揉まれると育つもの


「うーん……」

 カルデアのある一室。人類最後のマスターと呼ばれている少女が使っている部屋では、唸り声が響いていた。マイルームの中、上下の下着だけを身に纏った少女が両胸を押さえて唸っていた。

(やっぱり……大きくなった、よね)

 備え付けのシャワールームで入浴を済ませた後の少女は、ブラジャーをつけた後で思ったのだ。ブラきつい、と。
 自分の胸を見下ろしてみる。このカルデアに来てから支給されたブラジャーで、白の無地というシンプルなものだ。サイズは試着して合っているものを選び、それから幾度となく着用してきたものだ。なのに、今はそのカップの下の胸は窮屈そうに布地に乗っている。

(生理前だから……は違う、今はその時期じゃないし……太ったのかなと思ったけど、アンダーは変わらないし、スカートのウエストも変わってない……)

 最近、というかここ一、二ヶ月の間で、このように胸がワンサイズ大きくなってしまった。色々と胸のサイズが変わる原因を考えてみるが、体重が変わったわけでもない、女性の生理現象でもないとなると、ここ数か月の間で思い当たることはひとつだけだった。

(ま、まさか……王様に、触られてるから……!?)

 そう、少女の胸のサイズが変わり始める少し前に、キャスターのギルガメッシュと恋人関係になったのだ。ギルガメッシュに思いを告げた後すぐに押し倒され、あれよあれよという間に女にされてしまったので、実はギルガメッシュのほうの気持ちは聞いていないのだが。
 ともかく、あれから結構な頻度でことに及んでいるので、もしかしたらその影響ではないかと思ったのだ。

(彼氏に揉まれると胸が大きくなるってよくいうし)

 ギルガメッシュが彼氏という枠に収まるのかどうかはさておき、そもそも一体どれくらい大きくなったのか。この際だからきちんと測ってみようとメジャーを取り出した。ブラジャーを脱いでトップを測ると、やはりワンサイズほど大きくなっていた。念のためアンダーも測ってみるが、こちらは変わっていなかった。

(やっぱり王様のせい、だよね……)

 ギルガメッシュの大きな手が胸を揉んだ時のことを思い出して、かーっと体が熱くなった。思わず自分で胸に触れてみる。

(あ、でも……王様の好みって確か、金髪碧眼のスレンダーな少女、だったよね……)

 大きい胸はあまり好きではないようだし、生前初夜権を行使していたほどの初物好き。そこまで考えて、先ほど熱くなった体が、今度は血の気が引いてみるみるうちに熱が覚めていった。

(どうしよう……私、どんどん王様の好みから離れていってる……!?)

 外見はまったくと言っていいほど好みのタイプには当てはまらない上に、これ以上離れてしまってはまずい。好きだとか告白めいたことは何一つ言われたことがないが、こうして肉体関係が続いていることからすると、少なくとも異性としては見てもらっているのだろう。となると、ギルガメッシュのことが好きな少女としては、これ以上ギルガメッシュの中の評価を下げたくない。好きだと口にした事項に当てはまらない、という事実が多いほど不安になるのだ。

(この胸……やっぱり王様が熱心に揉むから大きくなったんだよね……じゃあ、なるべく揉まれない方向に持っていく……?)

 行為の最中のことを思い出す。押し倒されて、キスをしながら、または服を脱がす片手間に胸を揉んだり乳首をいじったりするのがほとんど。挿入されてからも揉まれる。こうして数えてみると、結構な頻度で胸を揉まれている。その上、揉んでくる男は自分が惚れている男。そりゃあ色々なものが刺激されて、年頃の少女の胸も大きくなるというものだ。

「はあ……自分で触っててもなんにも感じないのに……なんで王様だとあんなに気持ちいいんだろ……」
「知りたければ教えてやろうか」
「うわあああーーー!? 王様!? なんで!?」

 突然のギルガメッシュの声に心臓が飛び出そうになる。声のしたほうを見ると、ドアのそばの壁に寄りかかって、ニヤニヤと笑いながら少女を見ていた。

「なんだ、先ほどドアから入ってきたのだが、本当に気が付かなかったのか」
「えっ……うそ!?」
「この我に気が付かないとは不敬にもほどがあるが……それはそうと、ひとりでなかなか面白いことをしているな、雑種?」
「え? あっ……やだ、見ちゃだめ……!」
「なにを今更」

 ギルガメッシュはそう短く答えて鼻を鳴らす。ショーツ一枚しか着ていない少女は胸を腕で隠したが、隣に座ったギルガメッシュにあっさりと腕を外されてしまう。白く張りのある胸が晒される。じっくりと胸を見つめられ、少女は頬を赤く染めた。

「や、そんなに見ないで……」
「貴様の体は既に我のものだ。拒否権など貴様にはない。それに」
「あっ」
「体のほうは正直に我に触れられたがっているようだぞ?」
「ん、や、だめ、だめなの……おっぱい触っちゃだめ……」

 ふにふにと胸を揉み始めるギルガメッシュの手を掴んでやめさせようとする。いやいや、と首を振る少女だが、しっかりと感じている。その様子に笑いを堪えつつ、ギルガメッシュは手の動きを止めた。

「なぜだ?」
「ん、だって……王様と、え、えっちするようになってから、おっぱい大きくなっちゃったから……」
「だから揉んではならんと?」
「だって……これ以上大きくなったら、王様に嫌われちゃう……」
「ほう? なぜそう思う」

 本人を目の前にして言うのは恥ずかしかったが、ギルガメッシュの赤い瞳が思いのほか静かだったので、勇気を振り絞って理由を口にする。

「だって……王様は、小さい胸のほうが好きなんでしょ……?」
「まあ、そうだな。我は貧乳派だ」
「ううっ……だから、これ以上大きくなったらだめだって思って……もう処女じゃないし、これ以上王様の好みから離れたくないって、そう思って……」

 貧乳派の一言にくじけそうになりながらも、最後まで言い切った。心細さに涙が目尻ににじむ。
 嫌われてはいないと思うが、自分が明確に好かれているという自信もない。ギルガメッシュは自分のことを面白がっているようだが、それもいつ飽きるかわからない。不安なのだ。
 くつくつとギルガメッシュの喉が鳴る音で、下げていた視線を上げる。おかしそうに口元を覆って笑っていたギルガメッシュは、片腕を少女の腰に回して自分のほうへと引き寄せた。

「貴様は本当に仕方のない女だ」
「うん……? それ、王様によく言われるけど……どういう意味?」
「よい、今は気分がいい。特別に答えてやろう」

 引き寄せられたことで、ふたりの体が密着する。ギルガメッシュの香のにおいと体温に安心する一方で、落ち着かない気分になる。どきどきして、そわそわする。
 ギルガメッシュのくちびるが少女の額や頬、まぶたに落ちる。最後に口にキスを落とすと、少女の瞳を覗き込んだ。

「愛いやつ、という意味だ」
「うい……え!?」
「言ったであろう、貴様の体は既に我のもの。成長する胸もその心も、すべて我のものだ」
「王様のもの……あ、ん……」

 ギルガメッシュの手が再び胸を揉み始める。大きな手に胸を自在に弄られ、胸の奥が熱くなる。

「貴様の体が我に抱かれることでどうなっていくのか楽しみだな」
「ほんと……? おっぱい大きくても、処女じゃなくても、嫌いにならない……?」
「貴様がその心までも我に捧げる限りはな。存分に可愛がってやろう」
「あん、あっ、なん、か、おっぱい、へん……」

 ギルガメッシュに揉みしだかれるたびに、胸がじんじんと疼く。ギルガメッシュの力が強いわけでもないのに、痛いほどに。乳房の頂上は既に勃起していて張り詰めている。その頂きを、男の指がいたずらに弾いた。

「ひゃっ! あん、ひ、だめ、ちくび……!」

 ぴんと弾いたり、親指でこねたりつぶしたり。疼きはさらに高まり、下腹部が熱くなっていく。

「ちくび、そんなにしちゃ、んぅ、だめ……!」
「なにを言うか、こんなに硬くしおって」
「ひゃう……!」

 片方の乳首を口に含まれた。舌先でべろべろと硬くなったものをこねくり回された後、軽く歯を立てながら吸われる。じゅば、ずる、と胸についた唾液をすする音が大きく響く。胸を襲う刺激だけでも大きいのに、その音が異様に興奮を高めていく。

「ああん、いっ、だめ、王様ぁっ……!」
「どうした? ああ、こちらばかりいじっては不公平だったか。両方嬲ってやらねばな」
「や、あっ、そっちも、あん、おっぱいおかしくなっちゃう……!」

 もう片方の乳首も同じようにギルガメッシュの口内で散々いじめられる。歯と舌が乳房の先端を掠めるたびに、少女は背をびくびくとしならせる。

「あうっ、おうさま、あああっ!」

 胸にしゃぶりついているギルガメッシュの頭に手を添えると、金の髪がさらりと指の間に流れる。口の中で乳首をきつく吸うと同時に、もう片方を指でつまみ上げられた。下腹部へ甘い衝撃が走る。

「胸だけで果てたか」
「んっ、ふぅ……」

 絶頂を迎えて力が抜けた少女を、ギルガメッシュはベッドに横たえた。仰向けになっても綺麗なお椀型を保つ少女の乳房を見下ろす。元々胸が敏感な上に、ギルガメッシュの手練手管でさらに感じやすくなっている。そこへまたギルガメッシュの手によって膨らみをこねられる、その繰り返しで少女の体が変化しているのだろう。確かに胸は小さいほうが好みだが、少女の体の変化が自分の手によるものだと考えると、男冥利に尽きると言える。
 体から絶頂の余韻が抜けきらないうちに、ギルガメッシュがショーツに手をかけてきた。脚から抜けたそれを手に取ると、愛液に濡れて透けているクロッチ部分を見てニヤリと目を細めた。

「これでは下着の意味をなさんな」
「や、そんなの、見ないで……あっ」

 ギルガメッシュは下着を脇に放ると、少女の脚を大きく開かせた。下着をしとどに濡らしたそこは、愛液が垂れそうなほど潤っている。無造作に指を突き入れられても痛みを感じなかった。

「あっ、ゆび、なかに、あ、んっ」
「中までしっかりと濡れているな。これならすぐに我を受け入れられるな?」
「あ……」

 魔力で編んでいたギルガメッシュの服が消えたことで、そそり立つ立派な肉棒が目に入った。先端を濡れた割れ目に擦り付けられ、くちゅりと水音が立つ。擦り付けられた熱と質量の大きさに、腟内が疼いた。

「ギル、さま……」
「これが欲しいか?」
「……うん……欲しい……入れて、ギルさま……」
「入れるだけか?」
「……入れて、それから……いっぱい、おく、ついて……!」

 直後に秘所を割り一気に奥まで入ってきた熱に、少女は首を反らせた。晒された白い喉にむしゃぶりついた男は、激しい律動を開始する。

「ああっ! す、ごい、おくまで、きてる……! ズンズンて、きてる……!」
「こうやって奥を突いてほしいのだろう? 強欲な女よ」
「あっ、あんっ、ぎるさま、の、おっきいので、おくっ……!」

 腰を突き上げるたびに少女の胸も揺れる。ぶるんと動くそれを両手で掴み、先ほどよりも強い力で揉みしだく。強い快感が下腹部から来るためかき消されそうになっているが、胸を揉まれるたびにじんじんと疼く感覚は健在だった。

「ひゃん、はあん、おっぱいだめ、あっ、やあっ」
「だめ? いいの間違いだろうが、揉むたびに中を締めつけおって!」
「あうっ、や、いわないでぇっ……!」

 ギルガメッシュはさらに奥を突くために少女の片足を肩にかけるように持ち上げた。角度が変わったことで性感帯をもろに突かれ、少女の喉からさらに高い嬌声が上がった。

「ひゃああっ、や、それ、だめ、そこはぁっ!」
「わかったわかった、貴様のだめはいいの意味だということは理解したぞ。ここをもっと突いてほしい、そうだな?」
「ひんっ! ああっ、そ、んな、ああん、むり、きもちいいっ……!」
「いいぞ、もっと乱れるがいい、貴様は我のものだ!」

 胸と脚から手を離したギルガメッシュは、少女の腰を両手で掴んで思うままに激しく突き上げた。ぱんぱんと肌がぶつかり合う音に混じってベッドが軋む音がする。そして、少女が過ぎた快楽に泣き叫ぶ声。

「ひゃああっ、う、だめ、イく、イっちゃうぅ、あああぁっ!」
「……っく、う……!」

 快楽に涙を流し、体を痙攣させた少女の上に、熱を解放した男が覆いかぶさった。残滓を吐き出すように二、三度腰を打ち付けると、少女の体が跳ねた。
 そのままふたりで抱き合いながら荒い息を整える。汗だくになった体を重ねて過ごす気だるい時間が、少女はなんとも言えず好きだった。

「……結局、私の胸は小さいほうがいいんですか……?」

 息が落ち着いた頃にギルガメッシュにそう問いかける。少女の顔の横でシーツに顔を埋めていたギルガメッシュは、首を動かして少女を見返すと、小さくため息をついた。

「まだそんなことを気にしているのか」
「むう……王様にとっては些細なことかもしれないけど、私にとってはそうじゃないんです」
「……仕方のない女だ、一度しか言わんから頭に刻んでおけ」

 というと、ギルガメッシュは顔を近づけて少女の頬にキスをして、こう言い放ったのだ。

「我は貴様の胸を揉みたいから揉む。それで胸が大きくなろうが、それはただの結果だ。我の目的は揉むことにあるのは変わらん」
「……大きくなっても揉むから別に気にしてない、ってこと?」
「さてな。どう受け取ろうが貴様の自由だ」

 ギルガメッシュは小さく笑って、肘をついて身を起こした。空いた片手で少女の汗ばんだ胸をふにふにと揉む。

「あ、ん……王様……」
「まあ、こうなるとどこまで育つか試したくなるものだな」
「や、そんなのだめ……んっ」
「言ったはずだ、貴様に拒否権はないと」

 その後、ギルガメッシュのマッサージを受け続けた少女の胸がどうなっていったのか。
 それを知るのは少女とギルガメッシュだけである。

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