ以外は許しておらん」

 だから黙っていろとでも言うかのように、人差し指を退けた後に、軽く口を塞がれた。
 抵抗するな、疑問は口にするなという。理不尽じゃないかと言いたくなったが、キスが思いのほか優しくて、気持ちよくて、ドキドキしてしまって、なにを言おうとしたのか忘れてしまった。ずるいキスだ。

「ひゃっ……あ、いつの間に、っ……」

 ギルガメッシュの手が胸元に直接触れたことで、ようやく服を脱がされていることに気が付く。一体いつの時点で脱がされていたんだろう。先ほどの、舌を入れられた時か。
 くちびるが口から離れ、顎の先、顎の下、のど元、鎖骨と、胸元に向かって降りていく。ちゅ、と肌に吸い付く音を残して、柔らかく肌を撫でる。そちらに気を取られていると、ブラジャーの上から大きな手が胸を包んでいた。背中に回された手がブラジャーのホックを素早く外し、あっという間にの胸元があらわになった。

「あっ、だ、だめ」

 見られている。あの赤い瞳が、の白い肌を写している。そう思うと、自然と拒絶の言葉が出てきた。腕で胸を隠そうとすると、その腕を不機嫌そうに振り払われた。

「我の許しなく隠すな」
「だ、だって……王様、小さい胸が好きなんでしょ」
「それがどうした」
「いや、だから、その……」

 の胸は巨乳というほど大きくないが、かといって小さいとは言い難い。平均よりはふくらんでいる。こうして仰向けに倒れていても、ハリがあってきちんと山を形成していて、先端はツンと天を向いている。
 若いの胸を隅々まで観察していたギルガメッシュは、が恥ずかしがる理由に思い至って、ニヤリと口元を緩めた。

「さては、我の好みではない胸を見られて幻滅されるとでも思ったか?」
「うっ……ち、ちが……あっ、」
「確かに、好みではないが」

 ギルガメッシュは、再びの両の胸を手で包み込むと、やわやわと揉みしだいた。自分の柔らかい肉が、好きな男の手で自在に形を変えている光景が目に入ってきて、はいっそう顔を赤らめる。

「愛でる女のものであれば、可愛がってやるまでだ」

 そう言うと、ギルガメッシュは笑んだ口元を胸の頂点に近づけて、それをぱくりと口に含んだ。

「あっ……! な、あっ、王様っ……!」

 硬くなりかけていた先端を厚い舌でこねられて、の口から高い声が上がった。だんだんと硬度を増していくそれにキスをされ、吸われ、舌で舐めしゃぶられて、乳首から電流が走るような感覚を覚える。ぢゅう、ちゅぱ、という唾液の音が、目を閉じてしまったにもなにをされているのか十分に教えている。

「あっ、あう、そこ、だめっ……」
「そこ、とは? はっきりと言わねばわからんだろう」
「そこ……ち、ちくび、そんなにしたら、」
「感じるのか? そうか、貴様は乳首が敏感だと覚えておいてやろう」
「あうっ……!」

 ぎゅっと乳首をつままれた。全身に電流のようなものが走り、体がはねた。普段は服で隠れているの白い肌が、徐々に快楽で赤く染まっていくのを見下ろして、ギルガメッシュは目を細めた。
 肉の悦びを知らない少女が、瞳を潤ませて、体を汗で濡らして、羞恥で肌を赤く染めて、誰も見たことがないような女の顔をしている。
 その優越感だけで、ギルガメッシュは口元が緩んでしまう。
 汗ばんだタイツの上から男の手が太ももを撫でさする。スカートの中まで侵入し、足の付け根から股の中心を指でなぞっていく。

「や、なに、あっ……!」

 ぞわぞわとした感覚が直接体の奥へと溜まっていく。タイツとパンティに包まれた奥が、汗とは違ったもので潤んでいく。
 ギルガメッシュがの両脚を持って大きく開かせると、スカートがめくれ上がって下腹部があらわになった。タイツの下に、うっすらとパンティの色が透けている。が羞恥で脚を閉じようとするよりも早く、開いた脚の中心に鼻先を埋め、思い切り息を吸いこんだ。

「ひゃあっ! や、だめ、なにして、あうっ」
「汗のにおいが混じっているが、確かに雌のにおいがするな。もう濡らしたか?」
「だ、め、そんなとこ、におい嗅がないで、ああっ」

 ギルガメッシュが鼻先を膣口に付けて、息を吐いては深く吸い込む。そんな汚いところ、自分でさえにおいを嗅いだことがないのに。嫌だと首を振っているのに、シャワーもなにもしてないところを執拗に堪能されて、は恥ずかしくてどうにかなりそうだった。
 の下腹部のにおいをたっぷり堪能したギルガメッシュは、のタイツとパンティを掴むと一気に下ろした。乱れた息を整えていたは、急に無防備な姿にされて、目を白黒とさせた。そんなに構うことなく、ギルガメッシュはタイツとパンティをの両脚から引き抜くと、また脚を大きく開かせた。

「濡れているな。我ににおいを嗅がれて興奮したか?」
「ちが、ちがうっ、そんなんじゃ、あっ」

 くちゅ、と音がなった。ギルガメッシュの指がの割れ目を広げる音だった。

「なかなかいい色をしているではないか」
「や、やだ、そんなとこ見ないでっ……!」
「処女の色はこうでなくてはな」
「いっ……!」

 指を一本、なんの予告もなく入れられた。処女だとギルガメッシュもわかっているのに、いきなり異物を入れられて痛みが走る。濡れているとはいえ、まだなにものも受け入れたことがないそこには、男の指は大きすぎた。

「きついな。仕方あるまい、一度イかせてやろう」
「あっ! あ、ああっ、そこはっ……!」

 指を引き抜いたギルガメッシュは、の脚を両手で固定すると、一番敏感なところを舐めた。舌でべろりと舐め上げられ、腰がおのずと浮いた。ひだをひとつひとつかき分けるように舌先でそこを開いていく。瞬く間にの割れ目から愛液が滴るようになる。

「だめ、あうっ、そんな、なにこれぇっ……!」

 敏感な突起を舌先が掠めるだけで、体の奥が切なくなるような感じがする。ギルガメッシュに自分の汚い部分を見られ、あまつさえ舐められているのだと思うと、顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。こんなことをするのが男女の交合だなんて、知らなかったのである。

「あっ、や、王様ぁっ……あんっ、ああっ」

 じゅる、と滴るものをすする音と、ぴちゃぴちゃ、と舌が股間を嬲る音が、交互に聞こえてくる。舌で入口を押し広げたかと思うと、指がまた入ってきた。舌が突起をいじめる一方で、指がぐちゅぐちゅ、と中をかき混ぜる。痛みはなく、ただ中の異物感だけが大きかった。指が中を慣らした後に、もう一本入ってくる。

「やっ、ゆび、が、」

 二本の指が、の中を出たり入ったりする。中は指でいじられてもなにも感じない。ギルガメッシュもそれはわかっているようで、クリトリスへの愛撫は止むことがなかった。ひっきりなしに卑猥な水音が聞こえてくる空間で、舌と指で体を開かれていく感覚は、の理性をじわじわと焼いていった。

「ああっ、も、だめ、変になる、なんか、くるぅっ、ああっ……!」

 強く突起を吸われ、は腰を震わせて果てた。直後に胸の動悸が激しくなって、息が荒くなる。がぐったりとした隙にギルガメッシュがの体から服をすべて引き剥がしているが、頭の中は真っ白で、なにも考えられなかった。
 気がつけば、全裸になったギルガメッシュがを見下ろしていた。赤い瞳は情欲に濡れて、を逃すまいとまっすぐに捉えている。

「おうさま……いっ、痛っ……!」

 限界まで開かれたの脚の間にあるギルガメッシュの体が、ぐっと近くなった。入口に宛てがわれた熱の塊が、入口を割くようにして入ってくる。めりめりと狭い内部をゆっくりと押し進んでいたギルガメッシュだったが、

「許せ」

 と一言こぼすと、一気に腰を押し付けた。

「ああぁっ……! い、たい、痛いよ、王様、ひどい……!」

 冗談ではなく、本当に死にそうなほど痛い。これは入口が裂けたのでは、と思うほどに痛くて、ぽろぽろと涙がこぼれた。を落ち着かせるように目元にキスを降らせながら、ギルガメッシュが言い訳をする。

「だから許せと言ったであろう」
「だからって、ひどいよ……! 王様のバカ、ばかばか……!」

 涙は止まるどころか溢れる一方である。
 キャスターのギルガメッシュは、に対してほんの少しだけ寛容な振る舞いを見せる。のレイシフトに同行した際には、口では罵りつつも世話を焼くこともあるので、嫌われてはいないだろうと思っていた。それに対して、いつの間にか好意が募っていったのも、自分自身で抵抗なく受け入れられることだった。
 秘め事だと、そう言われて。初めて体に触れられて、キスをされて、体を暴かれて。行為が進んでいくにつれて、どんどん戸惑う気持ちが大きくなっていった。
 ギルガメッシュは、なぜこんなことをするんだろう。
 はギルガメッシュが好き、けれど、ギルガメッシュはどうなのか。
 気持ちがわからないから、不安で。不安なまま熱に浮かされて、体を貫かれた痛みで我に返ったのだ。

「貴様、ひとりで下らんことを考えているのではあるまいな」
「だって、だって……! 王様が私をどう思って、こ、こんなことしてるのか、さっぱりわからないんだもん」
「ふん、王の考えることが雑種に理解できるはずなかろう。貴様が我に惚れているのは手に取るようにわかるが」
「なにそれずるい……わ、私も王様の考えてること知りたい……!」
「ならん! ともかく今は抱かせろ!」
「最低な発言だな!? せめて王様がなんでこんなことしようと思ったのかぐらい、教えてくれてもいいじゃないですか!」

 本当は、のことをどう思っているのか知りたい。けれど、それを聞くのは、少しだけ怖くて、だからせめて、この行為の意味を知りたかった。
 目の前の赤い瞳を睨むと、ギルガメッシュもむっと眉尻を吊り上げた。そのままにらめっこのように睨み合っていると、下腹部の痛みも忘れる頃に、ギルガメッシュが特大のため息をついた。

「気にも留めん女に寵愛をくれてやろうとは思わんわ。言わねばわからんのか、ばかもの」
「……それって」
「貴様の周囲にちょろちょろする輩も増えたことだからな、ここいらで我が貴様の初物をもらってやったまで」

 それは、ギルガメッシュがガミガミ言いながらの世話を焼く時の口調によく似ていた。つまりは、他の男に取られる前に、ギルガメッシュが手を出したという既成事実を作りたかったということなのでは。
 かーっと顔に熱が上った。

「ようやく理解したか、このばかものめ」
「う、は、はい……」
「王たるこの我がかけてやった慈悲に対してなにか言うことは」
「う、うん……? ありがとうございます……?」
「であろう、泣いて喜ぶがいい」

 なんだろう、なにか納得いかない。なぜお礼を言わされたんだろうと首を傾げていると、不意に腰を動かされ、また内部に痛みが走った。

「やっ、王様、もっと、やさしく……!」
「はっ、これ以上優しくしろと? つくづく厚かましい女だ」
「あっ、だ、め、いた、いっ……!」
「じきに慣れる」
「んうっ……!」

 痛みに喘ぐくちびるをキスでふさがれた。慣らすような腰の動きが、徐々に激しさを増していく。の腰を掴んで、小刻みに律動を繰り返すギルガメッシュ。舌と腰の動きに翻弄されながら、は必死でギルガメッシュの背にすがりついた。

(王様、好き、好き……!)

 そうして小刻みに中を擦り上げられていくうちに、だんだんと痛みが麻痺してきた。裂かれた痛みを感じなくなってくると、中を突く衝撃と、くちびると舌の感触だけが残る。
 ぱた、と顔に水滴が落ちてきた。上に乗ったギルガメッシュの汗だ。を押し潰すたくましい体も熱くて、背も胸も、汗で濡れていた。

(王様も、興奮してるの……?)

 そう思うと、体の奥が切なくなった。

「っ、我を締め付けるとは、処女のくせに感じているのか?」
「んっ、わ、わかんない、あ、んっ……なか、じんじん、して、あっ……!」
「よいぞ、存分に感じろ、

 腰の突き上げが激しくなる。激しさを感じるたびに切なくなって、中のギルガメッシュを締め付けてしまう。そうしてまた、ギルガメッシュが汗をの上にこぼすのだ。

「処女に中で果てよとは言わん、せめて痛みとともに我の種を受け取れ、!」
「王様、あ、ああっ、王様ぁっ……!」

 ガツガツとひときわ激しく中を突き上げたギルガメッシュが息を詰めた。出されたものがじわりと広がっていく感触と、中の肉棒が脈打つのが伝わってくる。精を出し切って肉棒を引き抜き、の上にかぶさってきたギルガメッシュの体を受け止めると、背中も汗でびっしょりと濡れていた。

「王様、好き……」

 思わず口から出た言葉だった。特に返事は期待していなかったので、ギルガメッシュからなにも返ってこなくてもよかった。鼻を鳴らす音が聞こえてきたかと思うと、肘をついたギルガメッシュにくちびるを奪われた。

「どうだ、我が貴様の最初の男になった気分は」

 ご満悦といった表情でこんなことを聞いてきた。そんな、初体験の感想なんて恥ずかしいこと言えるわけがない。顔を真っ赤にして首を横に振るに、ギルガメッシュはおかしそうに口角をつり上げた。

「今さら照れおって。後半は貴様も熱に浮かされたように我にすがりついてきたであろうに」
「〜〜王様のばか、恥ずかしいこと言わないで……!」
「はっ、そのうちさらに恥ずかしいことをしてやろう。貴様がセックスに慣れた頃にな。楽しみにしていろ」

 と言って、なにやら楽しそうに笑っている。処女を散らされたばかりのにはもっと恥ずかしいことの想像がまったくつかず、嫌な予感が募るばかりである。

(あ……そのうちってことは……また……)

 がギルガメッシュの発言の意味に気がつくと、ギルガメッシュが満足そうにを抱き寄せた。

「これからも貴様を我が奪ってやる。光栄に思えよ、
「王様……!」
「貴様の心も体も、その表情でさえもすべて我のもの。他の誰にも奪わせるでないぞ、いいな」
「はい……!」

 ギルガメッシュに抱きつくと、ぎゅうっと抱きしめ返された。体重をかけられているので重くて苦しいが、そんなことはまるで気にならなかった。
 腰はだるいし、膣口がじんじんとしてまだ中に入っているような感覚がある。男の動きを受け止めているだけだったが、初めて絶頂もしたし、慣れない体勢をし続けたことで疲れてしまった。ギルガメッシュの体温でうとうとしていると、ギルガメッシュがの上から退いた。隣に体を横たえ、の頭の下に腕を差し込んで体を抱き寄せた。俗にいう腕枕というやつだ。

「我はまだ足りんが、今日のところはこれで許してやろう。寝ろ」
「う、ん……おやすみなさい、王様……」

 シャワーは明日だ。今はとにかく眠い。
 髪を梳くギルガメッシュの手にあやされて、は寝息を立て始めた。本格的に眠ってしまったを見下ろして、ギルガメッシュが仕方のない女だ、と小さくつぶやいて、自分も目を閉じた。
 翌朝、処女の証がすっかりシミになってしまったシーツを、シャワーを浴びながらこっそりと洗うの姿があった。



inserted by FC2 system