苦しくて息もできない


※お題箱より「新宿から帰ってきた後、恥ずかしくなってギルガメッシュを避けてしまうが、最後にはつかまってしまうR18」
※『君を愛するきみ』の直後の話です


 新宿の証明を終えて、カルデアに戻ってきたマスターとキャスターのギルガメッシュ。ふたりの仲を知っているマシュやカルデアのスタッフ、残ったサーヴァントたちも、コフィンから出てきたふたりの姿を微笑ましく見守っていた。
 マスターたる少女はというと。なんとしてでも離したくなかった男を目の前にして、いまだかつてない気恥ずかしさに見舞われていた。

(冷静になって思い出すと……私はとんでもなく恥ずかしいことをしてしまったのでは……?)

 新宿の過酷な戦いを終え、緊張状態から解放されて、まず思い出したのがギルガメッシュと再会したときのことだ。あの時は、もう一度手を取ってもらえたことが嬉しくて、隣に立ってくれたことが幸せで。相当頭が花畑状態だったのかもしれない。ジャンヌ・オルタが辛辣に色ボケと評したことも、あながち間違ってない。

(じ、自分から……王様に、き、キスしたいって……!)

 キスしたいからかがんでくださいと乞うて、そして熱烈にキスをした。思い出すだけで顔から火が出そうになる。熱い。
 ちらりと隣に立っているギルガメッシュを見る。見てしまう。あの時触れたくちびると、目の前にあったまつげが縁どる目元を。赤い宝石のような不思議な光彩の瞳を。

「なにを見ている」

 不意に目が合って、心臓がはねる。自覚はなかったが、見すぎだったかもしれない。

「えっ、いや、なんでも……」
「ふ、我に見惚れていたか? よいぞ、存分に見るがいい。新宿ではそんな暇はなかったゆえな」
「え? あ、王様……」

 するりと腰に腕を回される。意味ありげに腰を撫でる手に、頬の熱がますます上がっていく。

「さて、今夜が楽しみだな、雑種?」
「ここここんやって」
「とぼけおって」

 そっと体を寄せられて、耳元で低くささやかれる。もうまともにギルガメッシュの顔を見ていられない。新宿での自分の所業を思い出した時からゲージを振りきっていた羞恥心は、この時限界を迎えた。

「ああああの! きょ、今日は色々無理っていうか、あれですあれ、そう、お月のもの、だから今夜はちょっと無理っていうか」

 気が付いたらそんなことを口走っていた。恥ずかしさのあまり拒否してしまった。後ろめたさがどんどん湧いてくる。恐る恐るギルガメッシュを見ると、笑っていた。

「……ほう?」

 ギルガメッシュの声のトーンが下がったのがわかった。あ、これ笑ってるけど絶対に機嫌はよくない。というか、こんな理由でギルガメッシュが引きさがってくれるとは限らない。女性の生理現象がなんだろうが、自分がしたいことをしたい時にするのがギルガメッシュだ。そんなことは知らん、で組み敷かれてもおかしくない。

「我の記憶している限りでは、貴様の周期はまだ先だと思うが」
(なんでそんなこと覚えてんの!?)

 思わず突っ込みそうになった。忘却することができないギルガメッシュではあるが、そんな余計なことまで覚えているものなのだろうか。それはつらい。いろんな意味で。
 しかしこれはまずい。覚えているなら、今少女が言ったことは嘘だとばれてしまう。ばれたら待っているのは罰である。王に嘘をつくのは大変な罪なのだ。
 マスターの危惧に反して、ギルガメッシュは小さく息を吐くと、

「……まあ、よかろう。今日のところは見逃してやる。新宿での疲れを癒すがよい」

 と言って引き下がった。さっさと管制室を出ていってしまう。
 嘘に騙されてくれたのが意外で、少し拍子抜けしてしまう。しかし、助かったのは間違いない。思わずほっと胸をなでおろした。
 だが、王の追及はそれで終わるはずがなく。翌日からも、折を見てマスターといちゃつきたいオーラを出し、周りに気を遣わせてふたりきりになろうとする。その甘ったるい雰囲気とマスター以外に向けられる殺気に、空気が読める者たちはおとなしく従ってしまう。
 まあ、当然といえば当然のことなのだ。久しぶりに再会した恋人といちゃつきたいと思うのは。それを上回る羞恥が少女を襲っていることが問題なのだ。しかも一度逃げてしまったので、より一層恥ずかしさが増しているというか。

(あれ……私って今までどんな顔で王様とえっちしてた!? なんで今まで平気で王様の顔を見れたんだろう……)

 ギルガメッシュの姿を視界に入れるだけで照れてしまう。目を合わせるだけで胸が苦しい。触れられると、そこから火が出ているのではないかと思うほどに熱くなる。
 そんな状態なので、とてもではないがふたりきりなど耐えられない。こちらもあの手この手の苦しい言い訳を駆使して、ギルガメッシュから逃げ回った。昼間は極力顔を合わせないように、業務や訓練を超タイトに詰め込んだ。夜はマシュやイシュタルといった女性たちの部屋にお邪魔することで回避した。
 ギルガメッシュの機嫌が日を増すごとに最低ラインを更新していることには、気が付かないふりをした。その被害者は主にクーフーリンだった。ごめん兄貴。あとで麻婆豆腐を作ってあげよう。そう心に誓って合掌を送った。



 そんなこんなで、ギルガメッシュを避け始めて一週間。

(つ……疲れた……)

 昼はギルガメッシュから逃げ回っているので息つく暇もなく、夜は夜で誰かがそばにいるということで、いつもより睡眠が浅い。蓄積した疲労で睡魔がひどい。今のマスターの思考回路は十パーセントくらいしか働いていない。眠気でふらふらとする足取りでマイルームに向かって歩いていた。
 ベッドで眠ることしか考えられない頭では仕方なかった。マイルームには当然、あの男が待ち構えていることを、すっかり失念していたのだ。
 あくびを手で覆いながら自分の部屋に入る。今日は久しぶりに自分のベッドで寝よう。

「随分くたびれているな。新宿での疲れは取れたかと思っていたが」

 さーっ……と血の気が引いていく音が聞こえた。あくびの涙でにじむ目を見開くと、キャスターのギルガメッシュがベッドに腰かけていた。

「多少はあえて見逃していたとはいえ、この我から一週間も逃げおおせたのだからな。凡人の貴様は疲れて当然だ」

 そう言ってにたりと口の端をつり上げる。ものすごい凶悪な笑みだった。今まで見てきた中で一番の悪辣さと言っても過言ではない。かといって、機嫌が悪いわけではない。むしろ上機嫌の範囲に入る。たとえるなら、獲物を追いつめて楽しんでいるといったところか。
 ほとばしる嫌な予感に、マスターは回れ右をした。

「まだ逃げる気力があるのか。まあ、我はそれでも構わんが。貴様に対して手加減も配慮も一切しない状態で抱き潰すというのも、一度試してみたかったのでな」
「ごめんなさい逃げるのはやめますおとなしくします」
「なんだ、つまらん」

 そんなことになったら本当に腹上死を迎えてしまう。まだ死にたくない。というか、腹上死の前に気が狂ってしまうのではないか。まだまともでいたい。この男を好きになった時から、まともからは道を踏み外している気がするが。

「さて……貴様には罰を受けてもらわねばな」
「ば、罰ですか」
「そうだ。我から逃げようなどと愚かにもほどがある。おかげで」

 ギルガメッシュは、ドアの前で体を縮こまらせている少女を、頭のてっぺんからつま先まで、舐めるようにして睨みつけた。

「──この一週間、貴様をどのように犯してやろうかと、そのことしか考えられなかったのだからなぁ」

 ひっ、と喉が鳴った。ばくばくと心臓が恐怖で早鐘を打っている。男の顔は笑っているが、目が一ミリも笑っていない。やばい、これは本当に命の危機かもしれない。だが逃げるわけにもいかず、少女は足を震わせながら立ち尽くしていた。

「来い」

 そんな少女の様子には目もくれず、ギルガメッシュは手招きする。無言で頷いてから目の前まで歩く。

「そこで服を脱げ。すべてだ」

 有無を言わせぬ冷たい声に、涙がこみ上げてきた。いつだって自分本位で冷たい男だが、基本的には少女の意思を聞いてくれた。聞いた後でその通りにするかどうかはまた別の話だが、こんなふうにはじめから少女の意思をまったく無視するということはなかった。
 おずおずと、震える手で服を脱ぐ。舐めるような視線が少女の肌の上を滑る。一枚、また一枚と、足元に服が重なり、とうとう一糸纏わぬ姿になる。正面には、少女の体をまっすぐに見つめる男。羞恥心から恥部を隠したくなったが、それは許されていない。

「座れ」

 と、自分の膝を叩く男。罰を与える、と言っているのに、膝上に少女を乗せようとする。なにを考えているのか分からないが、とにかく言う通りにする。
 膝上に腰を下ろすと、ギルガメッシュの腕が肩に回った。体を横抱きにされた状態だ。久しぶりに感じるギルガメッシュの体温に思わず安心してしまい、ぽろぽろと涙をこぼしてしまう。

「なにを泣く」
「だ、って……! なんか、ほっとしちゃって……」
「今から罰を与えるというのに。貴様もつくづく我に惚れ抜いているな」

 くつくつと笑い声を上げると、肩を抱いているのとは逆の手で、少女のむき出しになった乳房を揉んだ。

「あ、ん、王様」
「なぜ我を避けた? 理由を嘘偽りなく言え」

 ふにふに、と乳房全体を数回手で揉んだ後は、ゆるく立ち上がった乳首を摘んだ。ぴりっとした感覚が乳首から下腹部に伝わり、少女は無意識に両脚を擦り合わせる。

「あ、新宿で、あん、王様に、自分から、んっ……」

 人差し指と親指で先端を摘んだり、親指で先端を潰したり、人差し指と中指で挟んだり。少女が理由を述べている最中も、休みなく乳首を弄られる。久しぶりの性感に、自分の下腹部──膣が、きゅんきゅんと反応するのがわかる。普通に喋りたいのに、勝手に口が嬌声を上げる。尋問されている間もいやらしい顔をする少女を、ギルガメッシュは目を細めて見ている。

「どうした、続きを話せ」
「ん、自分から、キスしたの、んっ、みんなの前で、あっ、王様にキスしたの、すごく恥ずかしく、なっちゃって、や、ぁ」
「それで、我から逃げ回ったというわけか」
「あうっ!」

 ぎゅっと乳首を強く摘まれた。体を反らせたせいで王の膝から滑りそうになるが、たくましい腕が少女の体を支える。床に落ちることはないが、逃げることもできない。強く摘んだ後も、コリコリと硬くなった乳首をいじめている。最後にぴん、と膨らんだ先端を指で弾くと、いじっていなかったギルガメッシュの手前側の乳首をいじり始めた。

「ひゃっ! あ、そっちも、や、」
「大方、逃げてしまったので引っ込みがつかなかったとかそういうことであろう。予想通りだな」
「ちくび、いじめちゃ、ひゃうっ」
「まったく、貴様はまだ幼いな。まあ、強引に女にしたのは我だが……」
「あっ、ん、やあっ」
「これから精神面でも調教せねばな、マスター?」
「ああっ、だめ、ちくび、ああっ……!」

 先端をしごいて立ち上がらせた手前側の乳首を急に口に含まれ、喉を仰け反らせる。ちゅば、じゅる、とわざと音を立てて吸い上げられたり、見せつけるように舌でべろべろと舐められる。空いたもう片方の乳首は、緩急をつけて摘まれる。

「やあっ、王様っ、ちくび、そんなにしちゃ……!」
「このまま乳首だけでイかせてやろうか」
「だめぇっ、ああっ、やだぁ……!」

 下腹部に伝わる快感に、脚を擦り合わせる。もう入り口が湿っているのがわかる。こんな、乳首だけの愛撫で、ぞくぞくと体がはねる。いや、こんなのでイきたくないと思っているのに、体は正直に快感を拾ってしまう。

「あうぅっ……!」

 ぢゅう、と強く吸い付くと同時にもう片方も強く抓られ、軽い絶頂が体を駆け抜けた。一瞬息を詰まらせた後、呼吸を荒く繰り返す。

「本当にイきおって、淫乱め」
「ちが、違うの……!」
「はっ、どうだかな? さあ次だ、貴様から我にキスしろ」

 罰はまだ続いている。キスをしろ、と言われ、新宿でのことが思い浮かぶ。今はあの時のような高低差はない。あるのは、あの時には感じなかった羞恥心だけ。だが、ここで逆らえるはずもなく。ギルガメッシュの首に両腕を回すと、くちびるに自分のそれを重ねた。

「んっ、ふぁ……」

 誘うように薄く開けられたギルガメッシュのくちびるから、恐る恐る舌を入れる。舌先に彼の唾液が絡むと、びりびりとした感覚が走った。ギルガメッシュの魔力だ。久しぶりに伝わってくる甘い痺れに、次第に罰のことも忘れて夢中になって舌を絡めた。

「あ、んぅ、んんっ……」

 ちゅっ、とくちびるが立てる音と、じゅる、と唾液を吸う音が耳に入ってくる。いつもならはしたないと顔を赤くする音だ。ギルガメッシュの目が貪欲に舌を入れるさまを見ていたが、夢中になっている少女は気づかない。
 ギルガメッシュのくちびるが離れたことで、キスは終わる。はあ、と息を吸う。魔力による痺れで、すっかり意識が朦朧としていた。

「やけに必死に舌を使っていたが、それほどまでに美味かったか?」
「……うん……王様の、魔力……好き……」
「まったく、これでは罰にならんな」

 と、口ではそう言いつつも、満足げに目を弓なりに細めている。いつになく自分を求めてきた少女の姿が、お気に召したようだ。
 罰、そうだった。次はなにをさせられるのだろうかと思っていると、ギルガメッシュは少女に回していた腕を離した。王が座っている目の前の床に座らせると、自分は魔力で編んでいた服を解いて全裸になった。すでに屹立している股間のものが目の前にあって、少女は思わず頬を赤く染めた。

「図らずも禁欲生活をすることになった責任を取ってもらわねばな」
「責任……?」
「まずは一度抜かねばなるまい。貴様の手と口を使って、我を射精に導いてみろ」
「えっ」

 つまりはフェラチオをしろと言っているのだ。今までそんなことを匂わせつつも、一度も咥えさせられたことがなかった。この精力絶倫王を相手に、人生初のフェラでイかせることができるのだろうか。

「そう心配するな。我自らが手解きしてやろう」
「う……お、お願いします……」

 やらない、拒否する、という選択肢ははじめから与えられていない。それならば、腹をくくってやるしかない。さあ、と言わんばかりに屹立を揺らされ、そっと手に取ってみる。

「あ、熱い……」
「根元をもう少し強く握ってみろ。ああ、あまり強くはするな」
「こ、こう?」
「そうだ。そのまま上下に動かせ」

 ゆるゆると上下に肉棒を扱くと、どんどん硬くなっていく。すごい、男の人のこれ、こんなふうになるんだ。もともと大きく勃起していた肉棒は、さらに硬度と体積を増していった。

「先端を舐めてみろ」
「ん……」

 ぺろりと亀頭をひと舐めしてみる。汗と、鈴口に溜まっていた体液の苦味が口の中に広がる。

「表より裏筋だ。カリ首の裏が男は大好きでな」
「ここ……?」
「、そうだ。いいぞ、そのまま根元まで裏筋を舐めてみろ」

 ギルガメッシュの言うことに従って、裏筋に舌を何度も這わせる。気持ちいいのか、長い息を吐いた後に頭を撫でられた。それが嬉しくて、ぺろぺろと肉棒全体を舐めた。そして、先走りが溜まっている鈴口にキスをして、それを吸い取った。

「っ、やはり淫乱の素質があるな貴様」
「え、だめだった……?」
「だめではない、ないのだが……あまり頻繁にはするな。出そうになる」
「……? うん……」
「さあ、口に含んでみろ」

 らしくもなく先を急かされた。あまり突っ込んではいけない話題なのかと内心首を傾げた。まあ、間違ってはいなかったようなので良しとしよう。少女はそう思い込むと、言われるがままに肉棒を咥えた。口に苦味が広がり、鼻先を汗とつんとした臭いがかすめる。

「歯が当たらぬようにな。舌を使いながら出し入れしてみろ」
「ん、ふ、んっ……」

 出し入れと言うが、獲物が大きいので口には収まりきらない。喉の奥まで入れても半分もいかない。こんなに大きなものが、いつも自分の中に入っていたなんて。

「そうだ、それがいつも貴様の中をほじくっているのだ。存分に可愛がれよ」
「ふ、むぅ、んっ……」

 可愛がれと言われても、どうすればいいのか。舌で肉棒を舐めながら口を上下させて、届かない根元は手で。それ以外にどうすればいいのかわからない。だが、少女の口淫が下手とか悪いとは言われないので、気持ちよくなってくれているということだろうか。さらに逞しくなっていく肉棒を咥えながらちらりとギルガメッシュの顔色を伺うと、ちょうど目が合った。不安を感じ取ってくれたのか、よしよし、と頭を撫でられる。うん、がんばろう。
 大きくて、太い。膣をほじくるために反り返っていて、赤黒く充血している。鼻をつくなんとも言えない臭いは、だんだんと濃くなり、少女から考える力を奪っていく。息が苦しくても、顎が痛くても、ギルガメッシュに満足してほしくて。

(どんどん硬くなっていくよぉ……王様の、えっちな味が、する……)

 はあ、とギルガメッシュが息を吐いた。それを合図に、口内の肉棒を吸った。

「っ、そのままだ、歯を立てるなよ……!」
「んっ、むうっ、んん、」

 口内を喉奥まで突かれ、むせないように堪えるので精一杯だった。やがて、ギルガメッシュは小さく声を上げて口内に精を放った。

「んう、んんーっ……!」

 どくどくと肉棒が舌の上で脈打ち、どろどろとしたものが口内に満ちていく。遅れて、鼻をつく刺激臭。

「かはっ……!」

 息苦しさに耐えかねて、肉棒から口を離した。まだ射精の途中だったようで、びゅるびゅると先端から出てきた白濁が顔に降りかかる。

(あんなに口の中に出したのに、まだ出るの……!?)

 禁欲生活と言っていたので、この一週間まったく抜いてないのかもしれない。射精が終ると、頬に精液を塗り込めるように肉棒を押し付けてきた。口元に押し付けられたそれを口の中に入れ、精液を舐めとる。

「言われずとも咥え直すとは」

 嘲笑うような声が降ってきた。口の中にある精液を飲み込むと、苦い、なんとも言えない味がする。しかしそれ以上に舌を刺激したのは、魔力による びりびりとした刺激だった。

「飲んだか。飲まずともよかったのだが、まあそれもよい。一週間溜まったモノだ、特別濃かっただろう」
「う、ん……なんか、すごい味……」
「クセになりそうか?」
「わ、わかんない……」

 精液を飲むのがクセになるだなんて、そんなの本当に淫乱だ。決して淫乱ではない、なりたくない。だがギルガメッシュの魔力による痺れが少女を狂わせた原因だと自覚しているので、もうどうしようもない気がする。
 まだ屹立を保ったままのギルガメッシュは、ベッドの真ん中に胡座をかいて後ろ手をついた。それから、ティッシュで顔についた精液をぬぐっていた少女を手招きする。近くまでいくと、腰を抱き寄せられる。

「我に跨がれ、雑種」
「え……う、うそ……まだするの……?」
「当然だ。我が一度で満足するはずがなかろう。我の上で存分に腰をふるがいい」
「そ、そんなのできない、恥ずかしいよっ……!」
「今の今まで男根を咥えこみ、精液を飲み干した貴様がそれを言うのか」
「うう……!」
「貴様に拒否権などない。それに」
「あうっ……!」

 腰に回った手が、少女の秘裂をなぞった。くちゅ、くちゅ、と水音が立ち、男の指を少女の体液が滴る。

「貴様のここは、我のこれを欲しがっているようだぞ?」
「あっ、や、中に、ゆびっ……!」
「なんだこれは? 我のモノを咥えていたというのにびしょびしょに濡れているではないか! 見ろ、このはしたない汁を! 我の手首まで垂れているぞ!」
「ああっ、あああ、やだやだ、やあっ」
「貴様、我のモノを咥えながら濡れたな? これを下の口に突っ込んでもらいたいと、そう思っていたな? この好き者め!」
「ああっ、やだ、指抜いちゃやだ」
「ならば自分で跨るがいい! そら、ここだ。貴様の欲しいモノはここにあるぞ?」
「ううう……」

 中に入っていた指を引き抜かれた少女は、羞恥で涙を流しながらギルガメッシュの言葉のままに彼の体に乗った。反り返った肉棒を手で掴み、自分の膣口のほうを向かせる。先端が入り口に当たって、ちゅく、と音を立てた。

「そのまま腰を下ろせ」
「んっ……あ、ああ……!」

 自分が腰を下ろすに従って、ずぶずぶと熱いモノが入っていく。彼の下生えが足の付け根に触れ、すべて収まったのだとわかった。

「自分の思うがまま動け。我は動かんぞ」
「そんな、の……」
「ほら、そのままでは我も貴様も満足できんぞ」
「っ……う、ん……こう……?」

 そろそろと腰を前後に動かしてみる。中を突かれる快感はないが、これはこれで一番敏感な突起が擦れて気持ちいい。しかし、それはあくまで少女だけ。男は特に表情を変えることはなかった。

「児戯だな。そんなものでは我は永遠に果てんぞ。腰を上下に動かせ」
「う、うん……」

 上下に、と言われて、少女は脚をしゃがむような形にして座り直した。こうでないと腰を上下に動かせないのだ。ゆっくりと腰を動かす。

「あ、あ、んっ、こう、かな」
「まあ、悪くはない。もう少し速度を上げてみろ」
「んっ、あ、あっ」

 ぱつ、ぱつ、と臀部の肉がギルガメッシュの下腹部に当たる。ギルガメッシュが好き勝手に突き上げてくるのとは、速さも力強さもなにもかも違っていて。奥に届きそうで届かない、いいところに当たりそうで当たらないという、なんとももどかしいもの。自然と、少女の腰は自らの性感帯に肉棒が当たるように動いていた。

「んっ、あっ、ここ、もうちょっとなのに、もうちょっとで、とどくのにぃっ」

 部屋の簡素なベッドでは、スプリングなどきくはずもない。弾みがついていたら完全に性感帯に届いているのに。これでは先端が性感帯の一部をかすめるだけ。しかし、そのじれったい抜き差しにも確実に高みへと押し上げられていく。あとちょっと、なのだ。そのちょっとに至る前に、体力が尽きてしまう。へなへなと、乗っている男の胸へとへたり込む。

「も、むり……」
「なんだ、もう終わりか?」
「ギル、さま……おねがい、もうつらいよお……」

 もう限界だと素直に音を上げる。イきたいのに、もうこれ以上激しく腰を振れない、なのでイけない。
 小さく息を吐いたギルガメッシュは、少女を抱えて屹立を引き抜いた。少女はベッドの上にうつぶせに転がされる。これは、と思っている間に腰を高く持ち上げられ、ぐちゅ、と卑猥な音を立てて貫かれた。

「あっ! あう、あっ、や、ギ、る、様」

 途端に激しく突き上げられる。その激しさは今までの情事の比ではない。がつがつと肌がぶつかって痛いし、衝撃で骨盤が歪みそうな気がするほどだ。こんな、少女の体のことなど一切考慮していないような動きは初めてだった。

「あっ、む、りぃっ、こんなの、やあっ」

 このままでは冗談抜きで体が壊れる。そう思っているのに、容赦なく突かれて、中は痺れるほどに気持ちよくて。急に過度な快感を与えられて、生理的な涙がシーツを濡らした。じれったい状態だった中は、あっという間に昇り詰める。

「あっ! あうっ、イくぅっ……!」

 もう何度か突き上げられれば、絶頂を迎える。そこで、ギルガメッシュの腰はぴたりと止まった。

「え……? え、な、んで……?」

 中途半場に先っぽだけを入れた状態で止められ、思わずそんな声を出していた。昇りつめようとしていた膣内は、締め付けるものもない状態で放置され、物欲しげに蠢いた。

「ギル様……なんで……? どうしてやめるの……?」
「言ったであろう、これは罰だと」
「え、や、こんなの、やだ」
「貴様のことなど知らん」
「あっ!? ああっ、やああっ……!」

 絶頂の波が引いたころを見計らって、ギルガメッシュが再び動き出す。骨が軋むような突き上げで、あっという間にまた押し上げられる。そして、またぴたりと動きを止めるのだ。
 それを何度繰り返したか。もうわからない、イきたいのに、イかせてくれない歯がゆさで、ほかのことが考えられない。

(イきたいっ……イきたいよぉ……!)

 なぜこんなひどいことをするのか。苛立たしさが理性も羞恥心も焦がしていく。気が付けば、シーツに顔を押し付けて涙を流していた。

「ギルさまぁ……ごめんなさい、ごめんなさい……! も、イきたい、イきたいの……!」
「──我がなにに対して罰を与えているか、理解しているのだろうな?」
「う……っ、ぎるさまから、逃げたこと……?」
「そうだ。貴様は頭の頂上からつま先、髪の毛の一本に至るまで我のものだ。我のものが我を拒むなど、本来なら首をはねているところだ」

 ギルガメッシュと再会して、カルデアに戻ってきてくれることになって。嬉しくて、天にも昇るような気持ちだった。新宿の厳しい戦況の中で、時折甘く見つめてくる赤い瞳に、自分の中のギルガメッシュに対する好意も、一層膨らんでいった。
 それを、カルデアに帰還してから急激に自覚した。好きという言葉では表し切れないような、大きな気持ち。ギルガメッシュの存在を感じるだけで、心をいっぱいにしていく感情。それをどうすればいいのかわからなくて、だから、逃げた。こんなのは一時のことで、落ち着けば以前のように振る舞えるだろうと。

(でも、そうじゃなかった)

 変化を遂げた気持ちは元には戻らない。ついていけなかった少女は、逃げるしか方法が思いつかなかった。自分の気持ちから、ギルガメッシュから。

「馬鹿め、貴様のことなど手に取るようにわかるのだ。意地を張ったところで無駄だということがなぜわからん」
「ごめんなさい、ごめんなさい……! どうしたらいいのか、わかんなくて……!」
「そういう時は恋人に甘えるのだ。格好つけようとしても無駄だ。これまで貴様の無様なところなど、飽きるほど見てきたからな」
「そう、でした……」
「苦しむがよい。愛とは苦しみを伴うものだ。美しいものとは程遠く、不条理に満ちている。ひとつ学んだな、雑種。今後は我から逃げ出すのではなく、貴様の無様なところも醜い感情も、余すところなく我にぶつけろ」

 そして、そのすべてを受け止めてやれるのが、ギルガメッシュという男なのだ。貴様は我のもの、だからその感情すら我のものだという超理論で。
 ひとりではなく、相手がいるからこその関係だというのに、それをすっかり失念して、ひとり相撲をしていた。最初から向き合うこともせず、逃げるという方法を取ったことを、ギルガメッシュはなにより嫌ったのだ。

「だがまあ、収穫がなかったわけではないぞ。色々と調教が進んだことだしな」
「ちょ、調教って」

 初めて乳首だけでイったり、初めてのフェラのことを言っているのだろう。確かに、今回のことがなければ体験するのは当分先かもしれない事柄の数々だ。今夜のことをもとに、これからなにを教え込まれるのだろう。先を想像して、悪寒が体を走った。

「貴様の痴態と努力に免じて、今回のことは許してやる。さて……そろそろつらいだろう。存分にイかせてやる」
「あっ、まって、ギル様……」
「なんだ」
「その、後ろからじゃなくて、前から……ギル様の、顔が見れないの、いや……だめ、かな……?」
「──いいだろう」

 四つん這いの体勢から後ろを振り向くのはつらかったが、なんとかそう懇願する。息を呑むような気配の後、ギルガメッシュの低い声が聞こえた。
 仰向けに転がされ、脚を開いてギルガメッシュの体を受け入れる。その顔を見上げると、なんだか久しぶりに見たような感覚になった。ほんのさっきまで見ていたはずなのに。

「は、うっ……あっ、ギル、さまっ……!」

 押し入ってきた熱を、息を吐きながら迎える。上体を倒してきたギルガメッシュが、強く体を抱きしめてくる。胸が苦しい。こうやって抱き合って愛し合って、幸せのはずなのに、胸が苦しい。

「ぎる、さ、まっ、好き、大好きっ……、愛してる、の……!」
「っ……!」

 揺さぶられながら、思いの丈を口にする。愛してると言葉にすると、少しだけ胸の苦しさが和らぐような気がした。
 ギル様は、と問おうとしたところで、耳元に低い声が吹き込まれる。それは、問おうとしたことの答えとしては、十分すぎるほどのものだった。
 嬉しくて、幸せで、苦しくて、胸が張り裂けそうとはこういうことを言うのだろうか。新しく浮かんだ涙が目尻からこぼれると、目元に優しいキスが降ってきた。

「あっ、あん、も、だめ、イく、ぎるさ、まあっ!」
「いいぞ、イけ!」
「はあ、あああっ……!」

 激しく、けれど先ほどのような無遠慮な動きではない突き上げで、ひときわいいところを刺激され、少女は体をしならせて果てた。膣内の収縮に従って、ギルガメッシュも一足遅れて射精した。
 全身の力を抜いた男の重みを感じながら、少女は重いまぶたを閉じた。疲労が蓄積した体は、絶頂を何度も迎えたことで、そのまま糸が切れたように動かなくなった。



 翌日、見事に重い腰痛をもらった少女は、終日ベッドの住人となることとなった。

「迷惑かけちゃった人たちに、謝りに行きたかったのに……」
「その有様では仕方あるまい。明日にせよ」
「こうなったの王様のせ……いえなんでもありませんごめんなさい」

 口答えをしようとして、ギルガメッシュの表情を見てやめた。
 ベッドの傍らに座っている彼は、腰どころか全身が痛いマスターと違ってぴんぴんしている。あと喉も痛い。なぜだ。なにが違うんだ。運動量で言えばギルガメッシュのほうが多いはず。

「サーヴァントと生身の人間を比べるな、たわけ」
「王様はサーヴァントってことを抜きにしても精力有り余ってるだけでは……」
「そうさなぁ、今すぐそれを貴様の体で証明してやっても構わんぞ?」
「いやいやむりです本当に死んじゃうから。ごめんなさいほんと反省してます」
「ふん、チキンめ。よい、今の貴様を抱いたところで、カエルのつぶれたような声しか出んだろうからな」

 そんな状態にしたのはあなたです。
 喉が痛いにも関わらず、暇だ構えと言わんばかりの恋人の話に付き合わされて、一日が終わった。
 一日の終わりに、腰や喉の痛みを魔杖で治癒してくれた。
 治せるならもっと早くしてくれないかと一瞬だけこの男を殴りたくなったが、そんなことをしても三倍以上で報復されるのが関の山だとあきらめた。それに、おそらくは気遣いのつもりなのだ。一日の休みをぶんどる口実として、腰や喉の痛みをわざとすぐに治さなかったのだろう。
 一日少女に付きっきりで時折退屈そうにしながらも、どこか満足げなギルガメッシュの顔を見て、心の内が彼への思いで満たされていくのを感じながら、一日を終えたのだった。



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